「百年目」の大番頭という人物

 

大店の大番頭ともなると大変な地位でして、店全般を任されておりますから営業部長、調達部長、経理部長

人事部長を兼任しているような人物です。旦那なんてものは店の奥座敷に引っ込んでいまして、店には

めったに顔をださない。会長とか相談役てなところです。

店の奉公人は住まいは店の中にありまして、男女の交際はきつく禁じられております。

大番頭ともなると、一軒構えまして、そこから通ってくるなんとことができる。通い番頭ですね。

こうなるともう大変なものでして、収入は主人よりも多かったなんてこともあったそうです。

そんな大番頭の中の一人の人物の話です。

この番頭さん。仕事一筋のたたきあげです。子供の頃に奉公に上がっていらい数十年。今や立派な番頭に

までなった。遊びなどは一切知らないというのが店の人たちの評価です。店に出るとでーーんと帳場に

座りまして奉公人の仕事の仕方を見ては毎日叱ることしかしない。小言の毎日です。

まあこのような人が全体に睨みを効かしているようじゃないと店の切り盛りはできないのかもしれません。

 

この大番頭、店の者に仕事をいいつけておいて、気をみると店の出た。先ほどから幇間が店の前を

行ったり来たりしている。お迎えというわけです。

花見をして、舟遊びをやろうという趣向なのです。大番頭は小店の二階に借りてある部屋の箪笥から贅沢な

粋な仕立てを取り出しまして着替えます。

このあたりから、この番頭さんは、只者じゃないということがわかります。

船に乗ると中には芸者連中が集まっている。お酒を飲んだり花見をしたりと騒ぎたいところなのですが

なにしろ仕事中に外出しているので、誰かに見られたら大変と、障子を締め切っての遊び。

暖かくなってきた頃ですから、中はもう暑くて仕方が無い。

「岡に上がって楽しみましょうよ。」の声に、番頭さん一行は外に出ることに。

一行の連中は開放されたものだから、歌や踊りの大騒ぎとなります。

そこに通りがかったのが、お店の主人。お付の町医者と歩いてくると、派手にどんちゃんやっている

グループがいた。はてはどこかの旦那だろうかと、よく見てみると、大番頭さんとわかってしまう。

この主人。よく出来た人でして、公衆の面前恥をかかせるようなことはしない。

「ほうーーーこれはこれは、どなたかと思ったら、家の番頭さんではないですか。随分とお楽しみのようで

 なによりです。人間たまには遊ばなくてはいけません。ゆっくりとしていらっしゃいな。」

でな調子です。

驚いたのは番頭さんで、店の中で自分より偉いたった一人の人に、この場を見られてしまったのですから

もう遊びどころじゃなくなります。

すぐさま店に戻るや自分の部屋に閉じこもったまま出てきません。

主人が立腹して解雇されるのではないかとか、無罪放免になるかもしれないから、それまで待ったほうが

いいのじゃないかとか、いろいろな思いが頭をよぎり、とうとう一晩中眠れぬまま翌日を迎えることに。

主人はまた、隠れてあのような遊びをしているということは店の金に手をつけているのではないかという

疑念があり、一晩中、帳面を調べていたのです。監査ですね。

番頭は一日の商いが終わると帳面を旦那に提出します。旦那はこれをみて商売の状況を把握するのでが

できた大番頭だと信頼しておりますから、目を通したことはありませんでした。

でも、今度ばかりはということですね。

調べてみますと、まったく不正のあとがなく、たしかなものでした。

自分で稼ぎ出したお金で遊んでいる番頭の姿に、改めて信頼の念を強めたのです。

 

現代でも、会社の金を横領したり、裏金としてプールして私利私欲に使ってしまう官僚が、あとを立ちません。

経費をごまKして脱税をする人。・・・・・・この大番頭を見習わなくてはなりません。

 

 



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