第5号

速報!! 児童問題シンポジウム

追いつめられた親子たち 〜地域における児童虐待防止ネットワークづくりに向けて〜

 平成11年2月13日(土)、京都会館第二ホールで、京都子どもネットワーク連絡会議(事務局:京都市児童相談所)主催のシンポジウム、「追いつめられた親子たち」が開かれました。
 京都子どもネットワーク連絡会議は、京都市が主催する公的なネットワークで、当日は福祉・保健・教育等の関係者など、総勢で約400名が集いました。
 西尾博氏(京都市児童相談所長)、濱頭直子氏(西京区洛西支所健康づくり推進室副室長)、藤井正司氏(京都市立山科中学校教頭)、村上文人氏(児童養護施設積慶園アドボケーター)、安保千秋氏(京都弁護士会)の5氏によるリレー報告の後、児童虐待防止アピールが採択されました。

児童虐待防止アピール

追いつめられた親子たちのSOSに手をさしのべよう
〜子どもの虐待防止ネットワークづくりへ向けてのアピール〜

 子どもは親の深い愛情と、社会の支援のもとで、伸び伸びと安心して成長する権利を持っています。ところが、虐待され命さえ失う事件が、しばしば新聞やテレビで報道されています。躾と称して、厳しい暴力行為を繰り返される子どもや、親の都合で衣食住さえ不十分なまま放任されている子どもたちも増加しています。

 物質的に豊かになったと言われるわが国で、なぜ、このような悲劇が起きるのでしょう。現代の社会では、親自身も複雑な社会構造や人間関係から大きなストレスを受け、そのストレスを子どもに向けていることも多いのです。

 子どもの虐待は、そうした親子からのSOSではないでしょうか。一方的に親を責めても、解決の道は開けません。

 本日のシンポジウムに参加した私たちは、こうした親や子どもたちを救うために、何ができるのかを真剣に考え、事態が深刻になる前に早期に発見し、適切な援助の手をさしのべることが大切であると考えます。

 子どものいのちと人権を守り、家族の幸せを取り戻せるよう援助するために、子どもを取りまく地域の人々や関係機関が手をつなぎ、早期発見・早期援助の取組を進めようではありませんか。

平成11年2月13日  京都子どもネットワーク連絡会議 児童問題シンポジウム


児童福祉法第25条(要保護児童発見者の通告義務)

 保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認める児童を発見した者は、これを福祉事務所又は児童相談所に通告しなければならない。

 当日参加されたある民生児童委員さんに聞きますと、報告の中で、次のようなことが印象に残ったとのことでした。

 厚生省報告では、虐待は倍々ゲームのように増えている。平成2年を基準にすると、平成7年には4倍に、平成9年 は5倍に増えた。
 保護怠慢の中に、子どもに労働を強いている家庭もある。事例を聞くと心が痛む。
 養護施設積慶園が開設している電話相談には、平均で毎月351件の相談があり、その中の21%が虐待相談である(不登校相談が25%)。話を聞いているうちはいいのだが、住所・氏名を尋ねると、そこで電話が切られる。
 関係機関のネットワークがとにかく大切だ。
 隣の家から聞こえてくる悲鳴・職場で聞く報告…。変だと思ったらまず連絡すること。家に帰りたがらない子どももいる。
 養育者を責めても、解決にはならない。

 紙面の制約から、すべてをお伝えすることができません。京都市の関係機関の方や、参加された方が資料をお持ちです。是非、照会してみましょう。 (京都市児童相談所: TEL. 075 - 801 - 2929)


平成10年度南北例会報告

 昨年の秋に、恒例となりつつある<例会>を南北二カ所で開催しました。
 平成10年9月26日(土)には、京都市南区のヘルスピアホールで、南部例会を開催。54名の関係者が集いました。
 平成10年10月17日(土)には、福知山市の京都府立中丹勤労者福祉会館で、北部例会を開催。当日は台風が接近するという荒天にもかかわらず、28名の関係者が集いました。
 今回は、第一線で活躍中の方々が、ミニ講演をリレーでつなぐという企画でした。講師各氏の講演の中から、印象に残った部分のみに焦点づけて、ごく簡単に紹介します。

