落語ネタの不思議なお話・・・・・・・「愛宕山」

「愛宕山」という噺の主人公は幇間の一八でして、旦那のお供で京都郊外の

「愛宕山」に芸者衆と遊びに行くという設定です。

京都の観光場所をあちこち見て歩いたついでに、「愛宕山」に登ってみようという

趣向でして、幇間衆などというものは酒席で体に悪いことばかりしておりますので

体力などには自信がありませんが、そこはよいしょの世界でして意地が表に

でてくる。山登りなんざ朝飯前てな覚悟で登り始めます。ここからがこの噺の

ポイントその1でしてね。芸者衆は慣れたものでして身軽そうに登っていきます。

いきがって昇り始めた一八さん、最初は鼻歌混じりで余裕がありましたが、

段々と苦しくなってきてね、とうとう途中でダウンてなことに。旦那に馬鹿にされ

ばがらも繁蔵さんの助けをかりて、ようやく登ることができた。

ここでポイントその2になります。

旦那が「瓦け投げ」という一種のゲームをやり始めます。

「瓦け」というのは素焼きの平べったい直径5センチ程度の杯みたいなものです。

これを頂上近くの崖の上に立って谷底に吊るしてある輪の中に投げ入れて通す

という遊びでして、今でいうフリスビーみたいなものです。

結構距離があるものですから難しいもののようでした。

東京では王子あたりに、このような場所があったということです。

旦那は何回もこのゲームに来ているらしく上手でした。投げるときに皿のはじを

ちょいと欠いてからやると滑るように飛んでいくてなこつも知っておりまして。

一八さんも、これを見てね、軽いのりでやってはみるが所詮は素人、うまくいく

はずがない。

そしてポイントその3となります。

旦那が懐から三十両をだして「瓦け」がわりに的に投げようという。

三十両といえばいかに旦那でも大金です。遊びやシャレで投げられるようなもの

じゃないのですが、芸者衆に対する見栄なのでしょうか、自分のパワーを誇示しよ

うというのでしょうか。三十両を全て投げてしまいます。小判と瓦けでは形状も

違いますので、うまく的を通過することはできずに谷底にと落ちてしまいます。

はたでこれを見ていた一八さんはいても立ってもいられなくなります。途中で

旦那を止めようとしますが、とうとう大金は谷底に消えていった。

金持ちが大金をばらまいて遊ぶという噺は「煙草の火」という上方噺があります。

この辺のお金持ちの心理というのはなってみないとわかりませんね。

さて一八さん。このお金が欲しくてたまらない。しかし谷底まで行ける道は

遠回りで四里余り。途中で狼がでるというから、とてもじゃないが行けない。

どうしたらお金を拾いにいけのか一計を案じる。

それでポイントその4です。

「近くの茶屋から笠をかりて落下傘がわりにして飛び降りる」という。

この発想が江戸時代の噺ではないですよね。

「愛宕山」という落語に、このアイデアというか工夫を入れたのは、いつの時代

なのでしょうか。作られた時期が新しいのでしょうね。

笠を持ったはいいけどなかなか飛び降りることができない一八さん。

旦那は非情にもというか、これも趣向というか、繁蔵さんに一八さんの背中を

押させてしまう。

「あぁーーーーーーーーーーー」という悲鳴を残して一八さんは谷底へと。

でですね、やってきました最後のポイントその5。

一八さん、なんと無事に谷底に降りた。一瞬気を失いかけた一八さん。旦那の声で

我に返り目当てのお金を拾いまくる。三十両全てを拾い・・・

「一八・・・・・・金はあったかぁ・・・・・・どうして帰る・・・・」という

問いかけにはっとする。

もう笠をひろげて飛び上がるなんてことはできはしない。

かといって道づたいに行ったのでは狼にやられる。

途方に暮れた一八さん。一計を案じた。

着ていた着物を破いて縄をあみ、竹に結びつけてしならせる。縄の先を身に

ゆわえて、ときはなてば弓の原理で体は空中に投げあげられるというわけ。

この発想も江戸ではないですね。「投石機」みたいなものですからね。

そしてなんと、無事に崖の上に飛び上がったというから、この噺。実に不思議で

冒険小説的な要素を含んでいることでしょう。



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