
〜がんばの性別〜
あれは大学1年の時、
女友達と一緒にスーパーへ買い物へ行った時のこと。
そのスーパーの立体駐車場に割と恐怖を感じていた
免許取り立て・おまけにミッション車のがんばくんは、
いつものように道路をはさんで向かい側の
第2駐車場に車を止めて買い物をしていた。
買い物も終わって車にもどろうとした時、
いつもならすぐ近くの信号まで歩くところを
すでに歩行者用の信号も点滅してるし、
赤信号で止まっている車の列がまだ動きそうにもないし、
車の間をぬって渡ってしまおうと思ってしまったのである。
後になって考えれば、
別に特に急ぐ用事もないお気楽な学生身分だし、
そんなこと考えなければ...と思うのだが。
動く車がいないことを確認したボクと女友達は、
スタタタタ...と急いで車の間を通り抜けようとした。
が、その時悲劇の幕が開いたのである。
あと少しで向こうの歩道という所まで来て、
視界の左の端っこに何かが飛び込んできたのは確認できた。
しかし、もともと反射神経に恵まれていないことに加えて
インチキをした時のスタタタタ...は意外に速かったらしく
Uターンすることもできず、次の瞬間
『ドン!!』
と、ものすごい衝撃を受けて5〜6m吹っ飛んだ...
と思ったが、実際には今走り抜けてきた車の間に横たわっていたから
せいぜい1mくらいかも知れない。
とにかく一瞬の出来事で、何が起こったかわからなかったが、
ジーンズのひざ小僧のところが破けて血が流れ、
右腕のひじにズキンと痛みを感じた。
はっと我に返り、このままここにいたのでは
わけのわからない何かに吹っ飛ばされた上に
信号が変わって動き出した車にひき殺されては目も当てられない
と妙に冷静に考えて
痛い足を引きずりながら何とか歩道にたどり着いた。
縁石に座って一息ついていると
どうやらバイクに乗ってボクを吹っ飛ばしたと思われる少年が
血相を変えて走ってきた。
何やらあやまっていたようだが、
冷静な割に肝心なところでパニくってたボクは
はぁ、とか、いえ、とかしか言ってなかった気がする。
パニック状態で途中のいきさつは定かではないが、
しばらく後、ボクは外科にいた。
確かその頃には双方の親も駆けつけてきていて、
痛みをこらえるボクを尻目に
「高校には内緒でバイクに乗っていたんです。
学校にバレると困るんで警察には...。」
「いえ、事故にあったのは確かなんですから、
警察には連絡させていただきます。」
などと会話が聞こえてきた。
(高校のことより、この破れたジーンズと血と痛みだわ!)
などと思いながら他人のような顔をしていたが、
看護婦さんに呼ばれたので診察室に入った。
「バイクにはねられたんです。」
と言うと、先生は、
「あら〜、ぱっくり切れてますねぇ、縫わなきゃ。」
と言って、念のため足のレントゲンを撮ってくれた。
そのまま傷口を縫う作業に突入しそうな雰囲気を察知して、
「あの〜、ひじも痛いんです。」
と言うと、先生は、
「あら〜、そうなの?じゃ、腕もレントゲン撮らなきゃね〜」
と言いながらおもむろにレントゲンの準備をし始めた。
「はい〜、トレーナーの腕まくってくださいね〜」
と言うので腕まくりして台の上に腕を乗せると、
その時突然その先生がビックリした顔でボクの顔をのぞき込んだ。
そして信じられない言葉を吐いた。
「!? はっ!? !? あんた男じゃないかっ!!」
ボクの方が「!? はっ!? !?」である。
「そうですけど...」とボソッと言うと、
「今の今まで女だと思ってた...なんだ...」と絶句した。
絶句されても仕方がない、男なのは男なのである。
「なんなら証拠見せましょうか?」と言ってみたり
「オレのどこが女なんじゃい?」とドスをきかせる機転もきかず
あっけにとられてるボクに向かって先生は、
「男なら男って早く言ってくんなきゃ...ブツブツ」
などとひとりで文句を言っている。
(あのさぁ、早く言うも遅く言うもないでしょ?
あんたボクの足見たでしょ?どう見たって男の足でしょうが!
それにお宅じゃ診察する前に性別も確認しないのかね?)
