「赤井御門守」という人物

落語に登場する殿様の代表的な名前です。「あかい ごもんのかみ」と読みます。
落語は江戸町民の文化ですから。武士階級には辛口な表現をいたします。寄席には侍などが来ている
こともないでしょうから、比較的悪口ばかり言っております。浅黄者などといって地方から出てきた侍を
無粋な人物風に描いています。「蔵前駕籠」とか「首提灯」などに出てきます
殿様だって寄席にくることはないはずですから、落語に登場する人物として取り上げても差し障りはないの
でしょうが、実名を使ったのでは、いつ何時クレームがくるかもしれないので、ありそうもない名前として
使われるのです。
この殿様はいろいろなエピソードを残しております。
■ 幼少の頃のこと。城の中ではお金を使うことはありませんから、お金というものを見たことがありません。
ある日のこと。庭に落ちている一文銭を拾いました。それが何か判りませんから、そばの者に聞きます。
お金というものを説明するのですが、物を買うことなんて知らないのですから、理解できません。
形状が似ていることから、お雛様の持っている刀の鍔ではないかということになった。
■ 天守閣より夜空を見上げていた殿様。「お月様がとても綺麗じゃな。」と言われた。
お付の者が、「殿様なる者はむやみに敬語を使ってはなりません。」と注意する。
「ならば星めらはどうじゃ。」・・・・・・・・・・そんなに悪く言わなくてもいいのですが。
■ 目黒は当時は江戸郊外でしたので山野でありました。鍛錬のために目黒に狩に出かけたのはいいのですが、
家来は弁当を持ってくるのを忘れておりました。運動をした後ですし、空気もうまい。すっかり空腹となった
殿様。餓死するのかと思い込んでいる様子。そこになんとも食欲をそそる匂いが流れてくる。
近所の農家で焼いている秋刀魚の煙であった。脂の乗り切ったやつをシュンシュンいわせながら焼いている。
もう殿様はたまったものではない。すぐに持ってくるように家来に言う。
困ったのは家来のほうです。城中では焼きたての魚など食卓に乗せることはなく、それも鯛であって、
真っ黒に焼けたジュウジュウいってるような、それも秋刀魚を殿様に食べさせたとなると、まさに切腹もの
です。空腹で死にそうな殿様はそんなことはお構いなし。仕方なく皿の上にのせて、醤油をかけた秋刀魚を
さし出した。それをみた殿様はびっくりする。魚はすべからく赤くて冷たく横たわっているものと思っていた
のが、出てきたのが真っ黒くてジュウジュウ、火事みたいなっているのですから。
「おい。これは食せるのか。」
「どうぞ。お召し上がりくださいませ。」
恐る恐る口に入れる殿様。空腹の上に旬の秋刀魚です。まずいはずがありません。
おかわりまでして満腹となる。
さあそれからは城中に帰っても秋刀魚のことが忘れられない。あの時の家来を呼んではそっと耳打ち。
秋刀魚を食卓に出せと言う。が無理難題。仕方なく、焼いた秋刀魚をすり身にして汁物としてだした。
これでは美味いはずがありません。
上つ方というものは、そんなに美味しいものは食べていないということですね。