〜給食のおばさんになった1週間〜
  

「少年王者舘」

たぶん聞いたことがある人も多いと思う。
名古屋を拠点にして、東京や大阪でも公演をする、
天野天街さんが率いる劇団である。

その「少年王者舘」の2003年本公演
「それいゆ」
名古屋公演が...終わった。
まさに、
終わった!という感じである。

そもそも、ボクなんかが王者舘に関わってしまって
いることが
不思議と言えば不思議なのだが、
ひょんなことから中に入り込んでしまっているのは
まぎれもない事実なのだからしょうがない。

2002年の本公演
「香ル港」に、
「空中分解の役者兼演出」の蓮子正和(コロ助)が出演したのが
1年前。
その手伝いに行ったのがきっかけ。

実は、ボクは王者舘の芝居がイマイチ好きではなかった。
はっきり言うと、
キライだった。
コロ助が出るということで、
何本かビデオを見させられたが、
あの独特の世界が苦手で、
どうしても最後まで見る事ができなかった。
おい!コロ助!いいのか!?
と、何度も思った。

そして、
天街さんの本が遅い!本番直前に書き直しが入る!
と、役者の立場でのツラさをさんざん聞かされていたボクは、
「いっちょ天街にどしゃべったるわ!」
などといきまいて、ビデオ撮影するという名目で
仕込み中の劇場に
なぐりこみに出かけた。

でも、そこで目にしたのは、
ギリギリにあがって来た本を
必死でおぼえている役者の姿。
必死でそれに演出をつけている天街さんの
真剣な姿だった。
激しい動きと、直前に来た意味不明なセリフ。
役者たちのタイヘンさが自分の事のように
ビシビシと伝わってきた。

もちろん、ただのお客さんとして公演を見に出かけたのならば、
二度と関わりを持たなかったかもしれない。
でも、中に入ってしまうと、外からは見ることのできない、
外にいては感じることのできない何かを感じてしまう。

公演初日、
あと数時間で本番が始まるというのに、
こんな状態ではたしてうまくいくのだろうかと、
マジで心配してしまった。

でも、本番を見て、冗談じゃなく
ブッたまげた
さっきまでと違うじゃん!
いつの間にここまで完成させたの?...と。
あの時の感動は忘れない。
そして、
涙が出た
その時からボクにとっての王者舘は、
それまでとはまったく違う存在になった。

そして1年後。
ボクは芝居を見にでかけた。
なんと
「ガンバの冒険」をやるというではないか。
なんでボク抜きでできるの?
おかしいじゃん!
などとわけのわからないことを思いながら、
割と楽しみにして出かけた。
そこで目にしたのが
「それいゆ」のチラシ。
(だったと思うが、違う芝居だったかも知れない)

裏を見て正直「ギョッ!」と思った。
協力の欄に「がんば」と書いてある。
まったく無関係ではないし、若干嬉しかったりもしたが、
何の同意も待たず、勝手に協力させるのはどうかと思ったりした。
おそらくコロ助の同意のもとに書かれたのだろうが、
定かではない。

それからがタイヘンだった。
「協力 がんば」とあるからには
何かの役に立たなければならないと思い悩む日々が続いた。
稽古場に差し入れを持って行ったりした。
でも、それでは
「協力 がんば」にはならない。
灼熱地獄のような稽古場で、
役者をうちわであおいだりした。
それでもまだ足りない。

そんなこんなで小屋入りの日がやってきてしまった。
とにかく行けば何か手伝う事があるだろう
と、行ってみて一番タイヘンそうに見えたのが制作の人たち。
ただでさえ制作の仕事でタイヘンそうなのに加えて、
40人近いメンバーの
食事の炊き出しまでしているのだ。
そこで
ピーン!ときた。
力仕事が苦手なボクにできるのはこれしかない!

その日からがんばくんは王者舘の給食のおばさんになった。
ふだん作ったことがない程の大量の食事を
一生懸命作った。
18合のゴハンも炊いた。
苦手だったおにぎりも、信じられないくらい上手くなった。
作ったことがなかった親子丼も作った。
大事な時に体調を崩してはいけないと思って
この世のものとは思えないほど汚かったまな板も漂白した。

稽古で疲れてる役者たちが、
おいしいおいしいと言って食べてくれるのを見て
涙が出そうなくらい嬉しかった。
がんばった自分よりも、いっぱいいっぱいの状況で
ボクに気をつかってくれる役者たちの方が
すばらしいと思った。

ただ単にゴハン作ってただけでしょ?
そんな大げさな
...と思われるかも知れないが、
ホントにタイヘンで、究極に疲れた1週間だった。
まだ自分で役者やってた方が楽だったかも知れない。

でも、その疲れも名古屋公演の打ち上げで一気にふっとんだ。
みんな
「ありがとう」を連発してくれた。
役者の中で、ひとりだけあまり話したことがない人がいた。
ちょっとコワいな〜と思っていたおにいさん。
そのおにいさんと思いがけず話す機会が持てた。
そのおにいさんに
「がんばちゃんの食事には愛がある。
みんなの疲れ具合で味付けとかも考えてくれてる。
ありがとう。」

と言われた時、
涙が出た
がんばってよかったと思った。
味付けに凝る余裕もない程必死だった。
でも、
落ち着く味にしたかった。
おにぎりをにぎる時はいつも
「がんばってね。がんばってね。」
と、祈りながらにぎった。

今回はみんなの役に立てた気がする。

そんなこんながあって、冒頭の
終わった!なのである。

今後もみんなの役に立ちたいと本当に思う。