先日、パリにソウル明知(ミョンチ)大学の学生がやってきました。ヨーロッパでは毎年夏に「囲碁コングレス」なるものが開催されるのですが、今年は初のロシア開催、彼らはサンクト・ペテルスブルグにおける二週間のコングレスを終え、ヨーロッパの囲碁事情視察にやってきた…というわけです。
明知大学といえば、世界初の「囲碁学科」を創設したことで知られています。それだけにというべきか、学生の棋力は素晴らしいもので、コングレスでも1−3位、6−8位を独占したとのこと。
さて、これは囲碁用語講座を適用するチャンス、と碁を打ちに行ってみました。
  .
など覚えた単語を並べて頑張ってみたところ(?)、皆さん異国の地で謎の韓国語をしゃべる人間にあって大変満足のご様子。うむ、これは悪くないと思ったところ…。
「○×!#★?」
「…sorry I don't understand.」

これなむ小市民。
   「カ・キリ・モロヨ! まだまだ道は遠い!」



悲しいビットマップイメージによるハングル囲碁用語講座』、第13回『定石と石の形、その2x動詞の変化』


《今回の単語》
1   若しくは
  
トゥ・マナダ
トゥ・ス・イッタ
打てる
2 テサ 大斜
3 サッカッ 陣笠
4   プチョマグ ツケオサエ
5   チョチョ・イウ ハネツギ
6  若しくは
ヌン・サテ
ミロ・ブチギ
ナダレ




○●
これまで12回、実に多くの単語に接してきたと共に、少なからぬ文章にも接し、熱心な読者の方は「なーるほど、韓国語とはこういう感じなんだな」という漠然とした観念がつかめてきたのではないか?と思います。

さて、文章に欠かせないものといえば、それを締めくくる役割を果たす用言ですが、ここまで、用言について、特にその変化などの詳細についてはそれこそ漠然とした説明しかしてきませんでしたので、「なぜに原型がこれこれこうなのに使われる段になるとこう変化するんだ??」と煙に巻かれてしまった方も多かったのではないでしょうか。今回は、石の形のうち、残った単語などを見ると同時に、用言について、その語幹の変化パターン…つまり文法用語で言うところの「語基」について触れてみたいと思います。やや込み入った話になる上、所謂「変格活用」が多いので頭が痛いところですが、我慢してお付き合いください。 まずは、例を見てみましょう。


 
チョタ…よい (形容詞)

パッタ…受ける (動詞)
I   .
「ペギ・チョッスニダ  白がいいです。」
 
「パンヌン・ス  受ける手」
II     ?
「イ・キョクァヌン・オヌッチョギ・チョウッカヨ?  このワカレは、どちらがいいですか?」
  ...
「ナリジャロ・パドゥミョン…  ケイマに受けると…」
III     .
「イ・ポソグン・フギ・チョアッタ  この布石は、黒がよかった。」
  .
「マヌモロ・パダヨ  コスミに受けます。」



何か気づかれたことはあるでしょうか。まずは、I、II、IIIと文章が三種類に分けられていること、そして、何といっても、赤で強調してある部分の共通性ですね(強引)。そうです、韓国語では、動詞の語幹には三種類に変化するのです。

「語幹が三種類に変化する?なんだそりゃ」とチンプンカンプンな方は、我らが日本語における「打たない、打ちます、打つ、打つとき、打てば、打とう」における変化を思い出していただければよいでしょう。
つまり、日本語同様、後にくる言葉に従って、語幹が変化していくのですが、これは文章に触れつつぼちぼち見ていくことにしましょう。


具体的にどのような変化が起きるのかといいますと…

I ←すなわち第一形は、
語幹に変化なし。一番楽です。
… …する…(動詞の現在連体形)
  …したいです
などなどを後に付ける場合に用いられます。
II 第二形では…
語幹が子音で終わっている場合』語幹にが付くが、逆に
語幹が母音で終わる場合は何も付かず、第一形と同じ。
… …するべき…(動詞の未来連体形)
… …すれば
などなどを後に付ける場合に用いられます。
III 第三形では
『多くの場合』、語幹にまたはが付きます。
 …しなければいけない
 …です
などなどを後に付ける場合に用いられます。



第三形においてどのようにが使い分けられるかといいますと、

『語幹の中にある最後の母音がまたはまたはの場合』はがつき、それ以外の場合はがつく』

という公式があるのです。

すなわち、今出てきた二つの用言を見てみると、

の場合、の前にある一番最後の母音は
一方においてはですから、

どちらも第三形にする場合は語幹にをつけ、それぞれ、 となるわけです。


なぜこの第三形についてこのようにやや詳しく述べるかといいますと、実はこの形を『』『』のようにそのまま使いますと、『』『』とをつける形に比べて打ち解けた感じ…「いいよ。」「受けるよ。」といったところでしょうか…になる、というわけで覚えておくと友達ができたときになかなか便利だからなのです(?)。さて、「それ以外」の場合、すなわち第三形でがつく用言を見てみますと…。



