2003年の生きのばし
The ピーズ『The ピーズ』



今年前半の音楽ニュースといえば、やっぱピーズでしょう(※1)。世の中ではどうだか知らんが、俺的には、ぶっちぎりで、トップ。
7年ぶりのアルバムが出て狂喜したのが2月。なんせ、これをずーっと待ってたからね。 だもんで、ライブに何度も足を運んだりして、ピーズ祭(略してピー祭)なんて騒いでたわけよ。
で、今年も残り少なくなってきたんで、ちょっとまとめておこうかなと。

じゃ、まず、そのアルバム『The ピーズ』を聴いてみるべ。バンド名がそのままタイトルになってる。まあ自信作ってことだいね。 長い休業期間を挟んでのアルバムだから、ご挨拶代わりってのもあるかな。
で、聴いた印象は、「やけにむき出しだなあ」と。
以前から、むき出しなバンドだったんだけど、なんかもう、「それって本質じゃん」っていうところが曝されている。 本質ってのは、言っちゃえば、「生きること」。それにともなう「食うこと」「やること」。
のっけからそんな大仰な。でも、わかるよね。ただ食って寝て子供作って死ぬだけだったら簡単なんだけど、それについてぐしゃぐしゃ考えちゃったりするのが人間なわけで。 そうしたぐしゃぐしゃが、むき出しで歌に込められている。

♪死にたい朝 まだ目覚ましかけて
 明日まで生きている
1曲目、ジャッジャーンってギターのストロークのあと、いきなりこのフレーズから始まる。
「生きのばし」ってタイトルからもう凄い。 「生きのびる」っていうと、それはもう命の瀬戸際みたいな感じだけど、「生きのばし」の場合、死ぬのを先延ばしにしてるニュアンスになる。 なんとなく生きづらい気分があって、それでも死ぬのも大変だしなんとなく生きているって感じね(※2)。
もう、だるいわけ、毎日が。うっとおしいわけ、いろんなものごとが。わかるわかる、わかるよね。 だってさ、そんなキラキラした日々なんて、そうはないでしょ。ほとんどの日々は、退屈でかったるくてどうでもいいようなことでできている。
輝く日々ばかりを歌った歌が、世の中にはあふれすぎている。 それはそれでいいけどさ、でもホントにそんなに毎日毎日楽しいのかよ? 楽しくしなきゃ、楽しいはずだって思ってるだけじゃないのか?  よく考えてみなよ。人生は輝かなきゃいけないのか? しょぼくれた毎日は、生きてるに値しないのか?
んなこたあないよね。輝きたがってばかりいるから、退屈な毎日は耐えがたいものになるんじゃねえの?

他の曲でも、くり返し歌われるのは、なげやりで、だらしない日常だ。 ときおり焦って、びくついて、ヤケ起こして、でまた、疲れちゃう。そんなみっともない日常だ。
一回音楽を辞めた人間がまた歌い出す。みんな「何で?」って思うでしょ。 ピーズのフロントマン・はるは、「それしかできねえからさぁ」なんて言ってたと思うけど、それは実感だと思う。
「生還」とか「復活」とか、そういう勇ましいもんじゃないの。 どこへ行っても何してもだるいなら、自分ができることを楽しくやったほうがいいだろ、ってことなんじゃないかな。いや、想像だけど。
明日のことなんかわかんない。明日は今日の延長で、生きのばしていった先にしかない。これは、すごく怖いことだよね(※3)。 今がダメなら、輝かしい未来はいつまでたっても来ない。
でもさ、もう一度言うけど、ホントに輝かないといけないのか?

じゃ、ラストの曲も紹介しておこうかな。「グライダー」って曲。
♪10年前も10年先も
 同じ青な空を行くよ
グライダーは、ギリギリのまま低空飛行を続ける。それでもいいじゃんかよ。 ぐしゃぐしゃになりながら、なんとか生きのばしてる。それでいいじゃんかよ。
そんなわけでアルバムは最後の曲で、「生きのばし」のこんなフレーズと響きあう。
♪あの日あの空拝めるのは あの日のボクらだけ
 精々 生きのびてくれ
青空が見える。こんな場所からでも、青空は見える。うん、それだけでもう充分じゃん。

※1 ピーズが活躍してたのは、90年代前半。大学時代は、ホントよくピーズを聴いていた。 3ピースバンドで、曲を書いているのが、ベース&ボーカルの、はる。
※2 『とどめをハデにくれ』ってアルバムに収録されている「シニタイヤツハシネ」ってのも、この系列の名曲。出だしのフレーズは、こんな感じ。 ♪変態 凡人 年をとれ〜
※3 この感覚は、現在は多くの人が腑に落ちると思う。でも、90年代半ばにこうした気分を歌ってたのは、僕の聴いていた中では、 ピーズ以外では、奥田民生とフィッシュマンズくらいだった。


2003.11

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