パラレル・ニッキ



 

騙されないで!





 2001年12月22日 ニレミアム

2001年末が近づいてきて、「ニレミアム、ニレミアム」ってあっちこっちで大騒ぎしてるね。 ホント、日本人ってお調子者っていうか、流されやすいっていうか、こーゆーお祭り騒ぎに弱いよな。
「ニレミアム」なんて、今年になって初めて聞いたよ。去年まで、「世紀末」って言ってたのにさ。 もとは、アイルランド伝説からきているそうだ。ハリー・ポッターの次はニレミアムかよ。日本人、関係ないじゃん。
でも、かくいう僕も、ニレミアムにわけもなく浮き足立っちゃってます。
インドネシアのニレミアムビーチなんて、たまたまニレミアムが名前についていただけで、観光ラッシュだって。 なーんもないところなのに。 新婚旅行とか行っちゃって、そこで子種を仕込んで、ニレミアム・ベイビーとかってはしゃぐんだぜ、きっと。
ああ、行きてえ、新婚旅行とニレミアム・ビーチ。
渋谷のパルコでは、ニレミアム記念セールとか言って、ニレミアム帽を売ってたよ。 ぼんぼりみたいなのが10個ついてて、カウントダウンのときに一個ずつ火をつけていくらしい。 で、頭を振り回して踊るんだ。「お子様は危ないので被らせないでください」だって。大人でも危ないっつうの。 火のかわりに安全な電飾を使ったやつもあるらしい。けど、どうせやるなら本格的にやりたいよな。 ああ被りてえ、ニレミアム帽。それで、ニレミアム・ビーチに行きてえ。
あと、一緒に売ってたのが、ニレミアム・ポンチョ。裾のところにぼんぼりみたいなのが10個ついていて…。




 2002年1月5日 ヒト型ロボットがやって来たの巻

新年早々、ビッグニュースだよ! 我が家にヒト型ロボットがやって来たんだ。 見るからに愚鈍そうなヤツ。未来から、タイムマシンに乗ってやって来たらしい。 要領を得ない話しぶりで、最初は何言ってるのかよくわかんなかったんだけど、 どうやら僕の自尊心を満足させるだけのために、未来の孫が贈ってきたみたい。 確かに、何をやらせてもドジばっかりで、頭も悪けりゃ運動神経も鈍い。 ロボットだから人工知能で一応考えて行動してるみたいなんだ。 でもね、キャッチボールをすれば近所のガラスを割るし、テストをすれば0点ばかりだし。 そのダメっぷりが面白い。でね、そうやって失敗すると必ず泣きついてくるんだ。 「助けて〜」って。「しょうがないなあ」なんて言いながらも、自尊心をくすぐられる。 これで、しばらくは遊べそう。僕らネコ族とヒト族は古くからのつきあいだからさ、飽きるまではかわいがってやろうと思う。
名前は、「のび太」ってつけてやった。