トゥダ…打つ(動詞)
*このように、語幹が母音で終わる動詞は第ニ形でもはつかず、
第一形=第二形になります。

オリョタ…難しい (形容詞)
*変格活用、第二形と第三形に注意です。
I   
「イロッケ・トゥゴシポヨ  こう打ちたいです。」
 .
「オリョチ・アナヨ  難しくないです」
II   .
「フギ・トゥ・マネ  黒が打てるね。」

*注  →「トゥ・マナダ 打てる」
   →「トゥ・ス・イッタ」という言葉も使えるようです。
 
「オリョウン・パドゥ  難しい碁」
III   .
「イロッケ・トゥオヤ・ヘヨ  こう打たなければいけません。」
 
「デサヌン・オリョウォヨ! 大斜は難しいです!」


…といった具合です。これ以外にも変格はわんさかあり、しかも、do-sein-êtreはどれも特殊な活用をすることからも分かるように重要な用言ほど変格が多いのです。くじけず進みましょう。

.
,   .
「サッカシネヨ  陣笠ですね。」
「アーニョ、プチョ・マヌン・チョソギニダ  いいえ、ツケオサエる定石です。」



「ツケオサエ」のような複合的な単語をここまで扱ってきませんでしたから、この機会に まとめて紹介することにしましょう。
「ツケる」という動詞は「プチダ」
「オサえる」は「マタ」
でしたね。これを複合すると、上に記したように 「プチョ・マタ」となります。
になっていますが、これは、「プチダ」の第三形が縮んだものです。
同じ原理で、「チョチダ ハネる」の第三形は 「チョチョ」、

「ッキウダ ワリコむ」の第三形は 「ッキウォ」となります。というわけで、複合語には第三形、とお経のように唱えればもう大丈夫。


ツケる
+  
ヒく
 
ツケ引く
*このまた「ミダ オす」のごとく、
が語幹の最後につく動詞は要注意です。というのは、この類の動詞は
 I II または III
といった具合に変化し、第ニ形でが落ちる場合があるからなのです。本などを読んでいると、

  「プチョ・ック・ス ツケヒイた手」
    「ミヌン・ゴシ・クソ オスのが急所」
(*普通、動詞の現在連体形であるは第一形につくのですが、
この変格動詞においてのみ第二形につく。あ゛ーなんでこうなんでしょうか)

といった例に出会って「なんじゃこの動詞は?」ということも間々あります。
ただし、同じ第二形でも
「ヌミョン のびれば」
の場合はが落ちないというのがややこしいところ。 

ツケる
+

ノビる
 
 
ツケノビる

ハネる
+

ノビる
 
 
ハネノビる

ハネる
+
ツぐ
 
ハネツぐ
*このもまた変格動詞、  
 I II III

と変化します。というわけで、例えば半コウを「つないでください」は第二形を使い…

. 「イウセヨ」

となります。
「ツギ」という名詞がという言葉だったことを思い出す方もいるかもしれません。

第三形の例も見ておきましょう。

    「ホグロ・イオッス・デ カケツイだ時」

ワリコむ
+
ツぐ
 
ワリツぐ

デる
+
切る
 
デギる
*さて、はどう変化するでしょうか?
「うーむ、第一形は語幹に変化なしでだろ、
第ニ形は…と、語幹が母音で終わる場合は第一形=第二形でやっぱり
第三形は、の語幹の最後の母音は
ということは、の場合は語幹にがつくんだったから、?」
というのは考えすぎで、最後の「ア」の音はくっついてしまい、これまたやはりとなります。
すなわち、この場合は第一形=第二形=第三形となるわけです。
同じような例に「ソダ 立つ」があります。

トぶ
+
ツケる
 
トビツケる


一応「定石と石の形」と銘打っていますから、定石についての話をしてこの回を締めることとしましょう。
定石といえば「ナダレ」を外す訳にはいきませんが、このナダレには色々な言い方があるのだそうです。

まずは 「ヌン・サテ (ヌン=雪、サテ=「沙汰」)」 。

これに「大きい」「小さい」をそれぞれつければ、
  「クン・ヌンサテ 大ナダレ」
  「チャグン・ヌンサテ 小ナダレ」という言葉が得られます。

ついでに内マガリは 「アンチョッコブリ」、外マガリは 「パッカッチョッコブリ
といいます。

この他にも、
「テ・プソリョ 大崩雪形(大ナダレ)」
「ソ・プソリョ 小崩雪形(小ナダレ)」

という漢語的表現もあるそうで、なかなか美しい響きです。

さてさて、これらの表現は実際のところ日本の「ナダレ」という言葉を訳したものであるわけですが、折角韓国の碁が世界一になったのだから、ここは一つ『韓国らしい』表現を用いようじゃないか!というアイデアが出るのも頷けるところ、 というわけで登場したのが
「ミロブチギ オシツケ」
という言葉。最近は「ミロブチギ、日本名『ヌンサテ(ナダレ)』」などと表記することもあるようです。

さて、それはさておきこの言葉が複合的な言葉であり、「オス」という動詞の第三形である…ということは、ここまで辛抱強く読んでこられた方々には簡単に理解できるでしょう。ちなみに私が持っている辞書を見てみたところこの「ミロブチギ」には「ごり押し、無理押し」なる訳がつけられていました。これはこれでなかなか感じの出た言葉といえるのではないでしょうか。

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