表紙埋草コラム[一覧]サイトマップ

 埋草コラム

2004.3.19
─────────────────────────
いちばん豊かな場所に戻る
─────────────────────────
トシを取ると、
昔のことが懐かしくなると、
よく言われる。
そうかもしれないけれど、
夢や目標がなくなるからだというのは、
ちょっと違うような気がする。
また、人生の先が短くなったことで、
過去を懐かしむようになると、
考えられているかもしれない。
そうだろうか。

結婚や仕事がまだ、
夢としてあった若いころを懐かしむとすれば、
その時点である程度人生が、
停止しているからではないか。
将来が未知なものとして
広がっていたころの気持を、
たくさん保存したまま、
その後の人生があるからではないか。

昔のことはよく憶えているのに、
最近のことはすぐ忘れてしまうとすれば、
「よく憶えているころ」というその時点で、
人は歩みをある程度ストップして、
そのころのことをたくさん保存したまま、
人生を歩んでいるからだと思う。

「よく憶えているころ」のことがその人にとって、
いちばん大切なものとして、
その人自身を形成しているのだとすれば、
その場所に戻ることは
その人自身に戻ることだし、
その人のもっとも豊富なところに
戻ることになるので、
過去を懐かしんでいるとばかりは
言えないのかもしれない。

確かに懐かしむためにだけ、
過去を思い出すということも
あるかもしれないけれど、
それだって、
自分のいちばん豊かだったころに
戻ることによって、
自己の再生を図っていることになるのだと思う。

子供のころや青春のころ、
結婚したころや子供ができたころを、
繰り返し懐かしむのはそれが、
その人にとって
豊かな時期だったからだと思う。

いつでも帰ることのできる、
豊かな場所が過去にあるということ、
そのことは考えている以上に、
いまの自分を支えているように思える。

表紙埋草コラム[一覧]サイトマップ