21世紀最初の年に出たあがた森魚のニューアルバム。
変なタイトルだけどここ数年のあがた森魚の中では一番いいんじゃないかな(※1)。
そもそも、あがた森魚って30年も音楽やってる人だからさ、それに順位をつけても意味はないんだけど、
楽曲のクオリティ、バラエティ、テンションの高さ、どれをとっても高密度な感じ。
なおかつ、ポップで聴きやすい。
HARCOやBIKKEなど若手ミュージシャンが参加しているせいで、活性化されたのかな。
久保田真琴や細野晴臣といった旧友のサポートも、きめ細やかな音世界を作り出すのにひと役買ってる。
思えば、前作『日本少年2000系』は、過去の総決算的アルバムだった(※2)。
そして21世紀になって、『20世紀漂流記』というベストアルバムを発表。長い長い音楽生活をぐるっと一回り。
で、21世紀モードのあがた森魚が、この長ーいタイトルのアルバムになったわけ。
佐藤敬子先生ってのは、あがた森魚の小学校時代の先生の名前らしい。
1曲目のタイトル曲では、この先生の影響で、76年のアルバム『日本少年』を作ることになったって歌ってる(※3)。
まったくもってプライベートな歌だ。実名出されても…って感じ。
他にも「細野(晴臣)さん」や「(鈴木)慶一くんや矢野(顕子)さん」なんてのも、歌詞に登場する。
ところが、そんな個人的な思い出が、普遍性へ突き抜けていく。
なんだか「憧れ」や「郷愁」って気分が伝わってくるんだ。
プライベートな出来事は知らなくても、あの甘酸っぱい感じはよく知っている。
アルバムの構成も、
前半であがたの少年時代の思い出を歌い、後半、時や空間を超えた宇宙的なイメージまで飛翔するようになっている。
そうやって、20世紀から21世紀へ橋を架けているんだ。
それは、まさに冒険旅行のダイナミズム。夏休みの冒険旅行。
『海底二万哩』のネモ船長と共にめぐる、小樽から九州、メキシコ、バルカンまでの海底旅行。
稲垣足穂の彗星と共にめぐる、少年時代から億光年彼方までの宇宙旅行。
最後の曲「太陽コロゲテ46億年」は20世紀へのオマージュ。
♪宇宙が生まれて130億年
ラジオが歌ってまだ80年
奴隷解放100数十年
Jimi Hendrixおどけてまだ30年
LENONがころげて20年ちょっと
ピアスとタトゥはまだ9ヵ月
ああ、なんて遠くを見つめているんだろう。
「過去はいつでも新しく、未来はいつでも懐かしい」。(※4)
「今、ここ」だけをすりぬけて、いつかのどこかを目指す冒険心。二つの世紀の交点からひびくエコー。
憧れも郷愁も、遠くを見つめるときに沸いてくる。
グッバイ20世紀(遠くへ来ちゃったなあ)、ハロー21世紀(遠くへ行きたいなあ)!
※1ボーカルのはじけっぷりも、ここ数年では最高。ここいらへんは、趣味が分かれるところだと思う。
クセありすぎてうっとおしいって思う人もいるだろうな。僕は、パンクだなあって思うけど。
※2プロデュースは鈴木慶一。サニーデイの曽我部恵一とのリリカルなデュエットが聴ける。
※3ちなみに、ややこしいから書いておくけど、『日本少年』(76年)の続編が『日本少年2000系』(99年)。
※4誰のフレーズかは忘れちゃったけど、好きなんだ、この感じ。
2001.12