 2002年1月30日 息子'02

小沢健二「ブギーバック」のセルフカバーに次いで、奥田民生も「息子」をセルフカバーしたらしい。 確か、オリジナルが出たのって、同じ頃だったよな。90年代半ば。

当時歌われてた息子も、今や成人。息子だけど大人。
サビは、例えばこんな風。

♪そうだ 退屈や ときめきや ずる休みや
 ぜい肉や 告白や ダジャレや
 愛の巣や ストレスや 火遊びや 晴れ舞台や
 泥酔や 真夜中の電話や




 2002年2月13日 オリンピック注目種目

ああ、オリンピック! 見てる? 僕? もちろん見てるよ。
僕が注目してる種目は、「大声」。世界各国の大声猛者が大集結。
いや、「大声」に注目なんて言ってるけどさ、そもそも僕は、声のでかい奴ってあんまり好きじゃないんだ。 自己主張が強すぎて。でもね、さすがにオリンピックともなると声のでかさがハンパじゃないから、 単純にすごいなあって思う。人間の能力は計り知れないなあって。もう無駄にでかい。 大声で5枚重ねの瓦を割ったとか、魚が腹を上にして浮かんできたとか、消防隊が来る前に山火事を消し止めたとか、 婚約者を発狂に追い込んだとか、そんなリーサルウェポンたちが競い合う。
予選では、喉にマイクとアンプを仕込んてた奴がいたね。ハウっちゃって、すぐにバレてたけど。 もちろん、失格。あれ、アメリカ人でしょ。ったく、勝つためには何してもいいのかよ?  そもそも、あいつら声はでかいけど、繊細さがないよな。がさつ。だから、小細工しても詰めが甘いんだよ。 そりゃ、芸術点も低くなるっつうの。
でも、日本人も人のこと言えないか。日本人って、いざとなると声が出なくなるでしょ。 血を吐きつつトレーニングをしたなんつって、ドキュメンタリーでやってるじゃん。過酷な練習。 「もっと腹から声出せぇっ」コーチも血とツバを吐きながら怒鳴りつける。 それに耐えて耐えて、でも大舞台に立つと緊張して声が裏返っちゃう。くやしーっ! もう男泣き。 でも、その泣いてる声のほうが、でかかったりするんだよ。
さあ、今年は、どんな大声が聞けるんだろう。中継が楽しみ。もちろん、テレビの音声は下げておくよ。 本棚とかが崩れちゃうから。ソルトレイクだって、何が起きるかわからないよ。 教会のステンドグラスが粉々になって、雪山では雪崩が起きる。冬期五輪の醍醐味、ここにあり。




 2002年2月22日 祝!ビーチボールズ来日公演

いやあ、よかったよ。伝説のバンド、ビーチボールズのライブ。
美しいハーモニー、ノリノリのサーフギター、2月なのに会場はまるで真夏の浜辺のようだ。 ロック界の至宝って言ってもいいでしょう。誰もがティーン・エイジャーに帰ってしまうような、素晴らしい一夜だった。
ビーチボールズと言えば、サーフボードを抱えたジャケット写真が有名だけど、 実は誰もサーフィンできないんだってね。サーファーに憧れながら、空想の中でサーフィンをしてたってことか。 部屋で汗かきながらサーファーの自分を夢想している。 車とばして、ビッグウェイヴを手なづけて、女の子にモテモテな、ティーンエイジャーの自分…。 楽しーっ、FUN FUN FUN。いわば、ウソサーフィン。 そんな真夏の想いを歌ったのが、彼らの最大のヒット曲「サーフィンUSO」だ。
作詞・作曲を担当してた、ボーカルのホライアン・ウィウソンは、ジャンキーだったんだって。 夢見るための薬ばっか飲んでてさ、そのうち夢と現実が区別がつかなくなっちゃったらしい。 ホントに、サーファーだと思い込んじゃったのかなあ。そうなったら、部屋から出なくったてオッケーだもんな。 「駄目な僕」に向き合わなくても、自分の頭の中だけで足りちゃうんだから。 それで、クスリとジャンクフードでブクブク太りだしちゃうんだ。 まるでボール。妄想でパンパンに膨らんだビーチボール。
でもね、そこから生まれた歌の美しいこと。 波に反射する太陽のぎらぎらとか、ソフトクリームの甘ったるい味とか、あふれるコカコーラの泡とか、 日焼けのあとの皮膚がむずむずとか、足の指にはさまった砂のざらざらとか、遠くの雷と突然の雨とか、 鳥がぱーっと空から降りてきて何かをくわえてまた飛び去る感じとか、夏の光景がくっきりと浮かぶんだ。 いや、目に浮かぶというよりも、体全体が感じる。夏のグッドバイブレーションをビンビンに感じるんだ。
アンコールで、ホライアンが叫んだ。
「リターン・トゥ・ザ・ビーチ!」
あの浜辺へ帰ろう! でも「あの浜辺」は、空想の中にしかないんだ。




 2002年5月7日 3つのお願い

連休明けって、大嫌い。休みは楽しかったなあと、過去ばかり振り返る。
そんなことを考えてたら、都合よくひからびた猿の手を拾った。
これってもしかして、「3つの願い」をかなえてくれる、あの有名な「猿の手」じゃない?

