45. 宇宙へ行こう!

 新聞広告には時々びっくりさせられることがあります。
ある日曜日、朝刊にカラーで でかでかと全面広告が出ました。
タイトルは 宇宙へ行こう!』 
それは文字通り、あなたを “2001年宇宙の旅” にご招待します!!
というプレゼントの告知でした。

前々回(といっても昨年の11月ですが)このコーナーで
“私たち一般人も宇宙へ行ける時代が50年もしないうちに実現するでしょう”
と書いたこともある私としては、予想外の急展開です。

宇宙旅行という言葉からどんなシーンを思い浮かべるでしょう。
SF映画の一場面か、はたまたスペースシャトルで土井さんが挑んだような
船外活動=宇宙遊泳のイメージか。
窓の外には青く輝く地球と 漆黒の宇宙空間が広がる・・・ いかにも
そんなイメージで作られたP社のテレビCMも流れています。
しかし、この広告でいう “宇宙旅行” は一般的なイメージのそれとは少々
違っているような気がしました。

炭酸飲料でおなじみのP社が、クイズ正解者の中から
抽選で5名様をご招待!というこの企画、賞品が“海外旅行”ならよくあるとしても、
旅の行き先が “宇宙” なのですから驚きです。
じつは天文雑誌などではすでに話題となっていた、2001年12月から
実施予定の米国のある旅行会社主催 『宇宙空間体験ツアー』 への参加チケットが
プレゼントされ、約1週間のプログラムのうち、急加速上昇時のG(重力)や無重力状態
に身体を慣らす訓練などを受けたのち、最終日に宇宙空間に飛び立つというもの。
プレゼントとは関係なく、一般のツアー参加者募集はすでに始まっていて、
反響はかなり大きいようです。誰にでも宇宙飛行士の体験ができる
史上初のプログラム、ついに登場!というわけです。

とにかく前例のないツアーなので安全性などの面で不安もあり、予定どおり
実施されるのかも不確定と噂されておりますが、そもそもこれが本当に宇宙旅行?
と私は疑問を感じます。
ツアー参加者はロケットというより、小型のジェット旅客機(スペースクルーザーと呼ぶ)
搭乗し、地上 110kmの無重力圏を目指します。そこでおよそ2分半の
無重力状態を体験して帰還、終了です。

再確認・・・高度110kmですよ、2分半ですよ。そこが果たして宇宙なのかという
素朴な疑問を誰しも抱きませんか? 流れ星がひかり、オーロラが発生するのが
だいたいこの高度、大気の上層部と言ったほうがよさそう。
地球を周回する人工衛星は低くても高度 300km以上はあります。

そして2分半の無重力体験― 。
上高地美化センターのさわやかコーナー(コインシャワー)
100円で2分半のお湯が出ます。2分半、長いような短いような、
貴重な体験には違いないけれど、「すみません、もう1回飛んで下さい」という
わけにはいかないのでしょうか。なんとも物足りない印象です。

最終的には価値観の問題で、“宇宙”に行けるのなら安いもんだ、と考えるか
それほど魅力を感じないかで意見は別れると思いますが、このツアーの参加費用は
98,000ドル、円安のいま 1,000万円を超えます。
ちなみにこのお値段で “月旅行” のツアーがあれば、私なら貯金をはたいてでも
参加したいなーと思います。
そんな時代が来るまでには、やはりあと50年は待つ必要があるでしょうね。


上高地ビジターセンターだより 『マガモ新聞』 No.174 (1998年6月22日発行)より 

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