4:「日本皮膚科学会ガイドライン(試案)について 」

最近、日本皮膚科学会が「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」の作成作業に取り掛かっている。 その試案を読むと、以下のような内容の記述がある。

@アトピー性皮膚炎の治療には、ステロイド剤などを処方することを基本とするコンセンサスが確立されている。

Aところが、患者や社会一般にステロイド剤に対して根拠の乏しい不信感が生じ、ステロイド剤を拒否する患者が増えている。

Bその結果、十分な治療が施されず、アトピー性皮膚炎が重症化するケースがある。

Cアトピー性皮膚炎の病態は、慢性に経過するも適切な治療により症状がコントロールされた状態に維持されると、将来的には寛解も期待される疾患である。

Dステロイド剤以外に効果的な消炎効果を示す外用剤がないことから、ステロイド剤を治療の第一選択薬とする。

Eステロイド剤を第一選択薬とし、その他スキンケアなどを行えば、ほとんどの例で治療の目的が達成し得る。

 

@についてはその通りであろう。現在の皮膚科の大部分はアトピー性皮膚炎の治療にステロイド剤を処方することを前提としている。 僕は、この現実を心配する。


Aの「根拠に乏しい不信感」とういう語句は、一部は正しいと思われるが、一部は間違っていると思う。 すなわち、「医学的、科学的、統計的」な根拠を示せと言われれば、多くの患者やマスコミ、民間療法団体 などは、不可能であろう。その意味で「根拠に乏しい」という語句は正しい。しかし、患者の一部は自分の体で ステロイド剤の恐ろしさを知っている。ステロイド剤を塗っても一向に良くならず、そればかりか悪化していき、 されにはステロイド剤がだんだん効かなくなり、ついには脱ステロイドを行わざるを得ない人が少なからずいる のだ。そして非常な苦痛を伴うリバウンドを乗りきった後には、ステロイドを使っている時より症状がはるかに 軽くなる(ステロイドを使う前とほぼ同じ症状まで回復する)場合が多い。ステロイドを止めた後の方が、 ステロイドを使っていた時よりも症状が軽いという事実は、それまでアトピーと思っていた症状の大部分が実は、ステロイド の副作用(ステロイド皮膚症)あったということを示唆しているのではなかろうか?こういう経験をした人に とって「根拠の乏しい不信感」という言葉は、間違っているとしか思えない。

しかし、こういう人に対して一般的な皮膚科医はこういうだろう。 「それは、患者のステロイド剤の使用が間違っていたか、あるいは腕の悪い医師が処方したために起こることで、 正しく使えばステロイド剤は怖くない」と。1でも述べたように、ステロイド剤を前提とする治療は、ステロイド剤の 長期使用の副作用が現れる可能性をもった「リスキーな」治療であると思う。でも、この考えを 「医学的、科学的、統計的」に僕が証明することはできない。証明できるとすれば、医師しかいない。 その医師の多くが「ステロイドは正しく使えば怖くない」という考えに縛られる以上、皮膚科学会 の言う「根拠に乏しい不信感」は永遠と続くのであろう。


Bについてであるが、確かに治療をせずにアトピーが悪化するケースはあるだろう。しかし、 Aでも述べたように、ステロイドを使っても悪くなる一方で、ステロイドを止めた後に症状が緩和するケース は、ステロイドを用いる治療そのものがアトピーを悪化させたのではなかろうか?多くの皮膚科医に 言わせれば、それは「使い方が悪かった」ということであろうが、僕は、医師のほうこそステロイド剤の 長期使用における副作用について無頓着であると考える。


C、Dから考えるに、「適切な治療」とは要するに、ステロイド剤の使用を前提とした治療であろう。 「将来的に寛解される」というが、ステロイド剤の長期使用による副作用については、一言も触れない とはなぜであろうか?やはり「正しく使えば大丈夫」ということなのか?それとも長期使用の副作用 はめったに起こらないから無視し得るという考えなのであろうか? 「慢性に経過する」と述べているが、アトピー性皮膚炎と思っていたのが、 実はステロイド皮膚症であったという可能性については考慮しなくていいのだろうか? もし、そうであればステロイドを使う治療を続けて行く限り、たしかに「慢性に経過する」 であろう。アトピー性皮膚炎と診断された後、脱ステロイドをして 症状がはるかに良くなった人は確かに存在するのである(僕も含めて)。 症状が完全に消えない限り「慢性」といえるであろうが、それでもステロイドを使わないほうが、 はるかに症状が軽くなるのである。こういう患者の存在を皮膚科学会はどれくらい 認識しているのであろうか?


Eについても疑問を感じる。まず皮膚科学会の考える「治療の目的」とは何であろうか? もし、「見た目上、皮膚の状態を良くする」というのであればステロイド剤を第一選択薬 とする考えは理解できる。ステロイドを初めて使うか、あるいはその使用が短期な内で あればステロイド外用剤を患部に塗れば、炎症がおさまり、見た目ではきれいな皮膚に なるであろう。しかし、それでは根本的な解決にはならず、さらには長期使用による 副作用が現れる可能性がある。悪化因子が除外あるいは悪化因子に対抗できる体をつくらねば カユミは続き、掻破行為によって炎症が悪化して、ステロイド剤の使用が続く。 そのうちステロイドが効かなくなり、ランクが上がって、ついにはステロイド皮膚症になり、 症状がさらに重くなる可能性がある。「目標を達成し得る」と記述してあるが、ステロイドの 長期使用による副作用の可能性についてどれほど真剣に考慮しているのであろうか?


この試案を読んで、たいへん不満に思うと同時に危機感を感じる。 ステロイド外用剤の使用をさらに徹底させることを目的とする一方で、その副作用については 考慮されていない。脱ステをして症状が改善した人の存在を知らないのであろうか? 脱ステをしている(まだ完全には脱ステしてないが、ステロイドを使っていた頃より はるかに症状が良い)自分としては、このガイドライン試案は新たにステロイド皮膚症 に苦しむ患者を増やすことを導くものと考える。ステロイド外用剤をアトピーの第一選択薬 にする以上は、その副作用や副作用からの離脱についてもっと真剣に考慮・研究する 必要があるのではないか?


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