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 埋草コラム

2001.10.5
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敏感関係妄想
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スポーツの得意な人が
数学が得意とは限らない。
数学の得意な人が
音楽が得意とは限らない。
なんでも得意だというニクタラシー人が、
中学や高校の時いるにはいたけど、
ふつうそれらは
別物だと考えられている。

同じように、
相手のことを理解し共感する能力と、
相手といい関係をつくろうとして、
その人の感情の動きを
敏感に読み取ろうとする能力は、
別物だという。
山岸俊男氏はその著書
『安心社会から信頼社会へ』(中公新書)
の中(164ページ〜205ページ)で、
さまざまなテストを繰り返した結果として、
そんな結論を引き出している。
大事なことが
言われているような気がする。

人との関係に敏感な人ほど、
相手のことを理解していると、
普通は考えやすい。
でもそれは違うらしい。
相手を理解することに自信が持てないので、
その不安から、
相手の感情の動きを
敏感に察知する能力を発達させて、
関係を維持しようとしているようなのだ。

『人間失格』の主人公は、
人間が分からないという不安から、
道化によって人間とつながろうとする。
分からないからこそ、
つながろうとしているのだ。
そして、
自分自身は人に不安を与えないように、
人から見て分かりやすい姿に
変身しようとする。
それが道化だ。
そんな主人公のこころの動きも、
この本のおかげで
うまく説明できるような気がする。

人を理解できないという不安が強いほど、
うまく人とつながろうとするから、
人との関係に
すごく敏感になってしまう。
だから、
相手に気を使い過ぎているときは、
相手のことを理解できない不安で
いっぱいなときだ。
そんなときは、
いい関係を作ろうなんて、
ムリに思わないほうがいいような気がする。
人との関係に敏感になって、
顔色をうかがうようなことをするよりも、
理解されないことを恐れずに、
自分自身の中味を開示しながら
接したほうがいいのかもしれない。

理解できない、
理解されないと考えると、
人との関係に過剰に敏感になってしまう。
そんなことが長く続くと、
あらぬ妄想を抱くようになるのではないか。
そういうことを知るだけでも、
救いになるような気がしているのですが。


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山岸 俊男
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