女の男気
作品名:メゾン・ド・ヒミコ
監督:犬童一心
2005年作品
日本
「ジョゼと虎と魚たち」の監督・犬童一心と脚本・渡辺あやのコンビの作品
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青山吉良さんを初めて観たのは、2002年3月の舞台「Trick」でした。個性豊かな5人の役者たちの
嘘ばかりの物語。その舞台で、早稲田小劇場出身の実力派・青山吉良さんは、別格の存在感を放っていまし
た。
二度目に観たのは、ゲイの老人とヘルパーの二人芝居「思い出の夏」。2004年5月のことです。劇団フラ
イングステージの関根信一さんを相手に寝たきりの頑固なゲイの役を見事に演じていました。その時、すっか
り吉良さんの声の虜になってしまい、帰り道、いつか一緒に仕事ができたら・・・と思いながら帰ったのです。
その後ご縁があって、2005年3月に「成瀬巳喜男 記憶の現場」のナレーション録りに立ち会うことがで
きました。その時、「今度、映画に出るんです」と渡されたリーフが「メゾン・ド・ヒミコ」でした。
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ゲイの父・卑弥呼(田中泯)がガンで死期も近いと、父の恋人・春彦(オダギリジョー)が、娘・沙織
(柴咲コウ)を訪ねてくる。
母と娘を、突然捨てていった父。居ない人と思って、母と暮らしてきた。その母も亡くなり、一人暮らしの
娘は、父を許すことなんてできない。でも、母の治療費を親類に借りたりしているので、お金に困っている。
「高額のバイト代を出すから・・・。遺産もあるよ」という父の恋人の話と、その強引さに引きずられて、塗
装会社の事務員をしながら、会社の休みに父の経営する老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」に通うようになり
ます。
吉良さんは、洋裁や刺繍の得意な「メゾン・ド・ヒミコ」の住人役。純白のドレス姿でも登場します。吉良さ
んは、太るようにと監督に言われ、なんと10キロ以上も太ったそうです。すごい、役者根性!
犬童監督は「思い出の夏の舞台を観たのですか?」とお聞きしてみたら、なんと、オーディションを受けたと
のこと。もちろん、犬童監督は「思い出の夏」を観ていない。田中泯は死にそうに見えなかったけれど、舞台
の吉良さんは、年老いて弱ったゲイの姿を深く静かに演じてきっていた。
前半と後半が、なんとなくテンポが遅い感じがした。その分の時間を使って、一人ひとりのゲイの人となりを
説明していけば、作品に厚みが出たと思う。
たとえば、教師をしたいたというゲイは、どこで、何を、教えていたのか。中学の生物の教師だったのか、女
子高の倫理社会の教師だったのか、そういう些細な情報が分かってくると、沙織に向かって語られる一言一言
の台詞の感じ方が違ってくると思う。
一見、個性的に見える住人たちが、ちっとも個性的に見えないのだ。途中で象徴的に出てくる空や雲も記号的
な扱いでしかなかった。
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柴咲コウやオダギリジョーが主役の映画として見るなら良いけれど、ゲイの映画として見るのなら、ゲイ
への愛情が不足しているような気がする。
ゲイの人は優しい人が多いと思うし、細かな心配りのできる人が多いと思う。仲間の窮地を見逃したりしない
と思うし、勝手に他人の使っていた化粧品を捨てたりしないと思う。ゲイの人は、女だけれど“男気”は強い
のではないか・・・と、私は思っている。
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