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『字幕の中に人生を』レポート! (執筆: まりあさん) <前  (かめっ友!)  次>

1位・高山美香さん、2位・黒岩美香さん、3位・戸田奈津子さん・・・かなあ、たぶん。うちの掲示板でこれまで話題にのぼった回数が多い日本人です。1位、2位は「アリー」の関係者だから当然としても(高山さんは日本語版台本担当、つまり翻訳者で、黒岩さんは番組のコーディネーター&「アリー」公式サイトのウェブマスター)、戸田さんの人気には、かめっとしてはやや理解を超えるものがあります。

戸田さん自身の著書によれば、英語の字幕翻訳者のポストは日本に10しかないのだそうで、映画監督や俳優になるよりも“狭き門”です。なので、みなさんのあこがれの職業というわけでもなさそうなのですが・・・。

でも、まりあさんのレポートを読んで得心のいったかめっなのでした。(以下の記事は掲示板からの転載です。オリジナル投稿 No.4620〜4623, 2001年9月30日 00:14)



『字 幕 の 中 に 人 生 を』レポート!
ま り あ 
2001年9月29日  


今日は前にもお知らせしてた、戸田奈津子講演会『字幕の中に人生を』に行ってきました(^^) 戸田さんの映画に対する熱い思い、好きなことを一生懸命やるその輝き、とても素敵でした! その感動を少しでもたくさん伝えられるよう、つたないながらレポートします(^o^)

13時30分会場、14時開演のはずなのに、少し早めに開場15分前に着いたのにかかわらずもうすでに長蛇の列!! みんなの関心の大きさに驚きました。戸田さんは黒の上下(ロングスカート)に鮮やかなピンクのスカーフを巻いて登場しました。大きな拍手と歓声で迎えられた戸田さんは少し照れくさそうに、緊張した感じで話し始めました。

1番最初に出た話題は、やはりニューヨークのテロ事件でした。あのビル近郊はビジネス街であると同時に、少し離れると俳優さんたちの家もたくさんあり、とても心配したそうです。今までに例をみない悲惨なこの事件は、映画界にも影響をすでに及ぼしているそうです(公開が延期になったものも出ていますよね)。戸田さんが言うには、アメリカ映画というのはいつも完全な悪役というのが必要不可欠だそうです。昔はネイティブアメリカン→そしてソ連→現在はテロリストであったけれど、この事件が起こったことによって、テロリストというのはもう使えない。「アメリカは敵役を今必死で探している(!)かもしれませんね、もうこうなるとあと敵は宇宙人しかいない!・・かもしれないですね(笑)」←ロ、ロズウェルだ〜^^;

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そして話題は彼女のデビュー作、『地獄の黙示録』へ。10年間待ち続けてやっときたこの作品、当然想い入れも大きいみたいです。『地獄の黙示録』は今から約20年前の作品で、その当時は今のような特撮技術がほとんどなく、映像は人間の手で造られているそうです(私はこの作品を観てないのでわかりません)。作り物でないその映像の素晴らしさ。今の映画にはない感動があるそう。ベトナム戦争を振り返った映画で、その撮影期間も大幅に伸び、そして莫大な費用を要する作品で、コッポラ監督は多額の借金を背負ってつくりあげたそうです。

『地獄の黙示録』は2時間半の作品だそうですが、未公開部分などを再編集し、お正月に3時間半の長編にリメイク?され登場するそうです。戸田さんいわく「素晴らしい作品になっている」そうです。「長編作品としては今年の夏の『パール・ハーバー』もあるけれど、あんな作品(!)2時間で十分、長ければいいってもんじゃない。けれどこれ(地獄の・・)はほんと素晴らしいです!」と少し毒舌気味に語ってられました(^_-) そして再編集する過程で、戸田さんはこの映画は予言的であることに改めて気づいたそうです。ベトナム戦争でアメリカが戦った相手は、もとはアメリカが作ったベトミンという組織。その組織から派生したベトコンと戦って負けたアメリカ。そして今回のテロ。ただならぬものを感じてやまないとおっしゃられてました。
「科学は日進月歩進化している。それで人間はお利口になりましたか?2000年経とうと人間はちっとも利口になっていない。いつまでたっても進歩しない人間。それが人間。それこそが人間たるものでよいところかもしれません。しかし、もう少しお利口になったほうがいいですよね。人間は何年たとうとその本質はかわらないものかもしれないですね。映画というのは根源的な本質的なものに触れている。昔の作品であろうと本質は変わらない。だから映画は面白い。」
強い意志が感じられる戸田さんの言葉に会場は圧倒された雰囲気になりました。