などと心の中で叫んでみても通じるはずもなく、
足をザクザクと縫われて
後味の悪さを残して診察は終わった。
ボクの人生の中では、女に間違われるというシーンが割とよくある。
まだ実家にいたある日、電話が鳴ったので出た。
「はい、○○です。」と言うと、
「あ...どうも...いつも姉がお世話になっております」
と電話の主。
はて、お世話した憶えもないし、
その知らない人の妹なんてもっと知らないんだけど...
などと思いながら、
「は?何のことでしょう?」と聞くと。
「あ、なんだ、あんたかね」と聞き慣れた声。
何てことはない、おばさんがボクのことをおばあちゃんと間違えたのである。
こんなこともあった。
就職してひとり暮らしを始めたボクは、
ある時、車がついに壊れたということで中古車を買った。
なにやら手続き上で住民票がいるということで、
初めて自分で自分の住民票をもらいに役場へ行った。
実は引っ越しが入社ギリギリになったために、
自分で住民登録に行けず、親に代わりに行ってもらっていたため、
初めての役場、初めての市民課であった。
名前を呼ばれて住民票を受け取り、
(ふむふむ、これがボクの住民票かぁ...)などと
ある種の感慨に浸っていると、
とんでもない文字が目に飛び込んできた
「氏名 ○○○○ 性別 女」
☆●▲◇□○!!
てな感じである。
しかし、何度見ても「女」と書いてある。
(ボクって戸籍上はホントは女なのかも...)という考えや、
「今まで黙ってたけど、実はお前は女なんだよ」と涙ながらに語る
母親の思いつめた顔、
住民登録を親が代わりに行くことになったいきさつやら何やらが
グルグルと頭の中を駆けめぐった。
思わぬところで人生の岐路に立たされ、
どうしていいのかわからなくなった。
しかし、今がその時と自分を奮い立たせ、
思い切って窓口に引き返してお姉さんに聞いてみた。
「あの...これ...性別が女になってるんですけど...」
とおそるおそる聞いてみると、お姉さんは目をまん丸にして、
「あ......男の...方です...よね?」と聞いてきた。
「はい...その...つもりなんですけど...」と言うと、
「ちょ、ちょっと待ってください」と言い残して
奥の方に引っ込んでしまったのである。
後で考えれば、単純な入力間違いなのだが、
その待ち時間の長かったこと。
(ボクのカラダに付いているアレは?)
(どうしてずっと隠してたんだろう。
もしかして何か深刻な出生の秘密が...?)
などとバカなことを考えたものである。
長々と、大変恐縮なのだが、こんなこともあった。
高校の音楽の授業の歌のテストの時。
確か「マイウェイ」か何かだった気がするが、
先生のピアノに合わせてひとりずつ歌を歌うというテストだった。
みんなで歌う時にはごまかしがきいても、
ひとりで歌うと何ともならない。
何てことはない、キーが合わないのである。
今ならカラオケに行ってもボタンをポンと押せば
簡単に自分のキーに合わせられるだろうが、
場所は音楽室、テストの場である。
もともと声が高く、声変わりの記憶もないボクにとって
「マイウェイ」の男子のパートは低すぎた。
結局、出てるか出てないかのような声で
必死になって歌っていると、先生は
「まじめに歌いなさい!点数なしにしますよ!!」
などと血も涙もないような言い方でどなりやがる。
こんなに必死になって歌ってるのに...
と、もう泣きそうである。
最後まで歌ってもどうしても声が出ない。
悩んだあげく
「低すぎて歌えません!」
と、涙ながらに訴えると、
「じゃあ、これで歌ってみて」
と、少しキーを上げてくれた。
(同じ楽譜を見ながら違うキーでピアノを弾くなんてすごい)
などと感心しながら歌ってみるが、やっぱり出ない。
今度は女子の低いパートにしてくれたが
やっぱり出ない。
「これね、もう女子の高い方よ!」
とイヤミを言われながら、やっとのことで歌い終わったが、
かなりショックだった。
そんながんばくんも、今ではフツウに(?)男をやってる。
声もだんだん低くなってきたし、
さすがに女に間違われることもなくなった。
芝居で女装する機会が多いのはちょっと気にかかるが、
女装しなければ女に見えないという証拠でもある。
だんだん男として成長してきた過程を見たいなら、
『ぎゃらり〜がんば』のページを参照していただきたい。
りっぱな好青年に変わっていく様が
手に取るようにわかるはず(笑)
