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 きのう読んだ本

231‐240-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
 

2009.5.8
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240 村田喜代子『八つの小鍋』

を、5月7日22時30分、自宅で読了しました(2007年12月10日文春文庫・720円)。

八つの短編を収録。代表作の「鍋の中」を読むと、作品に描かれている人物や場面が、奥行きと動きをなくした、静止画像のように感じられてくる。そのため、読む者の気持ちもまた、同じように動きをなくし、静止させられてしまうような気がする。

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2009.5.5
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239 齋藤孝『1分で大切なことを伝える技術』

を、5月3日12時30分、自宅で読了しました(2009年1月30日PHP新書・756円)。

言葉を通じて頭の中のイメージを交換することが、人間にしかできない、人間ならではの喜びで、その喜びを放棄して相手のイメージに訴えかけないのはもったいないと、著者は書いている。そして、言葉は問題点を論理的にクリアにする、最高の道具だと述べている(63ページ)。このような普遍的な論理に支えられて、「技術」が説かれているため、現実の場面に対しても有益だと思わせる説得力がある。

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2009.4.27
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238 北重人『夏の椿』

を、4月25日21時30分、つくばエクスプレスの車中で読了しました(2008年1月10日文春文庫・690円)。

天明六年の江戸。主人公の周乃介は、甥の定次郎を殺した犯人を探し出すために、江戸の町を歩き続けるが、事件の謎を解くことと江戸の町を歩くことが、同一のことであるかのように描かれている。そして、事件の伏線のように、登場人物それぞれが「母の不在」という生い立ちを抱え込んでいて、それが作品の深いところから聞こえてくる声になっている。甥の定次郎が殺されたのも、遊女の「沙羅」に母を感じ、その「沙羅」を身請けする金のために、米問屋の柏木屋を強請ったことが原因だった。主人公の周乃介も妾の子として、四歳のときに母と別れており、定次郎の事件の謎を追うことは自分の姿を追うことでもあった。柏木屋の兄弟三人も、家族の不在という不幸を強いられていた。作品から、現在の東京の街並みが浮上してくるとすれば、作品の底に「母の不在」という現在の課題が、低音で響いているからではないだろうか。

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2009.4.22
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237 岡野憲一郎『脳科学と心の臨床』

を、4月21日23時20分、自宅で読了しました(2006年11月11日岩崎学術出版社刊・2625円)。

心理療法家を対象に、人の心と脳の仕組みについて解説した本。この本を読んで、心の動きや動かし方が、脳の仕組みとの関連で、実感的に納得できたという気分には到底なれなかった。心と脳の関連について、「脳」に鮮明なイメージが浮かばなかったため、「心」が動かされることもなかったといえる。

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2009.4.8
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236 柳田国男『明治大正史 世相篇(上)』

を、4月4日17時10分、つくばエクスプレスの車中で読了しました(1976年6月30日講談社学術文庫)。

昭和5年の著作。普段、なにげなく目にしたり、生活に用いているものの、起源が明らかにされている。例えば、木綿の衣服について、もともと多湿の日本では麻が一般的だったが、江戸中期に色(染色)の効果を出すために木綿が採り入れられ、そのとき麻の感触を残すために、「縮み」という織り方が行われたと、その起源が明らかにされている。木綿はいまでも普通に使われているが、昔からずっとあったものではなく、日本人の色彩観と染色技術の進歩によって普及したものだということが分かる。そうしたことから、著者は風景でさえ人間の作るもので、夜景の美しさは「老いたる天然に寄贈した、親切なる贈り物」だと述べている。起源を明らかにすることによって、物事が移り変わることの必然性を納得させてくれる。面白い話に満ちた本だ。

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2009.3.30
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235 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』