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ウェイティング(下積み)期間20年、字幕家として20年。1000本以上の作品を手がけた戸田さんですが、字幕の業界、環境も昔とは変わってきているそうです。

今年の夏、もっと言えば去年の暮れからおこっている、日米同時公開。「字幕をやる人間にとっては大きなプレッシャー」と言われてました。大体1つの作品に対し、1週間の時間が与えられるそうです。けれど本当はもっと時間をかけてゆっくりやりたいし、本来映画というものはそうあるべきだけども、そうのんびり出来る状況ではないようです。そして同時に2本や3本の作品を抱えながらすることもざらで、想像以上に大変。

最近の作品は特撮が多く、そして特撮が多い作品は出来上がるまで時間がすごくかかるそうです。かの『タイタニック』は東京映画祭公開3日前に渡され、すごく焦ったそう。戸田さんはキャメロン監督に何度も「早くしないと字幕抜きで公開されますよ、日本人それじゃわからないですよ、いいんですか?」と、優しく?せかしたそうです。キャメロン監督自ら「できたよー」と作品を持ってきてくれたというエピソードには思わず笑ってしまいました(^^)

アメリカの映画会社には字幕に対する認識というものが全然なく、字幕をつくり、そして映像に乗せる作業に2週間は必要だということを誰もわかってくれないそうです。それに加え日米同時公開というダブルパンチ!! 公開直前まで作品がなかなか出来上がらないなんてこともよくあるんですって(・・;) そして公開日に間に合えばよいというものでは決してなく、公開前にはマスコミ試写が必ずあり、それによって映画が宣伝され、世に広がるそうです。夏の『猿の惑星』はとうとうまにあわなかった!みたいですよ(゜-゜)マスコミ試写会日の時点で、編集が終了してなく!ところどころ映像ではなく手で書いたスケッチで{ここにケーキが入ります}とか書いてたみたいです(・o・)

そして今年の話題作『A.I.』。これにはかなりてこづらされたようです。完全秘密主義のもとでつくられたあの映画の徹底振りはすごく、字幕作業をするのもスピルバーグ監督のオフィスで。そしてそのオフィスに入るまでも何度もセキュリティーチェック。ほぼ監禁状態で作業を行ったようです。「そこまでしなくても・・・」と戸田さんも思ったようですが・・(^_^;) でも、それもヒットメーカーの監督のアイデアを盗まれるのを防ぐのに必要なものなんでしょうね。

「ここだけの話、」と戸田さん。「『A.I.』はアメリカではコケてしまったの。」日本では大ヒットとなったけれど・・・。「もしこの作品が同時公開でなければ、日本ではアメリカの情報が入り、このようなヒットにはつながらなかった。この作品が同時公開=ヒットの前例となってしまった。」 なるほどー(・・;)

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会場に入ったときはやや緊張気味だった戸田さんですが、映画の話をつづけてるうちにとても表情が生き生きし、楽しそうでした。ほんとに映画が好きなんだな、と思いました。

あと印象に残ったのが、この言葉です。
「コミュニケーションは心。どんなにすらすら話せても、相手と心が通じ合えないとそんなの無意味。もちろん話せるに越したことはないですが。ですが、たどたどしくても相手に気持ちを伝えたいという強い思いがあれば気持ちは通じるのです。もし通訳になりたいとおもうならば、自分の得意分野を持つことただ漠然とおもっているだけでは通用しません。これだけは人に負けない。そういうものを持たないとだめです。」