オッケー、早速お願いしてみよう。ぜいたくは言わない。
まずね、この気に入らない連休明けの気分をどうにかしたいね。

「連休明けをなくしてください」

ボワンと煙。早速カレンダーチェックしたら、あら? 国民の祝日がなくなってる…。
やられた。連休自体もなくなっちゃったわけね。
あわてて2つ目のお願い。

「やっぱり、連休をずっと続けてください」

ボワワンと煙。そしたら、会社から電話。「今日から来なくていいから」
それってクビ? そりゃ、ずっと連休だけどさ。やべーじゃん。
欲張って、結局すべてを失うっていう、おとぎ話のパターンにはまってる。

「文無しになっちゃうよ。早く戻してよ!」

ハッ…、3つ目の願いが…。





 

↓ここから2003年です





 2003年2月17日 飽食バレンタイン

ひさしぶりっ! ゴメンゴメン、忙しくって、チョコのお礼言うの遅くなっちゃった。
全国のみんな、4トントラック20台分のチョコレート、ありがとう。
でも、こんなにいっぱい、食い切れないよ。
だから、町中のモテない男たちを公民館に集めて、分けてやったさ。1個100円で。
お年寄りとか、「こんなハイカラなもの食べたのは初めてじゃ」って大喜び。歯がないから虫歯になる心配はないしね。
受験生とか、「これで大学合格間違いなしですっ!」だって。絵馬のかわりにぶらさげとくって。
「バブブブブー」って、これは赤ちゃんね。
あーいいことしたっ。でも、それ以外のもらったチョコはどーしよっかな。
タンクローリーでホットチョコレートくれた君! 玄関がもうベタベタだよ! ふんとにもうっ!
あと、ヘリから麦チョコをばらまいてくれた君! 子供と鳩がいっぱい集まってきちゃって、大変だったよ! 糞とにもうっ!
それから、山ごと「きのこの山」をくれた君! 土地譲渡の手続きがややこしいよ! 弁護士だか計理士も一緒に送って!
あ、夜空にぶら下がってる銀の円盤。月かと思ったら、銀紙に包んだ板チョコだったんだね。
今度、アポロチョコに乗って取ってくるわ。





 2003年3月11日 ここだけの話

まだ世の中には知られてない情報なんだけど、いいこと教えてあげる。ネタ元は明かせないけど、確かな筋の情報だから。
あのね、花粉症には、紫蘇とかヨーグルトとか甜茶が効くなんて言われてるでしょ。 どうせ、ものみんたあたりが言ってたんだろうけど、でも、あんなのガセだからね。マスコミに躍らされんなよ。 ホントに重要な情報は、こーゆーささやかなサイトに隠されているんだぜ。
もったいつけてもしょうがないからズバリ言っちゃうけどさ、ホントに花粉症に効くのは、「甲子園の土」なんだよ。 1日1回、お湯に溶いてゴクっと飲む。これを1週間も続ければ、効果てきめん。 鼻がすーっと通って、お目々ぱっちりで、おねしょも夜泣きも治るから。花粉症界のホームラン王だぞ。 ある博士が、実験に実験を重ねて発見したんだって。いわゆる「独自の研究」ってやつ。
ん? うさん臭いと思ってるの?
だったらいいよ。別に、ムリに信じてくれなくても。 俺はただ、みんなくしゃみ鼻水目のかゆみがつらいんじゃないかなー、って思っただけだから。 つらかったら、すこーしだけ格安で分けてあげようかなー、って思っただけだから。
お金? ぜんぜん安いよ。ウチは高校球児のルートがあるし。 ホントは、そんな安売りはしないんだけどさ。ここを見てくれてる人にだけ特別に、ね。 よく、芸能人、政治家、スポーツ選手からも、分けて欲しいって頼まれるんだよね。 でも、心から必要としてる人にしか、売らないことにしてるの。 だって、量に限りがあるじゃん。マウンドがボコボコになっちゃう。
ということで、詳しいことが知りたい人はメールください。
急いだほうがいいと思うよ。ぼやぼやしてっと、春の高校野球が終わっちゃうから。





 2003年4月8日 ファッション通信

はいっどぉもっ。アワ・ファッション・アワーの時間です。
今日は、フレッシュマンのみんなに、TOKYOスタイルを紹介しちゃおうかな。
オシャレっ子なら押さえておきたい、この春のトレンド。
いやホント、中身を磨く前に、外見を磨けと言いたい。ダサいとモテないぞ!

