・トレードマークの赤白ボーダーシャツは、見つけたときにまとめ買いする。
・長野の別荘には、2階から1階へ通じるすべり台がある。
・カラオケ十八番は「ベサメムーチョ」。
・吉祥寺での目撃情報多数!
誰のことを話題にしてるかわかりますね。もちろんこれらはすべて、我らが楳図かずお先生のことですよ。
僕は音楽でもマンガでも、作者の人となりは作品から伝わればいいや、って思ってる(※1)。
作者がどういう人かってのは、積極的に知りたいとは思わないし、会ってみたいともあんまり思わない。
でもね、楳図かずおは別格。存在自体が作品みたいな人だからさ。どんな人かすごく興味がある。
楳図かずおがマンガを描かなくなって、もう5年ぐらい経つんだけど、今年は楳図ファンにはうれしい本が出たんです。
うれしいから紹介しちゃう。
単行本未収録の作品を集めた『妄想の花園』と、
楳図かずおを大々的に特集した雑誌「プリンツ21 2001年冬号 楳図かずお 脳の中の宇宙」。
どちらもとことんこだわった造りで、編集者の愛情が感じられる。
と言うか、とことん極端にやらないと、楳図先生自身のパワーに負けちゃうから。
『妄想の花園』
これは、未発表作品を、ホラー、ギャグ、初期作品に分けた3分冊形式で、それぞれの表紙は叫ぶ楳図かずおの顔写真。
これらが一つの箱に入っていて、さらに箱に開いた丸い穴から楳図かずおの目だけが覗くっていう豪華な装丁です。
でも、豪華なんだけどそれを感じさせない、どこか稚気あふれるチープさが、お茶目。
この中では、タイトルどおり妄想力が乱れ咲くホラー編がオススメ。
この花園にはグロテスクな花々が咲いています。でもね、その土壌には強烈な「愛」が埋まってるんです。
愛から咲く異形の花。
そう、実は楳図先生はとーってもロマンチスト。かつ、愛の怖い面も知っているリアリスト。
例えば、「霧の中」って作品が収録されてるんだけど、これは人類初の海王星移住のために、
海王星の環境に合わせて人体を造り変えるって話。
この手の変身話は、楳図かずおの得意分野。「へび少女」になったりする、あれね。
ここで描かれるのは、自分が自分じゃなくなっていく恐怖。「手が吸盤になっちゃったよお」なんて。
でもね、それはときに快感だったりもする。自分の中に他者を発見する不安と快感。これが、「霧の中」のお話。
怖いはキモチイイ、キモチイイは怖い。
で、それって、愛に似てるよねってのが僕の感想(※2)。
「楳図かずお 脳の中の宇宙」
こちらは、雑誌っていう性格上、作品よりも楳図かずおのキャラクターにスポットを当てた内容です。
で、その内容がまたのどにからまりそうなくらい濃い。
しょっぱなから、現代美術の草間彌生とのしましま・みずたま対談。シマシマの魅力について、語りまくり。
さらに、吉祥寺お散歩マップ、女性キャラクター図鑑、
グワシの変遷、黄色い外装の自宅や赤白ボーダーの外装の別荘の写真、猫目小僧の歌の振り付けまで載ってます。
近田春夫、奈良美智、浅野忠信、久住昌之、横尾忠則、獄本野ばらなどのコメントも収録(※3)。
汲めども尽きない不思議キャラっぷりを、思う存分堪能できます。
冒頭に挙げたような、僕が知ってる楳図かずお伝説も、ほとんど網羅されていました。
その他にもいろいろ面白生態が紹介されていて、もう、ネタの宝庫。例えばね、こんな感じ。
・自宅の布団もパジャマも赤白シマシマ。
・手品をマギー司郎に教わっている。
・自作の歌にはすべて振り付けがついている。
・無印良品のフルーツグミがお気に入り。
しかし、『妄想の花園』「脳の中の宇宙」と、何故か似たようなニュアンスのタイトルだなあ。
入れ替えても違和感ないよ。
つまりは、そのぐらい楳図かずおの頭の中は興味深いってことでしょう。ああ、会ってみたいなあ。
現在65歳。少年のようにおどける写真を見てると、この人永遠に死なないような気がするよ。
あんな怖いマンガを描く人が、こんなに無邪気なのは、なんか奇跡を見ているようだ。
※1逆に言うと、いい作品なら作者のことが伝わってくるはず、って思ってる。
イヤなのは、「いい人だから作品もいいはずだ」的な本末転倒な考え。
※2『わたしは真悟』は、マンガ史上に輝く愛の大傑作。
ちなみに、砂原良徳こと「まりん」の名前は、このマンガの主人公から取ったとか。
※3この本には出てこないけど、岡崎京子から佐野史郎、ピエール瀧まで、あちこちに楳図ファンはいる。
確か鈴木蘭々も、生涯マンガベスト1(いや、2位だったかな?)に楳図かずおの『漂流教室』を挙げてたような気がする。
ついでに言っておくと、大林宣彦が『漂流教室』を映画化してるけど、楳図ファンとしてあれは許せん。
2001.12