ひとり新聞 2002年5月28日号 <「し」と「ひ」>
バイト仲間が「しおひがりに行くから、休むねー」と言う。
「あっ、しおしがりね。子供の頃よく行ったよね。大潮なの?」
「大潮なのかな?」
「どこ行くの?」
「ふっつ」
「あっ、富津岬ね」
どうも、彼女はその場所がどこにあるのかわからないらしい。寝ていれば、車で運んでもらえる
潮干狩りらしい。
私は、埼玉生まれの埼玉育ち。父も埼玉生まれの埼玉育ちなのですが、どうも二人とも「し」と
「ひ」が怪しい。
結構大きくなるまで、私は「ふとんはひく」ものだと思っていた。
ふとんをひく時は、手前を持って引っ張るでしょう。だから、私の頭の中では「布団を引く」だった
のです。ある時、「布団を敷く」だとわかった時、回りの誰かにバレた訳ではないけれど、妙に恥ず
かしかった。
それから同じ間違いをしていないか、気になって気になってしかたがない。でも、こういう間違いと
いうのは耳にも関係していて、正確に「し」と「ひ」を聞き取る能力もないものだから、不安はいつ
までも付いて回る。
「ひろしさん」を「しろしさん」と呼ぶのは、江戸っ子だそうで、そんな由緒正しい「ひ」を「し」
としか言えないタイプではないのです。
時々、頭の中で「し」と「ひ」が行ったり来たりする私がいます。
池袋の中田屋さんで飲んでいて、ふと壁に貼られているお品書きを見たら「オシタシ」と書いてあった。
「おしたし? おひたし? 浸すから、おひたしか?」
ここのご主人、どう見ても江戸っ子というタイプではないので(失礼!)、私と同じ“あいまい「し」
と「ひ」の区別の付かないタイプ”かなと思ったら、とても楽しくなってしまった。
そうそう、そう言えば「おしさしぶり」だと思っていた私は、変換して「押し指しぶり」とか出て、
困惑して久しい。
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