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 きのう読んだ本

251‐260-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
 

2009.12.24
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260 鈴木孝夫『日本語と外国語』

を、12月22日23時20分、自宅で読了しました(1990年1月22日岩波新書・819円)。

日本語と外国語(英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語)の比較を通して、人間は言葉で世界をどう把握しているかを、言語における認識の仕方の違いとして論じた本。たとえば、日本語とロシア語では、太陽の色は「赤」で月の色は「黄」だが、それ以外の言語では太陽は「黄」で月は「白」だという。またフランス語では、蝶と蛾を言葉では区別しないらしい。そして、この本の半分を占める、「漢字の知られざる働き」(4、5章)では、日本語の固有な性格が解き明かされていて、とても興味深く読んだ。一例をあげると、日本語の専門用語の多くは、日常的な漢字でつくられているので意味の見当がつくが、英語の専門用語はラテン語かギリシャ語に由来しているので意味が分からない。日本語の場合、聴いただけでは理解できないことでも、漢字を見ると理解できるのは、漢字には「音読み」と「訓読み」があるからで、「訓読み」によって、意味を理解することができるためだという。そうだったのかと、納得できる発見がたくさんあった。

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2009.12.14
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259 鈴木英生『新左翼とロスジェネ』

を、12月13日20時20分、自宅で読了しました(2009年4月22日集英社新書・735円)。

著者はこの本で、かつての新左翼を支えた心情を、「自分探し」という切り口から読み解いたと述べているが、そうしたものとして読み解かれているとはどうしても感じられなかった。だから、その「自分探し」を、現在の「貧困」による「自分探し」に結びつけ、社会的な「連帯」の可能性につなげるといった言説に、はっきりとしたイメージが湧くこともなかった。「自分探し」という行為を対象化しない限り、そのことは明らかにならないような気がする。

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2009.11.29
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258 鈴木孝夫『日本語教のすすめ』

を、11月22日11時50分、自宅で読了しました(2009年10月20日新潮新書・777円)。

面白い話に充ちている。日本語は同類が世界のどこにも見つからない孤立言語で、音声(聴覚)に漢字の映像(視覚)が加わって伝達が行われる、世界で唯一のテレビ型言語だという。そして、母語による制約は絶大で、たとえば日本語の場合、身内の呼び方には上下意識が働いているため、相手が自分より目上のときは親族名称(「お父さん」「お姉さん」など)しか使えず、目下のときは親族名称が使えないので、その人の名前や人称代名詞(「あなた」「お前」など)で呼ぶことになる。そうすると、父親を「お父さん」と呼ぶと、そのことで自分を目下と自己規定してしまうため、立場が弱くなって、父親と対立的な議論はしにくくなるという。人間関係や思考方法にも、母語(日本語)による制約があるということは、実感としてもよく分かることのように思えた。

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2009.11.12
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257 埴原和郎編『日本人新起源論』

を、11月10日23時40分、自宅で読了しました(1990年9月10日角川選書)。

「起源」を問うことは「現在」を問うことだから、面白いのだと思う。この本を読んでいると、さまざまなイメージが浮かんできて楽しくなる。埴原和郎「日本人の形成」によれば、日本人は次のような二重構造になっているという。旧石器時代は不明だが、縄文時代は南アジア系の人が土台になっていて、その後弥生時代に、北アジア系の人が日本にやってきて、南アジア系の人とまじり合いながら現在の日本人をつくってきた。そして、この二重構造は現在でも、関東(南アジア系)と関西(北アジア系)の地域性として、引き継がれているという。そのことを、顔立ちや体形の違いによって説明している。また、小山修三「人口から見た日本民族」によれば、旧石器時代のピーク時(30,000年前)に3千人、縄文時代のピーク時(4,000年前)に30万人の日本人がいて、江戸時代の終わりには3千万人になっていたという。

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2009.11.1
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256 吉本隆明(聞き手・森山公夫)『異形の心的現象』(新装増補改訂版)

