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 埋草コラム

2002.7.26
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考えを変えるために書く
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書く前に考えていたことと、
正反対の結論になってしまうことが、
書いているとよくあるものです。
同じように、
しゃべる前に考えていたことが、
人にしゃべることで、
変わってしまうことがある。
頭で考えていたことは、
書いたりしゃべったりすると、
思いもよらない方向に進んでいく。

「考えること」と「書くこと」と「しゃべること」は、
うまくつながっていないのではないか
というような、
何となくしっくりしない感じが
ずっと残っていた。

高橋源一郎の新著
『一億三千万人のための小説教室』
(岩波新書)の中に、
こんなことばを見つけて、
このしっくりしない感じが少し、
しっくりしてきた。

ふつう、人は、なにかを考えて、
それから、おもむろに、
その考えたなにかをことばで表現する、
と思われています。
しかし、それは、
まったくの誤りではないでしょうか。
(略)
まず、最初に口まねがあるのです。
あかんぼうは、なにかをまず考えてから、
ことばにするでしょうか。
あかんぼうは、
まず、ことばを口にするのです。

(119〜120ページ)

「まず、ことばを口にする」ことから、
「考える」ことがはじまるのではないか。
「考えていることを書く」のではなく、
「書きながら考える」といった方が
実感に近いような気がする。

書くことによって、
「考え」が生まれる。
しゃべることによって、
「考え」が生まれる。
だからむしろ、
「考え」を生むために、
書いたりしゃべったりするのだと
思ったほうがいいのかもしれない。

頭の中で考えていたことが、
書いたりしゃべったりすると
変わってしまうのは、
頭を使って「考える」のと、
手を使って書きながら「考える」のと、
口を使ってしゃべりながら「考える」のとでは、
同じ「考える」でも、
その中味が違うからではないか。

書くことに意味があるとしたら、
頭で考えていたことと
違う考えを見つけることにあると、
いまこれを手で書きながら
考えているところです。


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高橋 源一郎
4004307864

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