短歌
2009



 冬の友人

スペースエイジバチュラーパッドミュージック または密室殺人事件

(林檎だろうか)背にめりこんだ果実からしんと冷えゆくプラハのザムザ

図書館に真冬のひかりページ繰る人それぞれにてくらがりあり

真っ昼間湯船に浸かる居残りの左平治の咳、放屁のあぶく

ホットチョコレート置かれる午後のカフェ ブラウン神父の行方は知らず

Twilight 街の人影消えてゆきつまみあげれば絵葉書となる

この冬をどう越すのだろう車窓から見えるトカゲのおっさんに雨

地下鉄を出て受信するメールにはリプリーという名前の男

お前さんついにしゃべっちまったのね長い手紙のような雪の夜

屋根裏の散歩者として覗き込む匿名掲示板のあかりよ

木枯らしに軋む天窓ぬばたまのブラックジャック肺腑を開く

凍てついた銀河のにおい閉じ込めて活版印刷工場閉鎖

あの冬の空へショールは流されて鋼鉄男ザンパノが泣く

電源の赤いランプに囲まれてひとりで死んでいくかもしれない

2009.2




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