落語に登場する「おさん茂平」

茂平という人物は江戸深川の小間物屋の店員です。
真面目な人だという評価があって、「女嫌い」という評判が立っている。
しかしながら妻帯者でしてね。家に帰ると七人の子供がいるということですから、なにが「女嫌い」
なのかわからない。
ある時、主人の命で桐生の機屋に仕入れに出なくてはならなかった。店の金をもって出かけます。
途中、上尾の宿はずれの「一膳めし屋」に入りました。
そこには「おさん」という23,4歳位の美しい女性が働いていましてね。
茂平は一目ぼれというわけです。ここでも何が「女嫌い」なのかわかりませんよ。
何とかして逢ってね話がしたいなんて思うのですが。声をかけるなんてことはできやしない。
周りの男たちの話の中にでてきた「さぶ」という任侠の親分に頼んでね、なんとかしてもらおうなどど
考えたわけです。
この「さぶ」という親分は、よくできた人物でしてね。けしてやくざな悪い人物ではなかった。
茂平から相談を受けるが、子分の女房を紹介しろという話をうけられるはずがありあせん。
道理は親分の方にあります。断るのですが、茂平という男。ならば井戸に身を投げて死のうとします。
親分は困っているとね。金を子分に差し出すから女房に話しだけでもさせて欲しいなんて言い出します。子分というのが金に汚い人間だということを知っておりますから親分は何とか話をしてやろうと
子分のところに出かけました。
金に困っている子分は三十両という大金に目がくらんでね。親分の家で少しの間、話をするくらいなら
よかろうと引き受けます。
そのうえ、三十両もの大金をこんなことに使おうっていうわけだからもっと金を持っているのに
違いないということでね。女房をけしかけて金を騙し取ってしまえなどと言い出す始末。
「おさん」はこんな亭主にあきれ果ててしまいます。
こんな亭主に比べれば自分を慕ってくれる茂平と一緒になりたいと思うようになってしまいます。
こんな「おさん」の気持ちを知った茂平。二人で駆け落ちをしてしまうのです。
このあと、おそらくは、子分の女房を金で売った親分というような噂が世間にたったのでしょう。
「さぶ親分」は切腹自害ということになってしまうのです。
茂平という男は主人の金を横領した上に信義にあつい親分を自害に追い込むのですから
許せません。その上に自分の女房子供まで捨ててしまうのですからね。
落語の人情噺にも、こんな俗悪人がでてくるのですよ。