「落語ネタの不思議なお話………・反対車」

人力車の車夫の話です。橘家圓蔵師匠がよく高座にかけられますが、力が入る話の

ようで体力勝負でな部分もありますね。

東京神田あたりで客待ちをしていた車夫。客に声をかけられるが病み上がりとみえて

早く走れない。しょうがないってんで乗り換えた人力車の車夫がすごい。

万世橋(秋葉原)を渡って上野にいってくれという客を乗せた。今なら昭和通をまっすぐ

上野駅にてなとこだ。山の手線や京浜東北線に乗れば近いのだが当時は電車はない。

韋駄天の車夫はあっという間に上野を駆け抜けて、ものすごいスピードで走る。

下手に喋ろうものなら舌をかみきろうてな速さでして、気がつくと浦和に着いた。

この辺が不思議なお話でしてね。いかに早くても浦和までひとっ走りというのは……

途中で歩いていた芸者を跳ね飛ばしてね、池に落してしまったりする。

「おい、可哀相だから芸者を上げてやんな。」という客に、

「冗談じゃねぇ、芸者を揚げるくらいなら車屋などやってねぇ」というのがサゲ。

上野まで行きたいのが客なのでも戻れということになる。

浦和から赤羽ぬけて真っ直ぐ行けばいいものを赤羽から右にそれてね、板橋から

池袋を抜けて新宿に行っちゃった。埼京線をたどったわけだ。

驚いたのは客の方で、西郷さんがいるかと思ったら三越があってね、小田急やら京王が

あって甲州街道にでた。上野じゃないだろうてんで、走り出したんですが、代々木から

左に曲がってね、四ッ谷、市ヶ谷、御茶ノ水とくりゃ、元の神田にでたんだけど、

代々木を左に行かずにまっすぐ行ったから、渋谷、恵比寿、目黒、五反田、品川に

でた。右に折れたら永久に上野に行けないのだが、さすがに左に曲がってめ、

浜松町、新橋、東京を抜けて神田に着いた。

客はさすがにへとへとでね。いいかげん遠回りをして、元いた場所にきた。

「なんだいこりゃ、えっ、どうなっているんだい?」

「へい、あいすみません。直ぐに上野にむかいます。ところで旦那さんは上野から

どちらまでいらっしゃるので。」

「なにね、池袋に用事があってね。」

「池袋?  途中に通りませんでしたか?」

「うん、そうなんだけど、行き先を上野って言ったんでね、途中下車前途無効だと

思ったんだ。」

  

  

テケテンテンテン…・・

ところで、代金は幾らくらいだったのでしょうね。東京をぐるりと回ったのですから、

さぞや高かったかと…………

  

いやいや、たった一円だったとか。……テヘへへ…・(^!^)