「落語ネタの不思議なお話………・青菜」

「鞍馬山から牛若丸が出でまして、その名を九郎判官」

「そうか、義経にしておけ」

というかけあいでお馴染みの「青菜」ですが、こんなストーリーです。

炎天下の中、お屋敷の庭で植木の手入れをしていた植木屋さん。煙草をすいながら

庭を眺めていた。そこに屋敷の主人が現われて植木屋さんにご馳走をする。

このご馳走は庶民にはめったに口に入らないもので、「鯉のあらい」というもの。

それも氷の上に盛られてだされた。体の火照っている植木屋さんにはうれしいもので、

それにお酒もつけてだされたのである。それも冷酒なのだ。

ここが不思議なところですね。こんなご馳走をどうして植木屋さんにだしたのかです。

お酒を昼間から振る舞っているのもおかしいのですね。植木屋さんは仕事中なのです

から。三時の休みにお菓子をだすのとは違う訳です。なんらかの企みを感じますね。

また、お酒の次に出されたのが「菜」である。「鯉のあらい」と「柳陰」という”みりん”のようなものの後が

「菜」ですよ。これも変ですよね。

「植木屋さん。菜をお上りか?」

「はい。」

「奥や。植木屋さんに菜を。」

「はい。」

しばらくしてね、

「旦那様。…・・」

で上記のかけあいとなる。

妙味がわかると人にやってみたくなるのが人情ですよね。

ここでピンときた。

ははあ……屋敷の主人もどこかでこれをやられたのではないか」ということ。

おそらくは始めてやってみるので、仲間に対してはちと不安でしてね、出入りの職人に

トライをしてみたということではないでしょうか。

ご馳走をだしたのも効果を倍増させるための趣向ですね。

人間、面白い事を経験すると人にやってみたくなるという心理がこの話にはあって、これが現代にも通じるものだから。「青菜」は古典として残った。

植木屋さんも案の定、自宅に帰ってやってみようとする。ところがお屋敷と同じ設定に

したものだから、可笑しくなってしまうのだ。ご馳走に「鯉のあらい」や冷酒などだせる

わけもなく、「いわしの塩焼き」となまぬるい酒となる。

「植木屋さん、菜をお上りか」などといっても相手は長屋の大工さん。

「奥や。」などといっても、次の間があるわけでもないから、おかみさんが押し入れから

汗だくで出てくるという始末でしてね。それdもおかみさんは立派に。

「鞍馬山から牛若丸が出でまして、その名を九郎判官…義経」とまで言ってしまう。

困った植木屋さん。

「うーーん。弁慶にしておけ。」

惜しくも植木屋さんの目論見は失敗に終わるのである。

受け売りは失敗するという見本ですかな。

植木屋さんが帰った後、お屋敷の夕食には「青菜」が食卓にのぼったということだ。

―続―




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