「をどらばをどれ」は、「をどり念仏」の発祥地・信州佐久跡部村に、700年に
わたって伝え守られてきた「念仏踊り」を記録したものです。そういうと「文化映画」
と思われがちですが、演出家の伊勢真一さんは、「これは、記録映画でも、文化映画で
も、劇映画でもありません。まるで、絵巻物のような映画です」と、おっしゃっていま
した。
その言葉どおり、美しくて雰囲気のある映画でした。
板で四角い囲みを作り、その入口から念仏を唱えながら入って行きます。「こんにちは。
こんにちは」と、挨拶をしているような踊りです。中に入ると、ぴょんぴょんと飛ぶよ
うに踊ります。まるで、子供が嬉しくて飛び跳ねているような感じです。そして、最後
は、後ろ髪を引かれるように、振り返りながら振り返りながら踊って帰ってくるのです。
板で囲まれた四角い世界は、あの世とこの世が交錯する特別な舞台のように見えました。
幼くして亡くなった子に会う人もいれば、励ましを得たくて母親に会う人もいるように
思えました。あの世の人は、懐かしい笑顔でやってきている・・・。
上弦の月。雨に濡れた小道。すくーんと立っている1本の大木。水かさを増した早春の
水路。桜の花びらが畑の畝に散りゆくさま。おばあさんの笑顔・・・。本当に美しい映
像に溢れていました。
カメラマンの瀬川順一さんは、きっとファインダー越しに、たくさんの美しいものを見
たに違いありません。映画になった絵もあれば、撮られただけの絵も、瀬川さんが覗い
ただけの絵もあったでしょう。瀬川さんには、たくさんたくさん美しいものが見えてい
たんだろうなぁ〜と思った映画でした。
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