『ミンクの車』って、何じゃい? ミンクが乗る車、ミンク製の車?
そんなことを考えさせられるTHEY MIGHT BE GIANTSの5年ぶりのオリジナル・アルバムが出ました。
このバンドは、僕がリアルタイムで好きになった最初の洋楽バンド。
ということで、レビューのコーナー音楽編の一発目は、THEY MIGHT BE GIANTS久々のオリジナル・アルバム発売を記念して、
この『MINK CAR』にします。
まず知らない人のためにバンドの説明。メンバーは、ジョン・リンネルとジョン・フランズバーグの2人。
最近はバンド形式になっているが、基本的にはこの2人のジョンが、楽器をとっかえひっかえ演奏し歌うスタイル。
もう10年以上のキャリアのあるバンドなんだけど、アメリカインディーズの、
「のん気に好きなことをやる」ってスタンスの基盤を作ったって言っても過言じゃない(※1)。
アルバムタイトルも妙だけど、曲名をざっと見ても、「一つ目ロック」やら「空飛ぶソンブレロ」なんてのが並んでいる。
いわゆるナンセンス・ソング。輸入盤を買ったので、歌詞の内容はよくわかりませんが、おそらくまたヘンテコな歌を歌っているに違いない。
そんな、深刻なことは一切歌わないっていう潔さが好きだ。
社会への怒りや熱い恋なんかは、他のバンドに任せときゃいいよ。わざわざ似たような歌を増やすこたあない。
あとは、曲の短さも特徴的。前作では、わりと長めの曲が多かったんだけど、今回は17曲入りで約47分。
4分以上の曲は一曲もなし。スリー・ミニッツ・マジックってやつだね。
だから、ポップスのおいしいところがギュッとコンパクトにまとまっている。
もちろんそれだけじゃなくって、ねじったり歪めたりしてどっかマンガチックにディフォルメされているのがこのバンドらしさ(※2)。
要するにですね、トボけたユーモアが彼らの持ち味なんだよ。
僕が連想するのは、アメリカのタブロイド判のB級ニュース。
「巨大ミミズ発見!」とか「生まれてから一度も髭を剃ったことのない男!」とか「エルビスは生きていた!」ってやつ。
そんな記事や、さらにSFやミステリーのパルプ雑誌、アメコミ、最新モードの広告なんかも一緒に切り抜いて並べた、
スクラップブック。それを、パラパラとめくって眺めてるような、そんなアルバム。って、こんな説明で伝わるかな。
B級カルチャーを、こうやって取り出して並べてみせるってのは、何かアメリカっぽい(※3)。
対象への距離の取り方と並べ方が「ポップ」だよね。距離がないと笑いも作れないし。
でも、こういうのって下手するとコンセプト重視の頭でっかちになりがちなんだ。「オタク」とか。
実際、彼らもそう思われているかもしれない。でもね、全然違うんだよ!
ライブを観るとわかるけど、「これおもしろいじゃん」ってノリではしゃいでる感じなんだよね。実に楽しそうに演奏してる。
あるでしょ、真夜中に友達とバカ話をしてて異常にテンションが上がってくこと。そのノリ。
そんな調子でファニーなアイディアを曲にしてるんじゃないかな。そんなやんちゃぶりが、とってもキュート。
ああ、10年前から変わってないなあ。相変わらず、トボケてて、やんちゃで、のん気。
それだけでうれしい。
やなニュースが多い毎日だけど、もうね、こういうバンドがいてくれることがうれしい。
※1ホフディランのユウヒが彼らの大ファン。ライブアルバムに、思い入れたっぷりのライナーを書いています。
二人のメンバーが共に歌を作りボーカルを取るっていうのは、ホフもTMBGも一緒。
※2例えば、プレステの『ウンジャマラミー』の音楽みたいなものを想像してもらってもいい。
ちなみに、『ウンジャマラミー』のキャラクターを手掛けたロドニー・A・グリーブラットは、
TMBGのファーストアルバムのジャケットを描いています。
※3ホラ話的バカバカしさは、アメリカ映画で言うとコーエン兄弟に近い。
コミック的センスは、ティム・バートンかな。僕のイメージする「ポップ」ってのも、ここいら辺の感覚なんだけど…。
2001.11