まず、絶対押さえておきたいアイテムは、やっぱ「名札」っしょ。 早い人たちはとっくに知ってると思うけど、特にこれからの時期は大活躍。 新歓コンパとか、これを付けてるだけで、視線くぎ付け間違いなし。 業務用のプラスチックケースに入っているやつとか、幼稚園用のチューリップ型とか、シンプルに白い布巾もやばめ。 その日の気分でコーディネイトしてみよう。名前は、もちろん手書きがオシャレ。 色や字を工夫してセンスをアピール。オリジナリティは、TOKYOスタイルの基本だよね。 ちなみに、オシャレ上級者は、名前もオリジナルなものを付けみるといいかも。 「ビデ夫人」とか、「学徒」とか、「ものみんた」とか、名前も気分に合わせてコーディネイト!

はいっ、次はカバンですよ。今年の気分としては、金属系でいきたい。特にストリートで流行っているのが、「おかもち」。 早い人たちはとっくに持ってるよね。カバンにゴチャゴチャものを入れるのはもう古い。 21世紀は、メタリックなボディのお・か・も・ち。アタッチメントで段を作って、すっきり整頓。 ぶっちゃけ、スケボーとか乗りながら、持ち運ぶべきでしょ。

あとね、今年はヨーロピアンスタイルがきてるよねー。早い人たちはとっくにやってるでしょ。
「ルパン」は、もうゲットした? 片眼鏡だよ、鎖がついてるやつ。彫りの浅い日本人はかけるのが難しいけど、そこは気合いで。 ファッションの基本は気合いだから。
それから、「ナポレオン」もあるね。例の横がくるっと跳ね上がった帽子。あの、カール具合がとってもキュート。 肩にオウムを止まらせてもオシャレ。ってキャラが海賊になってるけど、ファッションの基本はミクスチャーだし。
あと、去年からじわじわきてるのが、「ザビエル」ね。首回りにエリマキトカゲみたいな、巨大な蛇腹を…。





 2003年8月4日 よっ、あーわやー!

華やかな花火大会の裏では、例えば、こんなことが繰り広げられていた。

俺たちゃ、この江戸の花火をずうっと守り続けてきたんだよ。
それがどうでぇ、最近は、やれ星形だ、やれハート型だ、変形花火なんてくだらねえもんが流行ってやがる。 あんなのは、花火じゃねえ。まん丸な花を咲かせてこその花火ってもんよ。菊に始まり菊に終わるつってな。
今日も、ウチの若い衆が、変形花火をやりてえつって直談判に来やがった。 てやんでえ、花火をなめるんじゃねえ、って怒鳴りつけてやったら、 「おやっさんが俺をフューチャリングしてくれれば、すっげえ花火をリミックスしてみせる」とか、 わけわかんねえことばっかぬかしやがる。 「光と音のページェント」だとか、「色彩の織りなすハーモニーをプロデュース」だとか。 何言いたんだかさっぱりわかんねえんだよっ。
しかも、二言目には、「これからクる」だ? 「今っぽい」だ? 「女性のハートをキャッチ」だ?  「女性にも喜ばれるように、破裂音をかわいい感じにして、シトラス系の香りをつけたいんです」だぁ?  くーっ、情けねえ。小細工ばっかしやがって、先代に会わせる顔がねえ。 花火ってのはよ、あの腹に響くドーンって音があるからいいんじゃねえか。ツンとくる火薬の匂いがいいんじゃねえか。
「それから、これからはやっぱり、キャラクター化っスよ。キティちゃんとか、ハム太郎の花火を作りましょう」
ふざけんじゃねえ、最近の若いもんはてえした苦労もせずに、目立つことばっか考えやがって。 キティちゃんだかベティさんだか知らねえけど、俺は一切、そういう花火は認めてねえんだよっ。
「それから、花火って言い方も変えましょうや。そうだなあ、尺玉の『タマちゃん』なんてどうスかね」
バカヤロウ! そんなふやけた名前で、尺玉があげられっか! こちとらあ、体張ってやってんだよ。 それが花火師の心意気ってもんよ。
そしたら、ヤツは、「おやっさんの考え方は古い」とかなんとかほざきやがる。 ふざけんじゃねえ、てめえは十年早ぇんだよ。尺玉扱えるようになってからぬかせ。
な、なにぃ? 「花火師はすぐ火がつくからなあ」だと? 上等じゃねえか。もう我慢なんねえ。 てめえなんざあ、花火師でも何でもねえ。出てけ、出てけ! 破門だ! 二度とこの泡屋の敷居をまたぐんじゃねえ!  今度もし、俺の前にその寝ぼけた面ぁ見せたら、てめえをタマちゃんにして夜空に打ち上げてやるから、そう思え!。





 2003年8月28日 マーズ・アタック!

