植物に魅せられて
作品名:ギアナ高地の伝言−橋本梧郎南米博物誌
制作・撮影・監督:岡村淳
2005年 ビデオ作品 103分
日本
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いや〜! 参った! 参った! と思いました。90歳を越えている植物学者の橋本梧郎先生が、とに
かく元気なのです。そして、その元気さに付き合っていく岡本淳監督も、とても元気でした。
制作も、撮影も、編集も、ナレーションも、岡村さんが一人で担っている作品です。ブラジル在住の岡村淳
さんのお名前は、何
度か「メイシネマ」のプログラムで目にしていましたが、作品を見たのは今回が初めてでした。
耳の遠くなっている橋本先生に同行しながらカメラを回している岡本さんの声は、大きくて、高くて、こち
らのテンションも自然と高くなっていきました・・・。
映画は橋本先生が母校の静岡大学で名誉博士号を授与される場面から始まります。でも、橋本先生にとって
は、そんなことには興味がないのです。記念講演では、途中で席を立つ学生が続出し、質問もひとつも出ま
せんでした。それでも、橋本先生は淡々としていて、同行していた岡村さんの方がハラハラしていました。
故郷の小学校でも同じように講演をします。でも、大学と違って、子供たちの質問の手がどんどん挙がりま
す。「今時の子供たちの言葉が聞き取れない」という橋本先生に、汗だくになって子供たちの質問を伝える
岡村さん。子供たちの目は、橋本先生を真っ直ぐに見つめていて、橋本先生の魅力をしっかり感じ取ってい
ました。
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“ギアナ高地を自分の足で探索する”のが、橋本先生の長年の夢でした。でも、足を悪くしたりして、
夢で終わりそうな気配でした。でも、強い思いが奇跡を呼んだようです。体力を回復し、篤志家の申し出も
あって、ギアナ高地への旅が実現していきます。
ギアナ高地は、ベネズエラ南東部とブラジルにまたがる秘境。めずらしい植物の宝庫で、テブイと呼ばれる
崖の切り立ったテーブルマウンテンがあります。そこに、ヘリコプターで降り立とうという計画です。
同行するのは、岡本さんと橋本先生の助手を務めている植物学者と情報誌のライターの女性が二人。みんな
で、橋本先生をサポートすることになっていました。
ところが、橋本先生の元気さは並大抵ではないのです。飛行機を乗り継いで、四駆に揺られて、やっとの思
いで宿に着くと、荷物も解かず、カメラを持って、宿の周りの植物を観察し始めるのでした。
これはどこに行っても同じで、足の痛みもどこへやら。ダウンする女性陣を置いて、さっさと出かけようと
する橋本先生を、思わず岡本さんが「僕も休みたいよー」と、ぼやきながら追いかけて行く・・・。
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植物が大好きで、未知の植物に出会いたくて、単身ブラジルに渡り、研究を続けてきた橋本先生は、今
までも、ずっとこんな風にしてきたのでしょう。とにかく、知りたい! 見たい! 記録したい! 自分の
目で確かめたい! と、動き続けます。
天候に恵まれなくては、テブイに降り立つことはできません。できれば、テブイに橋本先生が行けますよう
に! と、ハラハラしてながら、私まで願ってしまいました。
そして、最後の日に幸運の女神が微笑んでくれました。
着陸したクケナン・テブイは、岩がゴロゴロしていて、水が貯まっていて、小さな植物がみっしりと生えて
いました。当たり前だけれど、見たことのない不思議な世界で、人を寄せ付けない雰囲気が漂っていました。
30分ほどで天候が怪しくなり、パイロットに「早く!」と急かされて戻ることになった時、「記念写真を
!」と、4人が並びます。岡本さんは、ビデオカメラを持ったまま記念写真に納まり、そして、記念写真を
撮る瞬間も撮影を続けていました。4人の高揚感が伝わってきます。
テブイを飛び立つと、頂上から水が滝のよう真っ直ぐに落ちていました。でも、あまりの高度差に、多量の
水も途中で霧になって消えてしまうそうです。ですから、滝壺がありません。圧倒される景色でした。
橋本先生は、91歳の最後の日にテブイに立つことができました。「ギアナ高地の伝言」には、橋本先生の
もうひとつの伝言も、詰まっていると思いました。 “好きなことをどんどんするとステキだよ!”
そして、橋本先生が夢を叶える瞬間を記録することができた岡本さんの喜びも、ダイレクトに伝わってくる
ワクワクする作品でした。
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