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「英語をモノにする」とは何か 第1回

2005年5月21日



「英語をモノにする」ために何をしたらいいか、どういう作業、お勉強メ ニューが有効なのか、ということを考えたいと思います。

   英語をモノにする(プロセス、または作業)
             ↓
   英語をモノにした(という状態)

という関係です。そういう意味で言葉を使いますね。

この「英語をモノにした」状態のとらえ方いかんによっては、「英 語をモノにする」ために必要な作業、お勉強メニューがおのずから決まってく ると思うのです。まずい例を先に言いますと、「英語をモノにした状 態とは、英語がペラペラしゃべれる状態である」というとらえ方です。いや、 これ自体は正しい、というか、英会話やってる人の9割がたが同意してくれそ うな想定だと思います。何がまずいのかと言うと、こういう把握の仕方では、 「じゃあ、ペラペラしゃべれるために何をしたらいいか」という問いに、まっ たく答えられないことです。どうでしょう? 「ペラペラしゃべれる」ように なるためには、海外ドラマを見たり、留学したり、英会話スクールに行った り、NHKのラジオ講座を聞いたり、いろいろ方法が考えられますね? でも、 ずいぶん漠然としています。海外ドラマを見つつ、海外で生活しつつ、具体的 にどういう作業をしたらいいか、この答えでもって意識できるでしょうか。ぜ んぜんはっきりしませんよね? あるいは、ほかの答え方としては、ボキャブ ラリーを増やす、文法をきっちり理解する、会話の応答練習をする、などとい うのも考えられます。だいぶん具体的になりましたが、でもこれって、、、な んだか、なんでもあり、という感じですよね。つまり、「ペラペラ」という目 標設定では、そのための手段、学習方法を確定するのに役に立たないのです。

どうしましょう?

「ペラペラ」な人の頭の中はどんな状態?? それは、まだ科学で解明さ れてないことですから厳密な答えは無理ですね? ここでは、質問を矮小化し て、「ペラペラな人の頭にはどういう知識が詰まっているか」を考えることに しましょう。では、、、その人の頭に詰まっているのは、文法ですか? これ は、自信を持って否定できます。to-不定詞の用法、その1、その2、その 3、、、ってですか? ありえないですね。少なくとも、そういう整理された 知識として持ってるということはないでしょう。日本語を例に考えるとよくわ かります。五段活用(書かない、書こう、書きます、書く、書く時、書けば、 書け、プラス音便形の「書いた」)や、上一段活用(起きない、起きます、起 きる、起きる時、起きれば、起きろ)、、、こうやって整理した知識として、 日本語の文法をおぼえていますか。ノー!ぜったい違いますね! でも、頭の なかにあることは確かです。じゃ、どういう形で持っているのでしょう? 必 要に応じすぐ発動できるような「身に付いたルール」として持っているので しょうか? つまり、「書く」を否定形で言いたいとします。このとき、語幹 の「書(か)」をまず取り出してきて、語尾のほうは、頭のなかの文法ルール ブックから五段活用の活用形の1つ「〜かない」を参照して、以上2つを足し て「書・かない」と口に出しているのでしょうか? それってでも、コン ピュータのやり方っぽくないですか? ですよね? 人間はどうなんでしょ う? 「書かない」と最初から固まりでおぼえていて、それを直接、口 元に取り出してくるのではありませんか? かめっはそう思います。 固まりでおぼえている。それが、人間流の、文法の記憶の仕方です。もっと言 えば、もしかりに、間違えて、「書きない」と言いそうになったときでも、五 段活用のルールに照らして修正しているのではありませんよね。「書きない」 なんて、今まで聞いたことがないと思って、聞いたことのある 言い方である「書かない」を探し出してきてるはずです。

さて、答えを続けていきましょう。問題は、「ペラペラな人の頭にはどう いう知識が詰まっているか」でした。単語ですか? そう、単語は間違いなく 入っています。では、どういう形で入っていますか? また日本語のたとえに なりますが、今かめっの目の前にあるパソコン、これは「パソコン」という単 語単体でおぼえています。一方で、「起動する」という単語は、「パソコンを 起動する」、「ソフトを起動する」、「セーフモードで起動する」というふう に、ふつうパソコン関係のことを表すのにしか使いません。たとえ理屈の上で は「起動する」に違いない物でも、「扇風機を起動」したり、「クルマを起 動」したりはしません(笑)。そう、単語のなかには、他の単語と結び付きが 限定されるヤツがあるのです。では、もすこし、話を厳密にしますね。「読 む」という単語は、読めるものには何でも使えます。ときたま、読めないはず の「行間」や「心」が読めたりもするので、例外的な用法も気にはなります が、基本的には、字が書いてあって読めるものには何でも「読む」を使ってい いし、それ以外のものには「読む」は使えません。簡単でいいですね? この 事情は英語のreadでも同じことです。ということで、「読む」やreadは、単語 単体でおぼえておけばいい、気楽な単語ということになります。これに比べ て、「かける」はどうでしょう? 洋服をハンガーにかけたり、料理にソース をかけるように、「かける」の本来の意味で使うこともありますが、一方で、 「電話をかけ」たり、「気にかけ」たり、「誘いをかけ」たり、慣用的な用法 (決まった組み合わせ)で使う場合も、同じくらいたくさんあります。なかに は、「メガネをかける」のように、「かける」の基本義でありながら、どうし て「メガネを着ける」ではいけないのか、説明しがたい用法まであります。国 語学者なら説明できるかもしれませんが、われわれはそうやって、「かける」 のことをおぼえているわけではありませんね? そう、みんなが「メガ ネをかける」と言うから、みんながそう言っているのを小さい時から何度も聞 いてきたから、自分もそう言うのです。

