死亡事例から子どもの虐待死の予防を考える

反町吉秀(京都府立医科大学 法医学教室)


   1 はじめに

  @死んでしまう前に子どもを何とか救出できなかったのか?
  A子どもを死なせた虐待者は、どうやって立ち直っていけるのか?
    平成9年11月の小児保健学会シンポジウム「被虐待児の早期発見と初期対応」

   2 京都府における1987年−1996年の10年間の保護者の加害行為による子どもの死亡例の統計

  注)「子どもの虐待」という言葉とChild Abuse(子どもの濫用)という言葉
     好発年齢と死因から見えてくる2つのこと
      嬰児・0歳児がもっとも多く、ついで3歳児が多い。
      死因は、鼻口閉塞、頭部外傷、頸部圧迫…の順で多い。
      嬰児・0歳児は鼻口閉塞での死亡事例が多く、3歳児では、頭部外傷が多い
      neglectの事例は、この統計から除かれてしまっているかもしれない。
      cf. 餓死させてしまった事例のこと

   3 実際の死亡例の紹介

      スライドで紹介
       ・加害行為が繰り返された2例
       ・Neglectの例
       ・兄弟姉妹による加害例

   4 Injury Prevention and control(損傷・傷害の予防とそのコントロール)について

      日本では学会的にもあまり認識されていない領域である。
       ・意図せざる損傷 (unintentional injury)
       ・意図された損傷 (intentional injury = violence)
       ・不慮の事故と殺人事件(日本)
      これらは予防対象にすべきである。
      そして、これらは個人の行為の結果ではなく、
      環境もしくはシステムの問題としてとらえ、計量する。

   5 Injury Preventionの視点から、虐待死事例について考える

 虐待のサインに気づいた人が、手遅れにならないように、通報できるシステム体制の確立が急務
 通報先はどこが適切か?

   6 乳児の死亡例が多い

      育児不安やノイローゼに対する対策の重要性

   7 年長児の死因は、頭部外傷や腹部外傷などが多い。

 たいてい、致命傷となった新しい傷の他に古い傷がある。
 死亡前に、医師や看護婦、保母その他の人たちが傷に気付いていることが少なくない。
      → 気付いた時点で対応していれば、救命できた可能性がある。
 気付いた人が、迷わずに通報し、対応できるマニュアルや体制の確立が急務

   8 暴力の疑いのある時、直ちに通報できる受け皿の必要性

      ・あまりにも頻繁に外傷がみつかる。
      ・転倒や転落などでできたと考えるには不自然な外傷がある。
      ・親の説明と合わない外傷(皮下出血、表皮剥脱、熱傷等々)がある。
      → 至急の通報が求められる。
        なぜなら、死亡例は暴力が繰り返された結果であることが多いから
      ・外傷のすべてを故意か否かというカテゴリーで明確に分類するのは困難
      → したがって、虐待の可能性を疑った個人が、子どもの外傷が、
        @ 故意によるか否か、
        A 故意としても「しつけ」の範囲におさまっているかどうか、
       を一人で判断し、「故意でかつ『しつけ』の範囲を逸脱している」と判断してから
       初めて通報しようと考えることは、やめた方がよい! 手遅れを招きかねない!
      → 虐待の疑いを抱いた人が、一人で判断し、決定を下すという責任を
        背負い込まないでよいような体制が必要。
      ・小児虐待が疑われながら初回の通報では、はっきりしなかった場合は、経過観察が必要。
       ともかく、少しでも早く監視下に置き、経過観察を通じて虐待を明らかにしていく。

         参考文献:ウィルソン他著、今井博之訳『死ななくてもよい子どもたち
                −小児外傷防止ガイドライン』メディカ出版、1998年

活動報告のページに戻る

京都こどもの虐待防止研究会第2回総会のページに戻る