15年掛けて上映していきたい


  作品名:タイマグラばあちゃん
  監督/撮影:澄川嘉彦
  2004年作品






味噌の仕込みのために、水をたっぷりと含んだ大豆を踏むばあちゃん。ばあちゃんの長靴で踏まれる 大豆は、ふっくりしていて、いかにも美味しそうです。

田舎のない私にとって、初めて見る味噌作り。初めて見る味噌玉。ばあちゃんは、陶芸の土練りのような 感じで、見事に味噌玉を作っていきます。
その手の動きは、大切な物を丁寧に丁寧に扱っている手。感謝の気持ちがこもっている手。自然に感謝し、 収穫に感謝し、健康に感謝し、多くの神々に感謝して働き続けてきた手です。

監督の澄川嘉彦さんは、とにかくシャイな人らしい・・・。カメラがなければ、人にアップで寄っていく なんてできない方のようで、その現実ではできないことを、カメラを通してできたのでしょうか。アップ が多用されている印象を受けました。

私は、映画を見る時、頂いた資料などを上映前には読まないようにしています。情報があると便利な時も あるのですが、何も知らない状態で、作品に出会う方が良いと思っています。
NHKのディレクターだった澄川さんは、“日本で最後に電気の通じた地”としてタイマグラを知りました。 そして、その地を訪れ、今まで仕事として取り上げてきた「社会問題」とは、全然違う“感じ”に、何度 も何度も訪れ、最後には家族でタイマグラに移り住んでしまったそうです。

私が見はぐっていたり、聞き逃していたら、申し訳ないのですが、上映後に読んだ資料で、それらのこと がわかりました。
澄川さんが、何故移り住んでまで撮り続けたいと思ったのか? 作品にまとめたいと思ったのか? 澄川 さん自身のポジションを、作品の中ではっきりさせれば、もっと作品の見え方が変わってきたのではない かと思います。
見終わった時、ひとつひとつの映像が断片的な感じも残りました。澄川さんにはわかりきったことでも、 初めて見る人にとってはわからないこともあると思います。その辺の工夫も必要だった気がします。

それにしても、ばあちゃんが倒れて入院してしまった後、ばあちゃんの家に鍵が掛かっていたのにはショ ックを受けました。突然現れた娘さんが、鍵を掛けたのでしょうか?
昔、田舎の家は、みな開け放しだったと思います。タイマグラには何人も住人はいない筈なのに・・・。 じいちゃんの仏壇も、味噌玉もあるのだから、それこそ様子を見てあげるような仲じゃなかったの?と、 気になりました。

15年かけて撮ったのだから、15年かけて上映していこうと、澄川さんは、思っているそうです。じい ちゃんも、ばあちゃんも、そういう上映会を、面白がって笑顔で見守ってくれると思います。


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