だんだんはっきりしてきました。「英語がペラペラな人の頭にはどういう 知識が詰まっているか」。まず、文法が入っています。でもそれは、文法書の ように整理された知識(五段活用)としてではなく、「書かない」という固ま りで入っているのでした。単語も入っています。そのなかには、「読む」のよ うに単語単体で記憶しているのもあれば、「かける」のように他の単語との組 み合わせで記憶しているとしか考えられないものもあります。では、応用問題 です。今度は英語を例にとりますね。"be right there"(すぐ行く)という言 い回しがあります。これを「ハイ、すぐ行きます。」と文章にするとき、"I' ll be right there."と、"I'm going to be right there."の2通りが考えら れますが、どちらでもオーケーでしょうか? 実は、"I'll be right there." しかダメなのです。それは、正確には、それが慣用だからではなく、文法で説 明がつく理由があるからです。"I'll be〜"なら、誰かに呼ばれてその場で行 くことに決めて「すぐ行きます」と言ったという雰囲気が出るのに対して、" I'm going to〜"だと、呼ばれるまでもなく、「もとから行くつもりだった」 という含意が出てしまい、「すぐ行く」と相いれなくなる、つまり組み合わせ 不可能だからです。ちなみに、"I'm going to be right there."という言い方 も存在しますが、それは、「今から行きます」という意味ではなく、「いつも 君の/彼の/彼女の/みんなのそばにいるよ」とか、面白いイベントがあるな ら「ボクは必ず行くよ」という意味になります。少し話がそれましたが、電話 で呼ばれて「うん、すぐ行くよ」と言う場合に、"I'll be right there."と言 うんだ、という現象は、どう理解したらいいでしょうか。英語をしゃべる外人 さんは、さっきの説明のように、"I'll〜"と"I'm going to〜"の文法ルールを すばやく参照して、正しいほうの"I'll be right there."と言っているので しょうか? だとすると、日本人とはずいぶん脳の構造が違うようですね。わ れわれが「電話をかける」と言いたいときに、「電話を起動」したり、「電話 を鳴ら」すのでなく、「かける」と口をついて出てくるのは、「電話をかけ る」とかたまりで記憶しているからでした。では、外人さんも、呼ばれてハイ と言うときのセリフは、"I'll be right there."と言うモンだと、かたまりで おぼえてる、と考えたほうがすなおではないでしょうか。(注1)

さて、英語がペラペラな人の頭には何が入っているのでしょう? 一言 で。要約して。。。

どうも、「かたまりがたくさん入っている」としか言いようがないみたいですね。けっして、文法が、コンピュータの常駐プログラムのように裏で動いてるわけではなく、英語辞書が丸ごと入っているわけでもなく。しいて言えば、今まで聞いたことのあるフレーズが丸のまま、分解されず、分析されず、入っている。。。

ここまで納得していただけたでしょうか? 以上は仮説です。科学じゃな いです。でも、今は正確なところを見きわめるのが目的じゃなくて、「どう も、それっぽいね」ぐらい賛成してもらえたら、次に進めます。われわれの目 的は、「英語をモノにするには何をしたらいいか」、つまり、お勉強メニュー を確定するために、「英語がペラペラな人=英語をモノにした人の頭の中に は、何が入っているか」を探ることでした。探る、というより、見当を付ける ぐらいしかできませんでしたけどね!

では、まとめを。英語がペラペラな人=英語をモノにした人の頭の 中には、たくさんの英語フレーズが丸ごと入っている、だけです。で は、英語フレーズを丸ごとたくさん叩き込むにはどうしたらいいでしょう。な んだか、おのずから答えが決まっているような気もしますが、それはやっぱり 後からしか言えないことかな? 必ずしも明らかではないと思うので、そのう ち続編を書きたいと思います。ここまで読んでくださって、ありがとうござい ました。

(注1)じっさいには、たんに、"(Be) right there."と か"Right away."とか、他にも言い方がありますが、いずれも、文頭の"I'll be〜"を省略したものです。





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