を、3月29日23時40分、自宅で読了しました(1996年5月25日角川文庫・460円)。

読むたびに印象が変わるのは、いろいろな読み方ができる、多様性を備えた作品だからかもしれない。主人公のジョバンニは、学校が終わった後の仕事で疲れているが、友人のカムパネルラがそのことを、「気の毒」に思っていると敏感に察知する。また、ジョバンニ自身が銀河鉄道の車室で出会った、「鳥捕り」の自信のなさそうな素振りを見て、「気の毒」に思う。ジョバンニは自己の存在が、他者に気を使わせているとすれば、それは宗教的な感性に通じる罪だと考えようとしている(「気の毒」)のではないか。不思議な作品だが、こんど読むときはどんな読み方ができるか楽しみだ。

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2009.3.11
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234 横石知二『生涯現役社会のつくり方』

を、3月10日22時20分、自宅で読了しました(2009年2月23日ソフトバンク新書・767円)。

二人に一人が65歳以上の高齢者だという、徳島県上勝町で、日本料理のつまものとして使われる葉っぱを、ビジネスとして成功させた著者による本。この「葉っぱビジネス」には、人口約2000人の町民のうち、約200人が参加しているという。そして、中心は平均年齢が70歳を超えるおばあちゃんたちで、一人当たりの平均年収は約130万円だと述べている。また上勝町では、65歳以上の人のほとんどが働いていて、老人医療費は徳島県の市町村の中でも最低だという。高齢者が働き続けることのできる「生涯現役社会」について、著者は、「共同作業」より事業主として「一人」でやる方がいいといった、様々な提案を行っているが、興味深く、共鳴できる考えだと思えた。

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2009.3.3
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233 日沼頼夫『ウイルスと人類』

を、3月1日12時10分、自宅で読了しました(2002年8月5日勉誠出版刊・2940円)。

ATLウイルスから、日本人の起源に関する仮説を提示した、『新ウイルス物語』(このページ、二つ下)の著者による本。この本に収められている「仮説・ウイルス人類学」(1997年)で著者は、その後十年の研究成果に触れているが、仮説に変更がないこと、さらに、ATLウイルスにいくつかの型があることが明らかになり、日本へ渡来した人々について、縄文以前と縄文後期、弥生以降の三つの波があったことが示唆されると述べている。『新ウイルス物語』のその後を期待して読むと、物足りなさが残る。

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2009.2.23
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232 フィッツジェラルド『若者はみな悲しい』

を、2月22日11時00分、自宅で読了しました(小川高義訳、2008年12月20日光文社古典新訳文庫・780円)。

「感情がもつれて蜘蛛の巣のようになった」(129ページ)男の姿を描いた「冬の夢」、家の外の「きらびやかな世界」(277ページ)に憧れている若妻の姿を描いた「調停人」ほか、七つの短編を収録。「冬の夢」では、「夢」を見るのも、その「夢」が消えたことを「悲しみ」と感じるのも、男の宿命的な弱さとして描いているが、「調停人」では対照的に、「家の中に明るさとあたたかさ」を与えるようになった妻の、「悲しみ」を超えた「大人の優しさ」を、女の宿命的な強さとして描いているように思える。情緒とは無縁な、作品の透明感がいい。

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2009.2.19
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231 日沼頼夫『新ウイルス物語』

を、2月18日22時40分、自宅で読了しました(1986年1月25日中公新書)。

成人T細胞白血病(ATL)ウイルスの発見者による、「日本人の起源を探る」(サブタイトル)試みの本。ゾクゾクするほど面白かった。ATLウイルスの自然感染のルートが家族内に限定されていること、また、このウイルスに感染しているキャリアの分布が、沖縄・九州など特定の地域に偏在していること、さらに世界全体を見ても、日本とアフリカ大陸にしかキャリアが集中していないことが明らかにされている。そして、そのことから、ATLウイルス・キャリア群の先祖は日本の先住民(古モンゴロイド)で、ノンキャリア群の先祖は縄文末期か弥生時代に渡来した、新モンゴロイドではないかという仮説を立てている。その後の研究成果を知りたい。

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