ゴリンジュー
山田風太郎



今年の物故者で一番残念だったのが、作家の山田風太郎(※1)。
大学卒業後数年、山田風太郎にハマって、10数冊くらいは読んだのかな?
ところが、この人、出版されてる本は多いし、いろんな文庫や新書で出てるもんで、 手をつけられなくなって、そのうちペースが落ちちゃった。
で、死後、ちょっとまた読んでみようかなって気になって、これからしばらくは、 「山田風太郎を月2冊は読むぞ!」と目標を立てました。今月は、『忍法忠臣蔵』でも読もうかね。

知らない人のためにちょっと説明すると、山田風太郎とは、忍法帖っていう一大ジャンルを築いた作家。 映画にもなった『魔界転生』の原作者で、「くノ一」(女忍者のことですよ)って言葉を普及させたのもこの人。
この忍法帖シリーズは、凄まじい忍法のオンパレード。 体が溶けるとか、天井からぶら下がるとか、別人に化けるなんてのは序の口。 例えば、忍法帖第一作目『甲賀忍法帖』には、20人の忍者が出てくるんだけど、 皮膚全体が吸盤のようになりそこからヒルのごとく血を吸いつくす女忍者、 両手両足がないかわりに腹に呑み込んでいる槍の穂先を食道筋の力で吹き出す芋虫忍者などなど、奇っ怪忍法の乱れ打ち。
その忍法のからくりをいちいち解説しているところもユニークで、ありえないんだけど、小説内ではありえそうなんだ。
その他にも、明治を舞台にいろんな歴史上の人物が登場する「明治もの」や、 江戸川乱歩に絶賛された推理小説なんかも書いてます(※2)。

で、今まで読んだものから僕が感じる山田風太郎の魅力は、 すべてを笑い飛ばすような人間への冷静な距離感と、エログロと言われかねないとんでもない奇想。 大人の人間観と、子供の空想力っていうか。 これが、感傷に湿らず「語り」だけで成り立っているような小説群を生み出す素となっているんじゃないかな。
実際、 『人間臨終図鑑』っていう傑作では、 古今東西の偉人・有名人の死に方を何の感傷も交えずズラズラっと並べてみせている。 もともと医学を志してた人だからかもしれないけど、観察してその報告をしているって感じ。 でも、取り出すエピソードが妙に可笑しかったりするんだ。
いろんな人が指摘しているけど、この人の小説では、どんなにエロやグロが出てきても品格がある。 下世話な人間を描いても独特の香気がある。悲惨な状況を描いても人を食ったユーモアがある。
実は、僕は、こうしたスタンスをスタンダードにしたいんだ。 こういう風にものごとを見れる人が、正道であって欲しいんだ。
だから、山田風太郎が死んじゃうと困る。正道を見失いそうになる。

でもね「物は壊れる人は死ぬ」。(※3)
きっとそれを一番自覚していたのは、『人間臨終図鑑』を書いた山田風太郎自身だったに違いない。
あえてカタカナで、ゴメイフクをイノル。

※12001年7月28日死去。あと、今年は、相米慎二とジョージ・ハリスンが逝ってしまいましたね。
※2オススメは、『妖異金瓶梅』っていう推理小説。中国の『金瓶梅』の世界を舞台にしている。 これには、ホントびっくりした。まあ、他の作品もほとんど面白いんだけどね。
※3byムーンライダース


2001.12

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