第4号

第2回総会報告

 会の名称が<京都こどもの虐待防止研究会>と改まった、2月28日の第2回総会での記念講演の要約が出来ました。

死亡事例から子どもの虐待死の予防を考える

反町吉秀(京都府立医科大学 法医学教室)

 1 はじめに
 @死んでしまう前に子どもを何とか救出できなかったか?
 A子どもを死なせた虐待者は、どうやって立ち直っていけるのか?
   昨年11月の小児保健学会シンポジウム「被虐待児の早期発見と初期対応」

 2 京都府における1987年−1996年の10年間の保護者の加害行為による子どもの死亡例の統計
      注)「子どもの虐待」という言葉と Child Abuse(子どもの濫用)という言葉
 好発年齢と死因から見えてくる2つのこと…
 嬰児・0歳児がもっとも多く、ついで3歳児が多い。死因は、鼻口閉塞、頭部外傷、頸部圧迫…の順で多い。嬰児・0歳児は鼻口閉塞での死亡事例が多く、3歳児では、頭部外傷が多い。Neglect の事例は、この統計から除かれてしまっているかもしれない。 cf. 餓死させてしまった事例のこと

 3 実際の死亡例の紹介 〜スライドで紹介〜
 加害行為が繰り返された2例/Neglectの例/兄弟姉妹による加害例

 4 Injury Prevention and control(損傷・傷害の予防とそのコントロール)について  日本では学会的にもあまり意識されていない領域である。
   ・意図せざる損傷 (unintentional injury)
   ・意図された損傷 (intentional injury = violence)
   ・不慮の事故と殺人事件(日本)
 これらは予防すべきである。そして、これらは個人の行為の結果ではなく、環境もしくはシステムの問題としてとらえ、計量する。

 5 Injury Prevention and control の視点から、虐待死事例について考える
 虐待のサインに気づいた人が、手遅れにならないように、通報できるシステム体制の確立が急務
 通報先はどこが適切か?

 6 乳児の死亡例が多い
 育児不安やノイローゼに対する対策の重要性

 7 年長児の死因は、頭部外傷や腹部外傷などが多い
 たいてい、致命傷となった新しい傷の他に古い傷がある。
 死亡前に、医師や看護婦、保母その他の人たちが傷に気付いていることが少なくない。 → 気付いた時点で対応していれば、救命できた可能性がある。
 気付いた人が、迷わずに通報し、対応できるマニュアルや体制の確立が急務。

 8 暴力の疑いのある時直ちに通報できる受け皿の必要性
   ・あまりにも頻繁に外傷がみつかる。
   ・転倒や転落などでできたと考えるには不自然な外傷がある。
   ・親の説明と合わない外傷(皮下出血、表皮剥脱、熱傷等)がある。
    → 至急の通報が求められる。なぜなら、死亡例は暴力が繰り返された結果であることが多いから。
   ・外傷のすべてを故意か否かというガテゴリーで明確に分類するのは困難
    → したがって、虐待の可能性を疑った個人が、子どもの外傷が、@故意によるか否か、A故意としても
      「しつけ」の範囲におさまっているかどうか、を一人で判断し、「故意でかつ『しつけ』の範囲を逸脱している」
      と判断してから初めて通報しようと考えることは、やめた方がよい! 手遅れを招きかねない!
    → 虐待の疑いを抱いた人が、一人で判断し、決定を下すという責任を背 負い込まないでよいような体制が必要。
   ・小児虐待が疑われながら初回の通報では、はっきりしなかった場合は、経過観察が必要。
    ともかく、少しでも早く監視下に置き、経過観察を通じて虐待を明らかにしていく。

 参考文献:ウィルソン他著、今井博之訳『死ななくても良い子どもたち −小児外傷防止ガイドライン』メディカ出版


法律家から見た子どもの虐待

石田文三(弁護士)

