太宰治論を読む - 山岸外史著2005年5月16日 この本は太宰と親交のあった著者が、太宰をその死後に回想したものである。 ところで、太宰は『人間失格』の主人公に、こう言わせている。 「ああ、人間は、お互ひ何も相手をわからない、まるつきり間違つて見てゐながら、無二の親友のつもりでゐて、一生、それに気付かず、相手が死ねば、泣いて弔詞なんかを読んでゐるのではないでせうか。 」 太宰から異見や反論が絶対にありえない、太宰の死後に書かれた『人間太宰治』は、この「弔詞」に当たるのではないか。この本に描かれている太宰像は、著者がイメージしていたものに過ぎず、従って、この本は著者が太宰をどう見ていたかを示しているだけだといってもいいかもしれない。 それでも、次のような記述には興味をそそられる。 ■神田で寄席に入ったときのこと ■湯河原で、崖下にある不動明王像を見に行った山岸外史が、大声で呼んでも太宰が見にこなかったときのこと 身近な人が示す、予想外の反応に驚くことがある。この本の著者も、太宰のそんな反応に驚いている。太宰の「高笑い」と「恐れ」は、太宰の深層に隠されていた「逸脱してしまうこころ」が、露呈した一瞬だったのだろうか。
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