「落語ネタの不思議なお話………ざる屋」

売り歩いていると、声がかかった。大店でして、旦那が株の投機かをやっていて、
「上がる」という言葉に目が無い。いわゆる「げんかつぎ」でしてね。
「下がる」なんて言葉は大嫌いという。
このざる屋の商人の名前が「上田 登」てんだから、旦那さんえらくきにいってね、
御祝儀なんぞをだしてくれる。その上、両親の出身地が上野に登戸でときたから。うれしく
なって、また御祝儀ときた。
この「げんかつぎ」をする人というのは落語の中にもでてきますよ。
上方落語にも「けんげしゃ茶屋」という「死(し)」という言葉を嫌がる旦那が出てきますし、
「猿後家」という噺にも、自分が猿に似ているのを気にして、「さる」という言葉を聞くと、
人を冷遇するという人物が出てくる。
江戸落語にも、「ざる屋」の他に、「かつぎ屋」という噺があって、おそらくは、ここからが
勝手な推量ですが、同一人物ではないかと思います。
「かつぎ屋」のほうは、ざるではなくて、お正月の祝いものの御札の商人でして、この商人
が、げんのいいことを言っては御祝儀をもらうという。この辺が共通しておりましてね。
この旦那さんの名前が「五平」ということから、「五平かつぎ」という言葉ができたという
ことですが……・・ね。
この五平さんの幼なじみに「葬儀屋さん」がいたというのだから、世の中面白いもので。
「野ざらし」や「骨釣り」なども、「げんをかついで」、回向をしておりますね。
心理のあやなのでしょうか。