「落語ネタの不思議なお話……天狗裁き」

男が昼寝をしていると、突然女房に起こされた。

「なんだい邪険な起こし方をしやがって」と文句をつけるが、寝言を言っていたのを

みると、夢を見ていたのにちがいないから、どんな夢を見ていたのか話せ、という。

男は夢などを見ていた覚えはなくて、

「見てない夢の話はできない。」と断る。話せ、話せないでとうとう夫婦喧嘩となる。

そこに近所の友達が仲裁に割ってはいる。なんとかその場はおさまttが。今度は友達が

夢のことを聞かせろときた。「見てない夢の話はできない。」というのだが、しつこい友達

には、とうとう喧嘩ざたとなる。

今度は大家さんが割って入り場をおさめるが、なんとその大家さんも夢の話を聞きた

がる始末。「見てない夢の話はできない。」と言い張ったので、奉行所に告訴という

事態になってしまう。白州に呼び出されて、現われたのがお奉行様。

「このようなことで、お上の手を煩わせるとは不届き。大家には十分に叱りおく。」

となって、男は無罪…………かと思われた。

ところが奉行は男を呼んで、やっぱり「夢の話を聞かせろ!」ときた。この男、頑固なの

か、またもや「見てない夢の話はできない。」という。

怒ったのはお奉行様。「この奉行にも話せないのか」と、男を裏の木に括り付けて

しまう。日は暮れてくるし回りは不気味になってきて心細くなった男の前に現われたのが

なんと、「天狗」、この世のものならぬ天狗だ。さすがの男もこれにはまいった。

「この天狗になら夢の話はできよう。話さねばどうなるかは解かっておるな!」ときた。

これを断ったら次に何が出てくるか、おそらく想像もつかない恐ろしい物だでてくる・・

と思ったか、男は観念したのだが、あることを思い付いた。

『夢の話をするかわりに、天狗のもっている宝物である団扇と交換しようという迷案』

であった。この条件に応じた天狗は団扇を渡してしまう。

「見てない夢の話はできない。」わけだから、話のしようがない男は、団扇を振った。

一振で千里を飛ぶ事ができるという天狗の団扇。あっというまに空の彼方に飛んで

いってしまった。

気がつくと男は何と、「七福神の宝船」の中に降り立ったのである。これは目出度いと

喜んでいると………

「あんたぁちょっと起きてよ。」と女房に起こされた。

  

夢の話をしないばかりに段々とエスカレートしていくこの話。最後は大きな権力者が

出てきて窮地に追い込まれるが、逆手にとって負かせてしまった男の姿は、夢の中の

こととはいえ、権力に対する庶民の抵抗が象徴されているということか…・

天狗でも人間の見た夢の話を聞きたがるという、俗人的な部分の描き方も風刺だ。

週刊誌ネタが売れている現代も同じ心理が見受けられる。

テーマが普遍的だから「天狗裁き」という落語は生き残ってきたのだろう。