火星大接近か。
火星に会うのは、ホント久しぶり。最後に会ったのは、6万年前、わしらがまだ猿に近かった頃じゃよ。
わしより先に、仲間が気づいてな。「アウウウウ、ウホッウホッ」なんて言っとった。 今の言葉に直すと、「何だ? あの光は?」といったところか。
しかし、わしはすっかり魅了されちまった。あの妖しい光の虜になってしまったんじゃ。
仲間には、「アウウウウ、ウホッウホッ」なんてはやしたてられたもんじゃ。 ああ、「お前、あいつにホの字だな」っつう意味だがな。
ただ、わしは若かった。臆病だったんだろう。結局、見てるだけで、なんもできんかった。
やがて、火星が離れていっても、自分に言い聞かせるばかり。所詮、住む世界が違うんだ、手の届かない存在だ、とな。
ところが、また、火星が帰ってきたんじゃ。6万年ぶりに見た火星は、ちーとも変わっとらん。昔のままの美しさじゃ。
そうしたら、急にあの頃のことを思い出してなあ。
もう、はやしたてる仲間もいなくなってしもうた。わしひとりじゃ。ひとりでじーっと考えた。
よし、あのとき言えなかった言葉を、火星に伝えよう。自分の気持ちを、ちゃんと伝えよう。そう、思ったんじゃ。
「ずーっとあなたのことを待ってました。ひと目見たときから、好きだったんです」
なあに、ダメでもともと。当たって砕けろじゃ。
それに、たとえ今回、いい返事がもらえなかったとしても、また200年ばかし待てば、会えるしな。





 2003年12月24日 サンタ狩り

どうした? 眠れないのかい?
じゃあ、お前にお話を聞かせてやろう。私が子供の頃の話だ。

あの頃は、この辺りにも森がいっぱい残っていて、
野生のサンタがあちこちに棲息してたんだよ。
そう、赤い毛皮、白いヒゲの、あの大柄な獣のことだ。
私が子供の頃は、毎年、12月24日の夜に、サンタ狩りに出かけたもんだ。
そう、今日みたいにしんしん冷える夜に、雪を踏みしめて森へと出掛けるんだ。
もちろん、あの大きな袋の中のオモチャが目当てさ。
森の中で赤く光ってるトナカイの鼻を目指して進んでいくと、
あらかじめ森に仕掛けておいた靴下に、サンタが何かを詰めている。
その後ろからそっと近づいていって、猟銃で仕留めるわけだ。
ターーーンと、森にこだまする銃の音を、今でも覚えているよ。
ただ、気をつけなきゃならないのが、サンタモドキのやつだ。
一見サンタそっくりに見えるけど、近づいてみると全然違う。
うっかり撃ったりなんかしたら、大変だ。
え、何で大変かって?
そうだなあ、それは、サンタっていうより、むしろ誰かの父さんに似てるんだよ。

さ、そろそろ寝る時間だ。電気を消すぞ。
メリー・クリスマス。
パパにおやすみのキスをしておくれ。





 

