「掻くな」って言わないで!<あとぴっこのお母さんへ>

はじめに

アトピー性皮膚炎が悪化する主要な理由の一つは掻破行為であろう。つまり掻きまくって しまうために皮膚表面が破壊されるのである。掻くという行為自体が皮膚にとって大きな 刺激となるし、皮膚表面が破壊されればアレルゲンの侵入を増加させ、アレルギー反応も それに応じて大きくなる。そうするとますます痒くなって、さらに掻いてしまい、悪循環 が続く傾向になることが想像できる。

要は、掻かなければ炎症がひどくなることが防げる(というか掻かなくなればアトピー性 皮膚炎が治ったことになるといえるだろう)のだが、それができれば、これほどアトピー 性皮膚炎が取り上げられることはないであろう。問題は「掻いてはいけない」と本人が 思っていても、無意識のうちに掻いてしまうのである。それは子供でもおなじである。経験 によって、掻いた後はもっと皮膚の状態が悪くなることは知っていても、ついつい掻いてしまうので ある。自分で悪いと思っているのに掻くことが止めれない、そんな人に他人(たとえ家族でも) が「掻くな」と言っても無駄である。むしろ、ストレスがたまってますます痒くなる場合が ある。

ここでは、まず「なんで掻いてしまうのか?」ということについて自分なりに考えてみる。 そして最後に、掻くことの対策について自分の経験を踏まえて考えてみる。

自分は医者でないので、医学的な根拠を示すことは不可能であるが、長年にわたりアトピー性 皮膚炎に悩み苦しんだ者として、「なぜ掻くのか」ということをアトピー性皮膚炎で無い人 に知ってもらえれば幸いである。アトピー性皮膚炎の友人や家族特にお子様を持つ人に、アトピー 性皮膚炎の患者の気持ちの一面を知って頂くことは、両者にとって良いことではないかと 素人ながら考えている。


なぜ掻くのか?

自分の経験や本、インターネットで得た知識を元に掻く原因についていくつか考えてみた。

@何かに触れて痒くなる

服や髪の毛などアレルゲンでない物に、ある程度の時間にわたって接触していると、 皮膚が破壊され、皮膚のバリアー機能が衰える。乾燥肌(ドライスキン)の状態も これと同じであると考えられる。バリアー機能が衰えるためアレルゲンの侵入が容易になり、 痒くなり、掻いてしまう。

Aアレルギー反応で痒くなる。

食物やダニ、カビ、花粉、金属などにアレルギー反応を示す人が、これらのものに 触れると痒くなって掻いてしまう。

Bストレスが原因で掻いてしまう

受験や転勤などの時期に症状が悪化するアトピー性患者の人が少なく無い。 考えられる原因としてはストレスであろう。メカニズムは詳しく知らないが、 ストレスがカユミを引き起こす体内物質を増加させるらしい。そうすると 当然掻く頻度が増えて、症状が悪化する。さらに痒くなって夜も眠れず、 集中力も下がり、勉強や仕事に身が入らない。ますますストレスを感じる ようになり、悪循環が繰り返される。

Cストレス解消のために掻いてしまう

上記と同じストレスが原因だが、その理由が少し違う。「掻く」という行為は たいへん気持ちのいいものなのである。あとで悪化すると分かっていても、 掻いてるときは快感を感じることが多い。掻くという行為がすべて 快感を感じるのが目的で行われるというわけではないであろうが、何かうまく いかない時や、悩み事を深く考えるときに、思わず掻いてしまうということは 、掻いて気持ち良くなることでストレスを発散させようと無意識に思っている のではないであろうか?この場合、掻くという行為は、いらつくときにタバコ やアルコールなどを摂取するのと同じ意味を持つのではないであろうか?

D愛情を求めるために掻く(特に子供の場合)

ある本によると子供のアトピー性皮膚炎の場合、愛情を求める行為として 掻く場合があるそうである。自分の経験では分からないが、多分思いっきり 掻いて母親の目を引きつけようとするのであろうか?愛情に 飢えていると思っている子供が万引きしたりグレルたりする場合がある (こう考えるのはテレビドラマの見過ぎだろうか?)が、それと似ている のであろうか?


各原因についての対策は?

