落語ネタの不思議なお話「半分垢」

お相撲さん、関取のお話です。現代は年間六場所で十五日間を六回ですから、
年間九十日も大相撲をやっています。実に四日に一日、相撲をやっていることになります。
江戸のころは一場所が十日間で巡業が主でした。年間九十日などはやっておりません。
江戸の関取が大阪に巡業に行くなどということもありました。
大阪から帰ってきた関取が二階で寝ているところに、贔屓筋の男が尋ねてきました。
お上さんが応対に出ましてね。
「関取は随分と大きくなったでしょうね。」という問いに
「そりゃあもう、大きくなったなんて物じゃないです。声は割れ鐘のように大きいし、
背丈は屋根まであるので、戸をはずしてやっと入ったって始末。
目なんて炭団のようだし、ご飯は一度に一俵食べてしまうの。」
と、おおぼらをふきました。
これを聞いていた関取は、お上さんを叱ります。
「余り大きなことをいうのではない。大阪から帰ってくる途中で茶店の娘に、
富士山は大きいなと言ったら、毎日見ているから大きいとは思わない。
それに半分は雪だからと言った。それを聞いたら、富士山がますます大きく見えた。
余り自慢話をするものではない。」
とね。
お上さんは大いに反省をしましてね、別の贔屓筋の男が尋ねてきて
「関取は随分と大きくなったって聞いたけど。」と言うと
「いいえ、とんでもない。声なんて虫が鳴くように小さいし、顔も煎餅くらい、
目は砂粒で、ご飯は一粒食べればお腹がいっぱいになるんだから」
と言ったのです。
これを聞いていて、関取は恥ずかしくなって男の前に顔をだした。
「なんだ、お上さん。関取はこんなに大きいじゃありませんか。」
すかさず、お上さん。
「いいえぇ。半分は垢ですもの。」