先日、競技人口2000人以上を誇る(?)フランス囲碁界に激震が走りました。発信源は、囲碁メーリングリスト上に流れたこのようなメッセージ。

「フランス語では、二目ポン抜いた形を、これまで『dos de tortue(亀の背中)』と訳して30年間以上なんの疑問も抱かずにきたが、どうやらこれは『carapace de tortue(亀の甲羅)』が正しいらしい!」

続けてこのような返事が他の人から寄せられました。

「そもそも訳語を作ったのがイム先生だからな。日本語の訳を間違えたんだろう。」

イム先生とは、囲碁がフランスに知られるようになった1960年終わり頃より、唯一の高段者としてフランス碁界に君臨し、この未開の地に「福音」を与え、多くの碁打ちを育てた、北朝鮮出身のイム・ユジョンさんのことです。

「ははーん、あれだな」

これを聞いてピンと来た方は、当講座の熱心な読者でいらっしゃいます。韓国語において、囲碁の「亀の甲」は、
 「コブ・ドゥ
といいますが、が「亀」でが「背中」の意。つまり「亀の背中」という言葉が当てられており、「甲羅」に関しては、「ッタチ」という言葉がまた別に存在するようなのです。イムさんは、当然母国の言葉をフランス語に訳したので「dos de tortue」という言葉が定着することになった…というのが真相なのではないか、と推察されます(韓国には「亀甲模様」というものがないのかもしれません)。

さて。それからしばらくたったある日、偶然「棋道」1966年2月号を読んでいた私の目に、とんでもない情報がとびこんできました。それは、前田陳爾九段の手になる「囲碁のことば 語経珠玉集」というコラムの中の、次のようなくだりです。


亀の子

それ鶴は千年、亀は万年の齢を寿ぎて四海波静かに吹く風は枝鳴らさず、碁の場合でも亀の子に抜けばまず負はないといっていいほどの瑞兆あふれる亀の子抜きだった。(…中略)黒12と抜いた姿が亀に似ているから亀の子と名づけられたことは申すに及ばずただどうして亀が亀の子でなければならないかということが少々不明であるが、亀抜きでは素っ気がなくてゴロも悪いから、調子をつけるために亀の子抜きと持ってきたと解してまずは当たらずとも遠からずだろう」

あれれれ?こりゃ困ったと思ったところ、時代さんが問題を解決してくださいました。なんでも辞書によれば、「亀の子」は「亀の甲」が変化した言葉であり、「亀の子だわし」のような用例もあるとのこと、要するに長年の発音慣習による前田九段の勘違いでした。おかげでフランス語に「bébé de tortue」という用語が現れる日がくることはなさそうです。めでたしめでたし。



悲しいビットマップイメージによるハングル囲碁用語講座』、第15回『ヨセ…に入る前の数字編』


《今回の単語》
1 ソン 一線
2   ックノ・チャ 切り取る
3 ヨソ 要石
4   クンゴル・ッペアッタ 根拠を奪う
5   ヌヌ・マンドゥ 目を作る
6 ハンパン 一局
7   ヌロジン・ペ ヨセコウ




○●
今回より、終盤、すなわちヨセ 「ックンネギ」に入ります。
となると、欠かせないのが数字。韓国語ではどのように数を数えるのでしょうか?
有難いことに、「一・二・三」は中国起源ですから、日本・韓国でもよく似た発音になります。つまり…

十一十二十三










シピ
シピ

二十三十四十五十六十七十八十九十
イシ

サシ
オシ



クシ

チョン
マン

というわけで、これはそれほど難しくありません。

十一 「シピ
十二 「シピ」
また
二十「イシ
三十「サ

などなどは当然ながら日本と同じシステム、『二十進法の名残』『ケルト風数え方の名残』などに悩まされることもありませんのでご安心を。

さて、「同じだ万歳」と喜ぶことができるのは韓国語学習のよいところですが、違いに目を向けて覚えるのに苦労するのもまた一興。 よくよく考えてみると日本語には「ヒィ・フウ・ミィ…」なる『和式』数え方がありますが、『韓式』も当然ながら実際存在するのです。しかも、これがなんと99まで数えられるという代物、なかなか手強い。

ハナ
ドゥ
セッ
ネッ
タソッ
ヨソッ

ヨド
アホ

二十三十四十五十六十七十八十九十
スム
ソルン
マフン
シュィン
イェスン
イルン
ヨドゥン
アフン


…かくして未知の言葉が並びます。二十から九十までの数詞は、二から九までのそれとなにか関係があるようでないようで、なんともミステリアス。こればかりは、「ハナ・ドゥル・セッ…」セッセと唱えて覚えるしかないかもしれません。
ちなみにこちらの場合も、「イレヴン、トゥエルヴ」だの「90=4×20+10」だのという謎の数え方はなく、


十一 「ヨ・ハナ」
二十六 「スム・ヨソッ」
九十九 「アフン・アホ


と順当なのが救いです。


この『韓式』と『漢式』の住み分けは、日本における『和式』『漢式』とはまったく違います。『韓式』の使用度合いが『和式』よりも大分高い感じでしょうか。具体的には、「韓国語における数え方」のページに僅かながら例を載せておきましたので、参照してください。

さて、ここまでにも色々な数字を含めた単語が登場してきました。

漢式   「イダン・チョチ 二段バネ」
  「サ 三々」
「サヨンソ 三連星」
「サ 三目の地(中手)」
「メファ・ユック 花六」
「サペ 三コウ」
「イソン 一線」
韓式 「ハンカン・ットゥイ 一間トビ」
「トゥカン・ポ 二間ビラキ」
「セカン・ヒョ 三間バサミ」
「トゥジョ・モリ 二目の頭」
   「ソジョメ・チュ 三目の真ん中」

…といった具合(一部未出の単語もありますがまあ気にしない)、ここで折角ですから、覚えにくい韓国固有語の方を見てみることにしましょう。

上の「二目の頭」の例にあるように、

「ジョム 子(目)」
につく場合は『韓式』を使うことになりますが、ハナ・ドゥル・セッ・ネッの四つは連体形になると変化するので注意です。つまり…
または
または

となります。といっても、実際に見なければなかなかピンときませんから、まずは具体例を見てみることにしましょう。



一子
一子を切り取る。 
  .
ジョム・ックノ・チャ
二子
二子にして捨てよ。
  .
トゥジョムロ・キウォ・ポリョラ
三子
(または)
三子の真ん中が急所
  
チョメ・チュイ・ク
四子
(または)
この四子は要石です。
  .
イ・ノチョム・ヨソギニダ
五子
五子置いて打つ。
  .
タソッチョム・ノゴ・トゥダ
六子
.
六子を取る。
 .
ヨソッチョム・チャ
七子
七子の根拠を奪う。
  .
チョメ・クンゴル・ッペアッタ
八子
 
八子は死んでいます。
  .
ヨドチョムン・チュゴイッソヨ
九子
九子の置き碁
 
アホチョム・チョッパドゥ

このほかにも、



二眼を作る    「トゥ・ヌヌ・マンドゥダ」 
一局 「ハンパン」(は「板」でしたが、ここでは日本語で言うところの「局」にあたり、勝負を数える単位になります) 
 
四隅を占める    「ネ・グゥイル・チャジハダ」
一手ヨセコウ    「ハン・ス・ヌロジン・ペ」
六目中手十二手   「ユックウン・ヨドゥ・ス」


などなど、囲碁用語は韓国固有の数え方に溢れています。

さてさて、「地」を数えるには『漢式』『韓式』どちらを使うのでしょうか??

それはまた次回。

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