を、10月31日11時10分、自宅で読了しました(2009年9月25日批評社刊・1890円)。

サブタイトルに「統合失調症と文学の表現世界」とあるように、漱石や太宰の妄想のこと、また精神病理の現在が語られている。今回、新たに加わった対談(2009年7月収録)では、「やはり精神構造の問題が先にあって、あらゆる物質的な現象の根本なのではないか」(245ページ)と述べている。 考えさせる発言だ。また、年をとるといいことなど何もないので、どこかに隠れてしまいたいが、そういう勝手な振る舞いができる場所もない(216ページ)とも語っていて、興味深く読んだ。

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2009.10.25
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255 正高信男『0歳児がことばを獲得するとき』

を、10月23日12時20分、ファミレス・ガストで読了しました(1993年6月25日中公新書・693円)。

赤ちゃんは大人の「声の調子」から、さまざまなメッセージ(叙述、注意喚起、禁止など)を読みとり、また、赤ちゃんも同じように、「声の調子」でさまざまなメッセージを伝えようとしているらしい。そうした記述については面白く読んだが、赤ちゃんが「声の調子」で伝えようとすることと、「言葉」を獲得することとが、どう関係するかは明らかになっていないと感じた。

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2009.10.6
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254 中山兼治『馬券偽造師』

を、10月5日23時45分、自宅で読了しました(2006年10月10日幻冬舎アウトロー文庫・520円)。

馬券偽造で逮捕された著者の手記。10年間で偽造した馬券は1万枚、換金した額は10憶円を超えるという。偽造は馬券に記された開催日の1文字を直すだけだが、1枚直すのに5、6時間はかかるため、1日3枚が限度で、「三十倍のルーペの世界」に毎日、14、5時間も没頭していたという。偽造は「どんな悦楽にも勝る」ことだったが、誰にも言えないことによる「空虚感」と「深い孤独感」を味わい続けるほかなかった。それで、逮捕されたとき、馬券の偽造から解放される安堵の気持ちで、放心状態になったと、書いている。「空虚感」と「孤独感」が、ひしひしと伝わってくる。

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2009.9.29
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253 植島啓司『世界遺産 神々の眠る「熊野」を歩く』

を、9月26日20時30分、山手線の車中で読了しました(2009年4月22日集英社新書ビジュアル版・1260円)。

熊野は「特別な聖地」で、現在の風景を100年前の写真と比較しても、あまり変化がないという。この本を読んでいると、プリミティヴな信仰の跡が見出されるという、樹木と巨石で成り立っている、丹倉神社、神倉神社、神内神社を訪ねてみたくなる。

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2009.9.27
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252 工藤美代子『快楽』

を、9月26日11時50分、山手線の車中で読了しました(2009年2月25日中公文庫・660円)。

サブタイトルに「更年期からの性を生きる」とあるが、著者の周辺にいる人々の、更年期と性にまつわるエピソードが語られている本、という印象しか受けなかった。たとえば、男と女の性の問題が、夫婦という関係の中で、どのような変質を強いられ、またそのことが、更年期という女性の生理的身体の変化と、どうかかわりあうのかといった普遍的な問題には、手が届いていないような気がする。

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2009.9.14
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251 山岸俊男『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』

を、9月13日11時40分、自宅で読了しました(2008年2月29日集英社インターナショナル・1680円)。

日本社会はもともと、自分が関係する相手を「身内」と考えており、そのことが相手を無条件に信頼していいと考える、「安心社会」を形成してきた。そこでは相手となる個人が、信頼できるかどうかを考える必要はなかった。しかし、「安心社会」が崩壊しつつある現在、「よそ者」である相手と、信頼関係を築いていかなければならない、「信頼社会」への転換が迫られている。ところが、日本社会はいまだに、「安心社会」を求めようとしていて、そのことが、現在発生している問題(学校のいじめ、食品偽装など)の原因となっていると、著者は述べている。面白く読んだ。ところで著者は、「安心社会」と「信頼社会」が作り出すモラルを、どちらかの一方しか成立しない、二律背反するものだと考えているようだがそうだろうか。社会が異次元の空間(家族、学校、会社など)で構成されている以上、「身内」の関係が成り立つ空間(家族など)では、現在でも「安心社会」のモラルが、成り立っているのではないかと思える。

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