「赤井御門守」という人物

 

落語に登場する殿様の代表的な名前です。「あかい ごもんのかみ」と読みます。

落語は江戸町民の文化ですから。武士階級には辛口な表現をいたします。寄席には侍などが来ている

こともないでしょうから、比較的悪口ばかり言っております。浅黄者などといって地方から出てきた侍を

無粋な人物風に描いています。「蔵前駕籠」とか「首提灯」などに出てきます

殿様だって寄席にくることはないはずですから、落語に登場する人物として取り上げても差し障りはないの

でしょうが、実名を使ったのでは、いつ何時クレームがくるかもしれないので、ありそうもない名前として

使われるのです。

この殿様はいろいろなエピソードを残しております。

        幼少の頃のこと。城の中ではお金を使うことはありませんから、お金というものを見たことがありません。

ある日のこと。庭に落ちている一文銭を拾いました。それが何か判りませんから、そばの者に聞きます。

お金というものを説明するのですが、物を買うことなんて知らないのですから、理解できません。

形状が似ていることから、お雛様の持っている刀の鍔ではないかということになった。

        天守閣より夜空を見上げていた殿様。「お月様がとても綺麗じゃな。」と言われた。

お付の者が、「殿様なる者はむやみに敬語を使ってはなりません。」と注意する。

「ならば星めらはどうじゃ。」・・・・・・・・・・そんなに悪く言わなくてもいいのですが。

        目黒は当時は江戸郊外でしたので山野でありました。鍛錬のために目黒に狩に出かけたのはいいのですが、

家来は弁当を持ってくるのを忘れておりました。運動をした後ですし、空気もうまい。すっかり空腹となった

殿様。餓死するのかと思い込んでいる様子。そこになんとも食欲をそそる匂いが流れてくる。

近所の農家で焼いている秋刀魚の煙であった。脂の乗り切ったやつをシュンシュンいわせながら焼いている。

もう殿様はたまったものではない。すぐに持ってくるように家来に言う。

困ったのは家来のほうです。城中では焼きたての魚など食卓に乗せることはなく、それも鯛であって、

真っ黒に焼けたジュウジュウいってるような、それも秋刀魚を殿様に食べさせたとなると、まさに切腹もの

です。空腹で死にそうな殿様はそんなことはお構いなし。仕方なく皿の上にのせて、醤油をかけた秋刀魚を

さし出した。それをみた殿様はびっくりする。魚はすべからく赤くて冷たく横たわっているものと思っていた

のが、出てきたのが真っ黒くてジュウジュウ、火事みたいなっているのですから。

「おい。これは食せるのか。」

「どうぞ。お召し上がりくださいませ。」

恐る恐る口に入れる殿様。空腹の上に旬の秋刀魚です。まずいはずがありません。

おかわりまでして満腹となる。

さあそれからは城中に帰っても秋刀魚のことが忘れられない。あの時の家来を呼んではそっと耳打ち。

秋刀魚を食卓に出せと言う。が無理難題。仕方なく、焼いた秋刀魚をすり身にして汁物としてだした。

これでは美味いはずがありません。

上つ方というものは、そんなに美味しいものは食べていないということですね。



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