虐待に関わりはじめた頃のこと

 子どもに関する新しい問題=虐待ということで動き始めたのがはじまりであった。子育て途上でいらいらすることがあるというのは、自分の子育ての場合を考えても分かることである。
 養護施設等の現場をまわって勉強したが、そこでわからないことが出てきた。施設の方に「虐待で入所したケースはありますか」と尋ねると、「被虐待ケースはない」との答えだった。ある子の場合、施設入所の理由は「過食・盗み食い」だったが、その子の記録をたどると、過去に食べさせてもらっていない、縛られていた、殴られていた…といった事実が分かった。この事例は、<虐待ケース>と考えるのが妥当である。このように調べると、全入所児童の60パーセントは虐待であると思われた。
 このような体験を経て、弁護士会として虐待シンポジウムを取り組むに至った。

ある事例から考えはじめて…

 医師から知り合いの保健婦さんに、「診察した子どもが不自然な骨折をしている」との相談があった。2歳の子が大腿骨骨折で入院している。保護者は「転んで折れた」と言うが、それで大腿骨が骨折したとはどうしても思えない。こういう場合、どうすべきか。

親に対してできること

 @ 医師として
 なぜこんなケガが生じたのか、親に尋ねることができる。さりげなく尋ねることができるだろう。この段階では周辺状況を集めることになる。この結果親から返される話が、はっきりしなかったり、ウソであったりしたら、虐待の可能性が大きくなる。
 A 保健婦として
 何気なく家庭訪問できる。そして「お子さんの状況はどうですか」と尋ねることができる。心配事を熱心に指導するあまり、親を心理的に追いつめては何もならない。そしていよいよ虐待の疑いがもたれたのなら、その上で児童相談所へ通告することになる。現行の機関では、虐待に対応できるのは児相であるから。

児童相談所への通告義務(児童福祉法第25条)

 通告は誰でもできる。医師でも保健婦でも、あるいは近隣の人でもできる。法律には、「(保護すべき児童を発見した人は)、通告しなければならない」と書いてある。
 守秘義務との関係で、通告できるのか…という問題があるが、児相へ通告するという限りでは守秘義務解除と考えるべきであろう。そのことを平成4年の大阪弁護士会が行ったシンポジウムでふれたが、昨年の厚生省の通知(平成9年6月20日付け)で意を強くしている。
 通告したが、その内容が間違っていたらどうなるのかという質問がよくあるが、発見段階で通告者がそのすべてを見ることがそもそも不可能であり、しかも25条通告せよという規定があるのだから、責任はないと考える。これは弁護士たちで議論した事柄である。日弁連は、今年8月頃に、虐待マニュアルを完成させる予定である。

児童相談所のできること

 家庭訪問/親への指導/一時保護/児童福祉法第28条等の申立
 児童相談所では、通常まず周辺の情報を集めることになる。その上で、家庭訪問するなりして、親から直接話を聞くことになる。そこから指導や対応が始まる。
 その後の児相の対応は、児童福祉法に定められている。一時保護、施設入所、親が同意しない場合の司法手続きなどがある。一時保護などは、親の同意がなくても実施できると法律は決めており、オウム真理教事件における児相のとった子どもの確保の手法も一時保護という事になる。見方によれば危ないし、問題があると弁護士は考えるのだが、児童相談所に与えられた権限は、相当ハードなものである。

家庭裁判所での手続きの流れ

 申立/調査/審尋/決定
 家庭裁判所での処理の流れは上のとおりである。例えば親の同意なしに子どもを施設に措置する申立(児童福祉法第28条)の場合、決定に至るまでには時間がかかる。通常でも2〜3ヶ月はかかる。そのような場合は、親権代行を認めて下さいという<仮の訴え>をする。仮の決定の申立の場合は、裁判所は早く動いてくれる。1週間ぐらいで認めてくれる。
 そして仮の訴えが認められれば、子どもを親権代行者の決定で別の病院に移して、治療と保護を継続することになる。親が最初に運んだ病院だと、その後にトラブルが発生するかも知れないからである。
 児相にはこのような役割を遂行する機能があるが、しかし児相は子どもや家族に身近なところではない。だから、地域の情報が必要になる。

