落語ネタの不思議なお話「胴切り」

 

この噺は上方落語です。「首提灯」と似ている噺です。

時代劇などでは「辻斬り」などといいまして、刀の切れ味を見ようなどということで関係の無い町人を切り殺した。

ということですが、実際にあった話なのでしょうか。

居合抜きなどで竹を一刀両断する場面がありますが、本当の刀ではなかなか切れるものではないそうです。

藁人形などでもせいぜい中ほどくらいまで切れればいいくらいで、切り抜くには相当の鍛錬が必要だったようです。

 

さて、新しい刀を手にした侍がおりました。「試し切り」をしようと街角をうろついていると、湯屋、銭湯の帰りなのか

手ぬぐいをぶらつかせた町人が向こうから歩いてきます。

「よし、こいつに決めよう。」ってんですが、決められた方はいい迷惑ですなぁ。

この侍、余程の腕とみえて、町人の後ろに回ったかと思うと、「えいーー」の一声で居あい抜きです。

胴の部分から二つになってしまいます。上半身と下半身ですねぇ。

さてここからが落語です。おかしな具合になってきますよ。

はずみで胴の方は横にあった用水桶の上に飛ばされてしまうのです。

ところがあまりに見事な切られ方ですから、胴は気がつきません。

「何をするんだよぉ。いきなり人を桶の上に放り上げてさぁ。驚くじゃねぇかよぉ。いやに下がすうすうするねぇ。

 えっ。なんだいこりゃぁ。足が無いよ。足が。ばさって音がしたところをみると、切られちゃったねぇ。こりゃぁ。

 ひでぇことするじゃねぇか。」

足を捜してみますと、通りでつったっている足がおります。

「おーい。そんなとこに立っていねぇでこっちにきなよ。侍を追いかけようじゃねぇか。なぁ。」

とこrが自分では足の上に乗れませんのでね、誰か通りかかった人に助けてもらおうと待っていると、運良く友達が

やってきた。こいつも妙な人物でね。胴を背中に背負って、足を両手にぶら下げてね、男の嫁さんのところに

運んでいくのです。

家についてどっかと胴をおろしたのをみて、

「まぁ。また酔っ払ってるのかい。すまないねぇ。迷惑かけちゃってねぇ。ご苦労様。・・・・これ、だんつく!

 酔っ払ってどこに足を忘れてきらんだい?」

「足は表に置いてあるんだ。」

「これ足。さっさと入ってきな。」

少しも動じません。

さて二つになった体はそれからどうなったかといいますと、いたって元気なのですねぇ。元気というのもおかしな話

ですがねぇ。元気なのだから仕方が無いわけでして、胴が歌などを歌うと足がそれにあわせて踊りだすというような

ことでして、そんなに元気なのであれば仕事をさせようと嫁さんは考えます。

胴は自分では動けませんし、足は顔がないので歩くにしても方向がわからない。ですから今までのような仕事は

できません。

嫁さんはここで一計を案じます。それぜれの適正にあわせた仕事をさせればいいということなのです。

頭がいいですよねぇ。胴と足が違った仕事をするわけですから給金は二人前貰えるわけですよ。

そこでね、胴にさせた仕事は何かと言いますと、「湯屋の番台」ですよ。落語「湯屋番」で御馴染みの番台ですよ。

男なら誰でも一度は座ってみたい場所ですなぁ。

なるほど座ってやる仕事ですからね、ぴったりですよ。

それにしても足のほうはどうでしょうか。足だけでできる仕事ですからねぇ。そうはないのですが、世の中、捨てる神も

あれば拾う神もあるってわけで、「麩屋の職人」があった。麩を踏んで麩を作る職人ですね。まさに適正がある。

胴の方は番台で寝泊りするようになっていましてね、ご飯も番台で食べてしまう。トイレはいりませんというより、

しようがないのですからね。足はご飯を食べませんが、時々便所に行かなければなりません。

そうこうしていると、番台にいる胴は湯気が目に当たってかすむようになってきたのです。これには足の三里という

つぼに灸をすえるといいのですが、足は遠くで働いているのでそうもいきません。

人を使いにやって、灸をすえてもらうように頼んだのです。

足は快く引き受けますが、使いの人に戻ったらこう胴に伝えてくれというのです。

「あんまりお茶をがぶがぶ飲まないようにしてほしい。」とね。

おしっこが近くて困るというわけですね。

 

またこんなことも言っていたということです。

「余り女湯を覗かないように言ってください。褌が傷んでしょうがないのでなぁ。」

そうかもしれませんね。



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