落語ネタの不思議なお話「やかんなめ」

時代劇などを見ていると、街道のはたに蹲ってね、苦しんでいる武家の女などがいて、主人公が助ける
などという場面があります。
「いかがなされた。」
「持病の癪で・・・・・・・・・・・」
となります。
この「癪」という病気は今はあまり言わなくなりました。
「おやじが癇癪をおこした。」
などと言いましたが、そのおやじも存在が薄くなりましたので、癇癪なども使わなくなりました。
「癪」という病気は、お腹のあたりが激痛に襲われるものだそうです。
腹痛、胃痛、腰痛、下痢、盲腸・・・・・・とにかく、お腹の付近が痛いと「癪」がおきたということになる。
いつも痛いわけではなくて、時々痛んだりしまうので、始末に悪いのです。
でまあ、冒頭のシーンということなのですが。
これを治すというか、痛みを止めるには当然のこと薬が必要になります。
しかし現在ほどは医学が進んでいない昔ですから、よく効く薬が無いのです。
「痛くなったらすぐセデス」てなわけにはいかないのですよ。
漢方とか、言い伝えのような薬を使っていたのでしょうね.
「病は気から」とでもいうのでしょうか。中には妙な相薬で治している人もいたのです。
「やかん」をなめると治るというのです。
家の中にいるのでしたら、「やかん」は置いてあるでしょうけど、外ではそれも野原などでは「やかん」は
ありませんから、ここで「癪」をおこしたらたいへんですよ。薬が無いのですからね。
まさかのために、「やかん」を持って歩くわけにはいかないもの。
さあ困ってしまいました。
苦しむ女主人。困惑する使用人。
そこに、神のご加護か仏の恩か、「やかん頭」の武士が通りかかります。
使用人はとっさに、「あのやかん頭をなめさせたらどうか」と考え付きます。
でもそのようなことを頼んでも、「無礼者。そこになおれ」で打ち首は必須ですよ。
それでも忠義の使用人。命を覚悟で願い出るのです。
その必死さが通じたか願いはかない、「癪」が治ることに。
その間の光景をイメージして下さい。抱腹絶倒ですよね。武士が頭を女人にぺろぺろなめられているの
ですから。おまけに額に歯形まで残されているということに。
不思議なネタですよ。誰が考えたのでしょうかね。実話でもないでしょうに。
この話はつい最近、小三治師匠が厚木で独演会をやられたときに初めて聴いたものです。
その時は、話のタイトルを知りませんでした。なんのことやらさっぱり解らなかったですね。
知り合いの素人噺家さんに教えていただいて解ったのですが。
「汽車は出て行く煙は残る。残る煙は癪の種」ですってさ。