「落語ネタの不思議なお話………・寄合酒&酢豆腐」

暑気払に一杯やろうという金のない若い連中が集まった。酒のほうはなんとかなったの

だが、つまみがない。いわゆる「あて」というやつでして、酒飲みは意地が汚い。

酒だけあればいいと思うのだが何かつまみたいという気になる。

金がないのだから刺し身とかなんていうものは到底無理なこと。そこで一計を案じた

彼らはただでつまみを調達する事にした。鬼ごっこの鬼になって、角の替りに鰹節を

持ってこさせてせしめる奴や、原っぱに止めてあった配達途中の小僧さんの自転車の

かごから味噌を盗んだり、乾物屋を騙して干物を盗んだり、ろくなことはしない。

この中に実は、与太郎さんもいたんです。与太郎さんは正直者なので盗んだりは

しなかったが、どこかから豆腐を調達してきた。

仲間に鰹節でだしを取るように言われた与太郎さんだが、出し汁の中で褌を洗う始末。

だしがらをさしだして怒られた与太郎さんは、持ってきた豆腐を釜の中に入れたまま

忘れてしまう。

一晩中、酒盛りをした連中、翌日起きて、早速迎え酒というやつ。なにかつまみはてえと

与太郎さん、思い出したのか釜の中から豆腐を出した。

夏のさなか、だしをとったあとの釜の中で一晩過ごした豆腐。すっかり腐っている。

臭気ままならないという状態でしてね、すっぱそうな豆腐の出来上がりとなった。

これを、いけすかない若旦那に食べさせてね、その姿をつまみに一杯やろうと企てた

……ここからが「酢豆腐」の始まりとあいなりますようで。

「酢豆腐」はね、上方落語では「ちりとてちん」といいます。

「寄合酒」と「酢豆腐」、実はこんな繋がりがあったなんてことは、ここだけの話に

しましょうね。