落語ネタの不思議なお話「引越しの夢と遠山政談」

お店の奉公人。番頭から丁稚まで身分がありました。大きな商家になりますと、大番頭がおりまして、住み込みでは
なく、一軒の家を持って通ってきます。こうなりますと大したもので、店の主よりも偉かったということで・・・
報酬も多かったなんていう場合もあったそうです。
「百年目」などにもありますように、旦那(主人)は商いのことには余り口を出さなかったようです。
番頭に全てを任せて店の奥に引っ込んでいるということですね。
奉公人も大勢おります。上は四十代から下は子供までいたそうですね。三十代や四十代で所帯を持っていなかった
なんていうのはざらだったそうです。
会社組織みたいなもので年功序列でしたから、勤続年数によって上にあがっていくような仕組みでした。
落語には奉公人の生活を描いたものがたくさんあります。
がんじて店の主人は「しわいや」ですねぇ。奉公人の食事の中身はひどいものだったようですよ。
朝から晩までこきつかうのが常でしたようで・・・・・・
「味噌蔵」なんて落語には主人の留守に日頃の粗食の恨みを晴らそうてんでね、番頭さんを初めとして全員で
食べたいものを注文して大宴会をするという。
「藪入り」などでは盆と正月の年二回しか親元に帰れない丁稚たちの様子が描かれています。
男ばかりではなく女性も働いていましたから、男女の付き合いには厳しい制限があったようです。
職場結婚なんてものはご法度だったのでしょう。
芸者さんが船で移動するときに船頭がおりますが、けして一人では乗らなかったそうです。
「一人芸者に一人船頭」はご法度だった。同じ世界に住むものとしてのけじめだったのでしょう。
お店の場合は所詮同じ屋根の下で寝起きしておりますでしょ。もちろん、寝所は分けられておりますが、
よからぬことを考える男はどこにも居たようです。
「引越しの夢」という落語
女中さんも顔ぶれが入れ替わります。所帯づいて止めていくこともあるのでしょうからね。そうなると口入屋に
頼んで新しい女中さんを補充するということになります。店の男連中は若くて美人の女中さんが来ないかと期待
するわけですな。ですが女主人はわかっておりますから、なるべく美人ではない女中さんを連れてくるように丁稚に
いいつけますが、番頭にうまくいいくるめられてね。美人の女中さんを連れてくることになります。
さあそこから騒動が持ち上がります。
二階には女中さんの部屋。一階には男の奉公人の部屋と分かれております。夜中に忍び込んでくるような輩が
こないように二階への渡り梯子を取ってしまう女主人でした。
それでも何とかして二階に行こうとするべく一計を案じるわけですなぁ。
そのエネルギーたるやたいしたものですよ。
台所の上の釣ってある蝿帳を伝わって二階に行こうというわけですよ。
足をかけようとすると蝿帳が落ちてしまうのですね。中には醤油などが入っていてね。こぼれて垂れてきたりするけど
片方をもって担いでいるところに、同じような考えの男がやってきます。
ついには二人で蝿帳を担いでいるというような次第になってしまうのです。
そこに騒々しさに起きてきた女主人が現れる。二人の格好に呆れてわけを聞きます。
「はい。引越しの夢を見ておりました。」とさ・・・・・・・・
「遠山政談」という落語
これも女中さんを巡る噺なのですが。落語に似合わずだいぶ凄惨な筋立てになっております。
あまりこの落語をお聞きになった方はいないかもしれませんね。
「唐茄子屋政談」とか「鹿政談」などは聞きなれているでしょうけれど、「遠山政談」は不思議なことに
かの遠山金四郎が出てこないのですねぇ。それでも「遠山政談」となっております。
さて女中さんですが、彼女はとてつもない醜女でした。いくらなんでも奉公人が手を出すような女性ではなかったの
ですね。
ある晩のことです。酒に酔った番頭が何を思ったのか、この女中に手を出してしまいます。
その上に妊娠までさせてしまうのですね。
さあ番頭は困ってしまいます。店の人のてまえもありますし、世間体もある。主人に顔向けが出来るわけでない。
とうとう番頭は悪人に頼んで女中を殺害しようと考えます。米俵に押し込んで川に突き落としてしまうのです。
この辺が凄惨な場面になるのですね。
ここで終ってしまうと落語にはならないでしょう。
ですからね、ここからややほっとするような筋になるのですが、そこは聞いてのお楽しみということでいかがでしょう。
江戸の街は極端に男の人口に比べて女性が少なかったようで、8:1なんていうことを聞きました。
それだけに恋愛のチャンスが少なかったのかもしれません。
仲人を入れた結婚ではなくて、「くっつきあい」でなった結婚を江戸っ子は自慢していたようですねぇ。
大店における人間関係もいろいろあって、落語の中には取り上げられることが多いようですね。