おわりに

 虐待は防止されなければならないし、その再発を未然に防ぎ、子どもを死なせてはなにもならない。しかし、一方で子どもと親を切り離すのは、虐待という事であっても、短い期間であってほしいと願っている。法廷で、最後に「私は決して、子どもが憎くてやったのではないんです。それだけは信じて下さい」と述べた母親のことが忘れられない。


京都子どものネットワーク連絡会議

 京都市では、「京都市児童育成計画」に基づき、行政と市民とが一体となって、全市的観点から、子どもの人権擁護と健全育成・子育て支援を総合的に推進するため、子どもと家庭に関わる関係行政機関、民間団体等で構成する「京都子どもネットワーク連絡会議」を今年の2月に発足させた。

連絡会議は、@子どもと人権を大切にする部会、A子どもが伸び伸び育つ環境づくり部会、B子育て家庭への社会的支援部会の3部会から成り、それぞれ課題を設けて取り組むこととなった。

 第1部会では、「児童虐待と子どもの人権・ネットワークの構築」をテーマに、@虐待防止ネットワークモデル事業として<西京地域児童問題懇話会>と連携し、地域における子どものネットワークの構築をはかる、A市民向け「虐待防止パンフレット」を作成することを目標に取り組みを進めている。なお、西京地域児童問題懇話会は平成5年からスタートし、さる7月30日には第13回目の懇話会が洛西総合庁舎で開催された。

 平成11年2月13日には、連絡会議のシンボル事業として、児童虐待に対する社会的支援のあり方をテーマに、シンポジウムが計画されている。


日本子どもの虐待防止研究会第4回学術集会 −和歌山大会− 速 報

 9月18日(金)〜19日(土)、和歌山県民文化会館で日本子どもの虐待防止研究会第4回学術会議が開催されました。全国各地から 1,000人以上の参加があり、和歌山県の関係者たちの奮闘ぶりが光っていました。

 京都からは、ランチョンセミナーの座長として澤田淳教授(府立医大)、領域研究の発表者・話題提供者として川崎二三彦氏(府京都児相)、柴田長生氏(府宇治児相)の参加があり、最後のシンポジウムでは濱頭直子支所長(西京保健所洛西支所)が、「地域ネットワークづくりと保健所の役割」というテーマで発表されました。

 次に、独断的偏見で当日の様子を速報します。大阪市児相の津崎副所長は、虐待へ対応する際の態度として、「親子関係の視点(大人の視点)が強調されると、<虐待>という視点はくもる。子どもの視点から対応していかないと、子どもの権利は守れない。そのためにやるときにはやる」という毅然とした態度声明をされ、いつもながら感服です。

 海外からも数名の講師が来られ、ドイツの Munster大学のTilman H.Furniss氏が「性的虐待を受けた子どもへのインタビューにおける問題点」というテーマで講演されました。インタビューにおける具体的なガイドラインが呈示され、またインタビューに際しては、話された具体的な内容 (content)以上に、背景や人間関係を含む全体的な文脈 (context)を重視しなければいけないと指摘されました。

 一般演題では、虐待防止研究会員に対する警察との連携の有無に関するアンケート調査結果の発表が印象に残りました。

 民間グループのすごい活動も報告され、名古屋のCAPNAでは、35名の弁護士を擁しながら、電話相談・危機介入・調査研究活動・社会啓発をされているとのことで、まさに圧倒されそうな活動ぶりです(祖父江文宏代表)。

 来年は栃木県で開催。そして名古屋、神戸と続きます。


      平成10年度南部例会

    日  時 平成10年9月26日(土) PM.1:30 - 4:00
    場  所 京都市健康増進センター ヘルスピアホール
         京都市南区西九条南田町1−2 Tel 075-311-5311
    講  師 野村 知二 氏(京都市児童相談所)
         佐藤  純 氏(京都府精神保健福祉総合センター)

      平成10年度北部例会

    日  時 平成10年10月17日(土) PM.1:30 - 4:00
    場  所 京都府立中丹勤労者福祉会館 4階 大会議室
         福知山市昭和町105 Tel 0773-23-2216
    講  師 千葉 圭子 氏(京都府宇治保健所)
         川崎二三彦 氏(京都府京都児童相談所)

           参加費は、南北共に500円です。

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