↓ここから2006年です





 2006年4月1日 サクラモドキ

あ、それ、あんまり見つめすぎないほうがいいぜ。何故って? あれは、桜じゃないからさ。おい、ホントに知らないのか? じゃあ覚えておいたほうがいい。あれは、最近日本のあちこちで噂になっている、「サクラモドキ」だよ。こうやって見ていると、確かに満開の桜に見えるだろ。でも、あれは、花じゃない。虫だよ、虫。桜の花びらを食い尽くして、枝にああやってじーっとしているんだ。あのピンクの部分は羽根で、緑の部分は体さ。いや、そんな風にじーっと見ても、桜と区別はつかないぜ。ほら、そっくりだろ、桜と。見分けるときは、横目でチラっと眺めるんだ。さりげなくだぞ。さりげなくサッと見てみな。な、どうだ? 虫の目玉が、こっそりこちらをうかがってるのがわかるだろ。あいつらは、人間の体から放出される臭いが好きなのさ。だから、こうやって桜のふりをして、人間を呼び寄せるんだよ。で、見られてるとわかると、いよいよ美しく華やかに色づき始めるんだ。そうすると、ますます人間たちは引き寄せられていく。中には、頭の中がピンクの桜でいっぱいになって、そのあまりの美しさに目を離せなくなるヤツも出てくる。ほら、あの木の根元に座って呆けたような顔で梢を見上げているじいさんがいるだろ。あのじいさんは、もう3日もああしてる。とろんとした目で、よだれたらして。ああなったらおしまいだ。家族が連れ戻しに来ても、その場を動こうとしない。きっと死ぬまで、ああしてるよ。え? 散っちまえばそれで終わりじゃないかって? だから言っただろ、あれは花じゃなくて虫なんだよ。わかんねえかな? 虫ってことは、散らない、のさ。あいつらが飽きてどこかへ飛んでいっちまうまで、ああして人間たちを招き続けるんだよ。…なあ、聞いてるのか? おい。おいってば。だから、そんなに見つめたらやばいって。おいっ。





 2006年10月8日 不安な日々

某月某日
どうやら今日から、地下鉄の駅名がすべてシャッフルされ入れ替わったらしい。 みんな当たり前のように電車に乗っているところを見ると、知らなかったのは俺だけなのかも。 路線図を眺めてみるけど、カラフルな線がちらちらしてよくわからない。 この電車は、いったいどこへ向かっているんだ? 俺はどこへ行こうとしているんだ? そもそも行きたいところなんかあったのか?  不安でいつまでたっても電車を降りられない。

某月某日
ここ数日、偏頭痛がする。しかし、日によって痛む場所が微妙に違うんだよ。 最初は、右のこめかみが痛かったのだが、その次の日は右目の奥、そして左目の奥…。この偏頭痛は移動している。 これを、「渡り頭痛」と言うそうだ。明日には、たぶん左のこめかみに達するだろう。 早く左端まで行って、通り過ぎちゃって欲しい。でも、ホントにそれで頭痛が治るのかな? でも、ひょっとすると、後頭部を回ってまた右に戻ってくるかもしれない。不安で、頭がズキズキする。

某月某日
土砂降り。近所の小学校の前を通ったら、大量の子供用長靴が散らばっている。 雨に流されてきたようだが、子供たちがどこにいるかはわからない。

某月某日
ギャラリーに入ったら、すべての額が傾いていた。そのせいか、まっすぐ歩けない。

某月某日
目の前を歩いていた男が、いきなりおそろいのジャンパーを着た男たちに捕まった。どうも路上喫煙をしていたようだ。 男は必死で抵抗するも、腕を掴まれて、「○○自警団」と書かれたバンに乗せられてしまった。 道行く人たちの「やましいことがあるから抵抗するんだよ」「煙草吸ってたんじゃ、しょうがないね」という声が聞こえる。 俺は、ポケットの中の煙草に気づかれやしないかと不安になり、慌ててその場を立ち去った。

某月某日
携帯電話にメールが届く。「先に謝っておくね」と書いてあるが、アドレスに見覚えがない。

某月某日
公園にある、コンクリートで作られた動物の遊具。ラクダ、ゾウ、リスなどに混じって、見たこともない動物がいた。 足は8本。全身にイボ状の突起がいくつもあって、そのくせ顔だけがつるんとしている。 子供たちは、特に気にせず遊んでいるが、あの動物が何なのか、気になって仕方がない。 ポピュラーな動物なのかもしれないが、その動物が動くところを想像すると、何だか不安な気分になる。

某月某日
一日に二度、道を訊かれる。まったく違う場所で訊かれたのだが、相手は同じ人物だったような気がしてならない。

某月某日
ようやく新しい駅名にも慣れてきたと思ってたら、また駅名がシャッフルされた。




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