ひとり新聞 2006年6月10日号 <チューリップの思い出>
チューリップの咲く頃になると思い出すことがあります。小学6年生までを過ごした川口の
家では、畑のようなものが少しあって、家の影になる部分には、里芋や落花生等が植えられ
ていて、日当たりの良い場所には、たくさんの花々が植えられていました。
日曜日になると、父を手伝って、姉と私は、作物の収穫をしたり、お花の手入れをしました。
たくさんの花が育っていました。チューリップ、水仙、すずらん水仙、るりぎく、グラジオ
ラス、キンギョソウ、カンナ、ケイトウ、サルビア、角虎の尾、キキョウ、しゃが、あやめ、
山百合、都忘れ、コスモス、菊・・・。
花のたくさん咲く頃の月曜日は、花束を抱えて登校しました。担任の先生は、「いつも、あ
りがとう」と受け取って、教室に飾ってくれました。
ある日、球根を掘り起こしていた父が、小さな球根を捨てるので、かわいそうだと思って、
父にほしいとねだりました。
「芽は出ても、花は咲かないと思うよ」
「それでもいい!」と、父から譲り受けた小さな球根。
球根を植える時期になって、父の植えた場所の端っこに、見よう見まねで植えてみました。
しばらくしても、芽の出てこないものが多かったのですが、小さな葉っぱがヒョロヒョロと
伸びてきたものもありました。そして、蕾を持ったものがひとつだけありました。小さな小
さな蕾でしたが、嬉しくて嬉しくて、一日に何度も何度も見に行きました。
父は、植物も、花も、育てる名人でしたが、傍らで見ていると、時々、驚く程大胆に切った
り、捨てたり、間引いたりしていました。それは、ショックな光景でした。
「大切にすれば良いというものではないんだよ」
「寒さを味あわせたほうが、花の色が鮮やかになるんだよ」
という言葉等と共に、いろいろな思い出が残っています。
チューリップが咲くと思い出す小さな蕾とヒョロヒョロの葉っぱと心を弾ませて何度も眺め
た小さな蕾。それらの光景は、すべて大切な宝物です。
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