戸田さんのお話のあと、質疑応答の時間までありました(^^) いざ私も!・・と思っても、気の利いたことが全然浮かんでこなくって手をあげられませんでした。「娘さんいたんですね!」とか、そんなのしか思い浮かばなかった^^;

話をききに来ている人はやはり映画好きの人が多く、質問も盛り上がりました。
「ブラット・ピットはどんな人ですか? においにたとえるとどんな香り(!)ですか?」
戸田さん「とても繊細でナイーブな人。日本に来てもマスコミに追いかけられるのが恐くて、ずっとホテルにこもってるのよ。そしてサンドイッチにオミオツケ、なんて変なメニュー頼んで、ギターを弾いてるのよ。(笑)・・そんな繊細な彼は、ラベンダーですかね。あまり強くなく、優しい香りのイメージです。」

などなど、終始和やかな雰囲気でした(^^)素敵な人のお話がきけて、今日はとても幸せ気分です。いろいろ大事なことを教えてもらった気がします。つたない文章でながながとかいてどうもすみませんでした(^_^;)




以上、まりあさんのレポートでした! なるほどねえ。このレポートに対する みなさんの反応 も読むと、戸田さんは「憧れの職業」というよりも、「夢をかなえた女性」として人気があるようですね!

以下、ファンの方には“常識”のことかもしれませんが、戸田さんが字幕翻訳家になった経緯を要約すると・・・ただの映画ファンの女の子だった戸田さんは、大学生活の終わりに「字幕翻訳を仕事にできないだろうか」と思い立ちます。けれど、友達にはバカにされるし、有名な字幕翻訳の先生に意を決して送った「弟子にしてください」という手紙には「そう簡単になれるものじゃないから、あきらめなさい」という返事が返ってきます。

結局会社に就職したものの体質があわずに1年半で退社し、ビジネス文書の翻訳やタイプ打ちのアルバイトで生計を立てるように。今でいうフリーターですね。定職につかず、結婚もしないまま30歳ちかくになると戸田さんにはアセリが生まれ、周囲の目もきびしくなります。そこに救いの手が! ずっと連絡を取り続けてきた字幕翻訳家の清水俊二先生の紹介で映画会社のアルバイトにもぐり込めたたのです! これで少なくとも、映画の仕事はできる!

映画会社ではキャンペーンの通訳の仕事がまわってくるようになります。やがて「通訳の戸田さん」として知られるようになったけれど、ホンネは・・・英会話は苦手なの!でも、これを断ったら字幕の仕事は永遠にもらえない!と思い必死に堪えた話(泣けます)。そしてついに運命の出会いが! フィリピンで『地獄の黙示録』(1979年)を撮影中のフランシス・F・コッポラ監督は大の日本びいき。戸田さんは通訳兼ガイドを務めますが、天才肌で気まぐれな監督に振り回され、ヘトヘトに。ところが、『黙示録』の日本での公開が決まった時に会社から字幕担当を命ぜられます。「こんな大作をなぜ私に?」といぶかる戸田さんは、コッポラ監督がひそかに推薦してくれていたことを知らされます。(^▽^)

う〜〜ん、いい話ですね〜。ホンダの創業者、本田宗一郎さんやソニーの盛田昭夫さんに匹敵する立志伝かも。スミマセン、たとえが「プレジデント」してますね(^-^; 現代のロールモデルの一人であることは間違いなさそうです。なお、上のお話は、戸田さんの著書『男と女のスリリング〜映画で覚える恋愛英会話』(集英社文庫)に詳しくのっています。この本は雑誌『ROADSHOW』の連載をまとめたもので、90本の映画の印象的なセリフと俳優さん来日時のエピソードなどを楽しく紹介するエッセイ集です。英会話の勉強になるだけでなく、戸田さんの映画への愛情やスターへのミーハーぶり(笑)が伝わってきてほのぼのしますよ! (続編の『スターと私の英会話』(単行本)も最近発売されましたね)




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