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 太宰治論を読む - 鶴見俊輔著

2005年3月14日
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25 鶴見俊輔「太宰治とその時代」

         『太宰治研究1/その文学』筑摩書房1978年6月15日所収
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初出は1973年6月。「太宰治は、日韓併合の年にうまれ、日本の敗戦から三年後に死んだ。」と、著者は書き出している。この一行に示されているような、個人の内面がいまよりもずっと、いろんなことで試されたに違いない困難な時代を、太宰はどのように生きていたのだろうか。著者は太宰と時代の関係を、次のように書いている。

「日韓併合から帝国日本の敗北までという現実の歴史は、そのまま太宰の環境となつているのではなくて、この人特有の転形能力をとおして別のものにかえられている。そのかえられかたをたどることが、太宰治とその時代の関係をとらえるかなめになる。」

「特有の転形能力」によって、太宰は時代の見方をどのように変えていたのだろうか。著者はそれを具体的に述べてはいないが、『津軽』『お伽草紙』など戦争中の作品のあり方が、太宰の戦争の見方に拠っていることは間違いないと思える。

さらに、『人間失格』と時代との関係について、こう書いている。

「この作品は、直接には一九三〇年代の彼の麻薬中毒の時代を語りなおしたものだが、間接には、一九四五年以後の占領時代に対して感じた顔むけならぬせつぱづまつた感情がこの作品に表現を求めたものと言える。」

太宰の作品を、太宰の生きた時代の中に置くことで、太宰の作品理解に広がりを与えているような気がする。『人間失格』を書くこととなった、「顔むけならぬせつぱづまつた感情」とは、その時代の何に向けられていたのか、それは問うに値する課題であるように思える。


▲『太宰治研究1/その文学』(筑摩書房1978年6月15日)は絶版ですが、サイト「日本の古本屋」で見つけることができるかもしれません(2005年3月13日現在: 多数あり)。
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▲「太宰治とその時代」は下記の本にも収録されています。

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