南部例会から

「社会問題」としての児童虐待 − 社会構築主義からのアプローチ −

野村 知二(京都市児童相談所 児童福祉司)

 児童虐待を、個人の問題の集積ではなく、社会問題としてとらえ、社会構築主義(Social Constructionism)の立場から考察・報告する。

 アメリカの児童虐待の歴史的経過に目を向けるとき、1974に制定された、罰則規定を持つ「児童虐待防止対策法」のことはあまりに有名であるが、通報の件数の多さと、その実証の出来なさの多さにも同時に着目する必要がある。1985年には実証されない通報が65%を占めた。1994年には、314万人の通報があり、これは子ども1000人に47人の割合に当たる。

 日本ではあまり知られていない事件を紹介する。この事件は「ジョーダンでの集団性的虐待事件」と言い、集団で子どもたちを性的に虐待した容疑で、60人の大人に嫌疑がかけられたが、1人が有罪になっただけで告訴取り下げになったというものである。

 アメリカの伝統として、カウンセリングへの過度の期待があるが、個人に焦点づけるあまり、逆に貧困(階層問題)とその文化的再生産といった社会的な問題を看破できない弱さを併せ持つ結果になる。医療・心理モデルのみの「一点突破全面展開」ではなく、それとは異なった立場からの分析(メタ分析)が必要で、そのためには、客観的で、評価可能なデータを求める手法の究明が強く望まれる。


「児童虐待」援助について思いつくままに考えたこと −「児童虐待」援助の経験のない者からの勝手な意見−

佐藤  純(京都府立精神保健福祉総合センター)

 思春期・青年期の相談の中では、虐待問題をメインテーマに扱うことはほとんどない。しかし、彼らの生育歴を振り返った時、被虐待体験を聞くことが少なくない。そのことを通して考えたことを伝えてみたい。

 「児童虐待」援助への素朴な疑問と提案をあえて述べてみよう。まず、「児童虐待」の援助の目標は何なのだろうか。親子に対する継続的支援が必要なことはそうなのだが、どんな枠組みで、どの程度、どこまで援助することが必要なのだろうか。虐待という事象が消失しても、それで<虐待問題>が終息したわけではない。

 介入の対象はまずは親から…と思うのだが、成人の精神保健医療福祉専門職の参画はなぜか少ない。大人をうまく扱えたのなら、母子・児童臨床におけるアプローチの視点を「病理の重い親」を前提としたものに組み替えていける可能性が見えてくる。いずれにせよ、丁寧で繊細なアプローチをしていこうとするのなら、時間がかかるのだろう。

 実際の援助を行う際に、幾つかの視点が想起される。「告発者」と「援助者」は両立するのだろうか? そのことをうまく扱えるための分業が難しい。「親育て」の視点は、「親教え」の強要ではない。

 「親告発型AC論」「世代間伝播論」に援助者が侵されすぎてはいないだろうか? 悪いイメージを増殖してしまったり、<良き親像>の押しつけになり、当事者が自分の力で変化していける可能性を逆に阻害してしまってはいないだろうか。

 「自己申告型の虐待相談」と「他者通報型の虐待相談」の間に差異はないのだろうか。精神保健医療福祉領域では、自ら訪れる<自己申告>患者が多い。これらの間で差異があるのであれば、援助・介入法やその予後もまた、ずいぶん異なるのではないかと予測される。虐待を扱う専門家は、このことをもっと意識してもよいのではないか。


北部例会から

「児童虐待」 −保健所の取り組み経過と今思うこと

千葉 圭子(京都府宇治保健所 保健婦)