@に対して:前髪を短くしたり、服を綿100%にするなどして皮膚への刺激を減らす対策が 考えられる。脱ステロイド時のリバウンドとして現れる肌の乾燥に対しては、 元来保湿を中心とするスキンケアが重視されてきたが、最近 「脱保湿」あるいは「乾燥ガビガビ療法」(「脱軟」という語句がオリジナル)という 療法が有効であることが分かってきた。これまでのスキンケアを 180度転換する療法であり、非常に効果が高いといわれる。しかし、現在のところ、 この療法を行う医師はごくごく少数のようである。本来の体質による乾燥肌に対して は、保湿を含めたスキンケアが重要ではないかと考えるが、同時に薬に頼らず体質改善により皮膚を 正常に戻そうとする努力も必要ではないかと思う。

Aに対して:この対策としてアレルゲン除去が考えられるが、アレルゲン除去は容易に は成功しないし、たとえ成功するとしてもすぐに効果を示すものではないようだ。 まず、アレルゲンの特定が困難であるし、特定したとしても完全にアレルゲンを除去 することは現実問題として不可能である。よってアレルゲン除去をできる範囲で行う のは意味があると思うが、健康的な生活と体を作りアレルギーに対抗し得ることを 目指すことも重要であると思う。除去と対抗の両面を考慮するのが効果的ではなかろうか?

B、Cについて:この対策としては、掻くという行為に頼らないストレス発散の手段を見つける こと(Cに当てはまる)と、ストレスに強くなるように精神面を鍛えること(B,Cともに 当てはまる)が考えられる。自分もいらいらする時に思わず掻くことが多かったが、最近は掻きそうになると、音楽を聞いたり、 楽器を弾いたりすることによってストレスを発散させるようにしている。 もっともリバウンドの激しかったときは、猛烈や痒さと痛さでのたうちまわり 理性が吹っ飛んで錯乱状態であった。純粋なアトピーとリバウンドにおける症状は 、皮膚の状態も感覚も各段に違うので、分けて考えるべきであろう。 ただ、このリバウンドのピークを乗りきった現在、精神面が以前よりも強くなった ためだろうか、以前よりもストレスに強くなり、結果として掻破行為も減った。 精神面を鍛えるには、今までの自分の行為や考え方、自分の性格などを客観的に 見つめることが大切なのではなかろうか?そして甘えを無くし、社会的に自立する ことも大切であると思う。この点において自分はまだまだ甘い面を多々のこしている と思う。

Dについて:愛情をもとめているなら、愛情を注げばよいと考えるが、過保護は良くないと 思う。B、Cでも述べたが、精神的に強くなるには自立が必要であると思うので、過保護は 将来的にアトピーを続行させる一因になり得ると思う。ここで問題になるのは、アトピーの お子様を持つお母さんもストレスをかなり感じている方が多いのではないかということだ。 お子様のアトピーを治そうとして、薬の塗布はもとより、食物除去、ダニ除去、洗剤や衣服 の選択など、いろいろ気を使う生活が毎日何年も続く場合、精神的に参ってしまう方も いらっしゃるのではなかろうか?お母さんがこんな状態では、余裕を持ってやさしくお子様に 接するということも困難に感じることもあるかもしれない。でも、子供とくに幼児が頼れる のはお母さんしかいない。アトピーで苦しんでいるのは子供本人である。そして、子供は親の 気持ちに敏感である。自分のせいでお母さんがいろいろ苦労するのを見るのは、子供にとって たいへん辛いことであり、ストレスを感じることであろう。だからお母さんはどんなに辛くて も、子供の前ではその感情をあらわさないようにして欲しいと思う。もっとも赤の他人の自分 が書くまでもなく、多くのお母さんがそうしていると思うが。


おわりに

アトピー性皮膚炎のにおいてはカユミの原因がいろいろあり、 そのうちの幾つかが複雑に関係しあっているケースも多いと思う。 そしてカユミの原因の特定も難しいが、特定後にカユミの原因を取り除くことも 困難であると思う。ダニなどのアレルゲンもそうだしストレスについてもそうであろう。 掻くのが悪いのは本人が一番良く分かっているのである。 他人が「掻くな」といくら言ってもカユミの原因がなくなる わけでもないし、掻くという行為を止めさせることもできないのである。余計に 痒くなることさえある。よって家族の理解と協力のもとに、悪化因子の除去や 悪化因子に耐える体と生活様式の達成を根気強く、地道に目指して行く ことが大切ではなかろうか。アトピー性皮膚炎は本人の自立や努力がもっとも 重要であると思うが、家族の支えも必要であると思う。


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