 近年、少子化・核家族化等の急激な社会環境の変化のもと、育児ストレス、育児不安の増大に伴い、子どもの虐待が増加している。全国の児童相談所によせられた児童虐待の件数は平成8年度4,201件で、6年間に4倍に急増している。京都府での児童虐待件数は28件であり、その内13件が宇治児童相談所管内であった。

 虐待は子どもの生命・身体に危害を及ぼし、心に傷を残すだけでなく、次世代に対する虐待の誘因になるとも言われており、緊急な対応とともに早期発見や早期対応が求められている。乳幼児虐待のハイリスク要因として未熟児や発達の遅れがあげられているが、保健所では未熟児訪問、低体重児健診、発達クリニックを実施しており、早期発見や育児支援の立場で大きな役割を担うことができる。

 相手(親)をどれだけ受容できるか、理解できるか、ここがポイントである。ケースに巻き込まれた時には、「自分の物差しで見ない」ことも大切になってくる。

 子ども中心に考えることと、母親支援が両立できるだろうか。いずれかにウエイトがかかるのはよくあることだ。それを回避するためにも、多職種で役割分担して関わっていくことが必要となる。

 保健婦がとる立場は、子どもの保護?、それとも親支援? 出会った多くの事例から学び、焦らず、個々を大切に。事例を見る目を養い、多様に評価できる力を身につけたい。


「虐待への対応、10年間を振り返る」

川崎 二三彦(京都府京都児童相談所)

 児童相談所の児童福祉司として9年余り活動する中で、明らかに虐待と判断できる事例、あるいは虐待の疑いが極めて濃厚な事例、別の相談の中に親の虐待が浮かんでくる事例など、たくさんの事例への対応を迫られてきた。児相の対応という部分に焦点を当てながら、それらの事例を紹介し、この10年間の対応の変化を振り返ってみたい。

 児相の基本は「相談」であり、虐待事例においてもできる限り「相談という視点」を重視したいと考えてきた。だが、それだけではどうにもならない事例にも遭遇してきた。

(ここで自らが対応した5つの事例を、年代別に紹介)

 家庭裁判所は、第28条などの法の適用について、ずいぶん積極的に検討してくれるようになってきている。また、厚生省は、97年6月に「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」という児童家庭局長通知を出し、「法を積極的に使ってでも、まず子どもを守れ」と指示している。そして翌年の3月には、「児相への通報義務」を関係機関にPRしなさいという通知も送られている。地域での虐待防止への熱意も高まり、新聞はその必要性を強く報道している。

 現行法の中で最善を目指すには、相談ニーズのない人たちに対する支援(すなわち、介入型の支援)を行うには、そのための技術を開発しなければならないだろう。しかし、児相の伝統は、やはり<ケースワーク>である。だから、介入型の支援を適正にすすめるためには、他の相談領域で大事にしている<援助技術>を熟知していることが、虐待相談遂行においてもやはり重要ではないかと考えている。


☆ アンケート調査を行います

 小児科医師、保健婦、保育園・幼稚園を対象にアンケート調査を実施する事になりました。おおよそ次のような内容をお尋ねします。送付対象は1000人を越えそうです。

     アンケート項目
   @ 子どもの虐待に関心がありますか?
   A 最近10年間に、虐待を発見又は疑う症例を経験されたことがありますか?
   B (ありと答えた場合) 症例のアウトライン(虐待の種類・発見時の年齢・その時の状態・家族状況・
     その後の対応、相談、他機関との連携等について)
   C 今後どのような情報が必要であると考えますか。

 (こっそり、アピール)
 ☆ 例会がもう少し充実できればいいですね!!

 「平日の夜、2カ月に1度程度集まって、事例検討や情報交換などができるといいなぁ…」と、ごく一部の間で話題になりかけています。京都府京都児相なら、京都市内で無料の会場が確保できそうです。さて、その結果はいかに…。


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