茂木:不動産鑑定士試験は、近いうちに新試験制度に移行しますが、その背景にはさまざまな思惑があると思われます。
新試験導入後、鑑定士業界はどのように変化すると思われますか?
宮本:う〜ん、これは二次試験の予測より難しいですねぇ(笑)。新試験導入後の変化に関する予測、ではなく、今後の業界のあり方に関する願望、希望というかたちで申し上げたいと思います。試験そのものの負担を減らして門戸を拡げ、そのかわり職業人生のなかで競争してもらうというのが国交省の基本的なスタンスであり、これには私も賛成です。
さまざまなバックグラウンドをもった人が鑑定業界にはいることにより、業界全体の活性化につながればいいなと思いますね。新試験も従来の科目に建築学や統計学といった理系科目を選択科目として導入しようとする案もあるようですし、実際そうなれば建築士さんなどもこの業界に入ってこられる道がひろがります。建物を知らない鑑定士も多いので、いい刺激になると思います。
そもそも鑑定評価は総合科学です。従来の試験科目である民法、経済学、会計学、行政法規だけで必要充分なのではなく、これからは金融工学、都市社会学、経済心理学なども精度の高い鑑定評価では必須となるでしょう。とにかく広い視野をもちつつ、他者にこれだけは絶対負けないという専門性を持った鑑定士だけが生き残るのではないでしょうか。


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茂木:最後に、経済学の杜を閲覧している受験生の方々へ応援メッセージをお願いします。
宮本:すべてを鵜呑みにするのではなく、常に疑問と批判精神を持って勉強して頂きたい。鑑定理論で基準をお経よろしく丸暗記する人がいますけど、基準にだって不適切な箇所、時代に合わなくなった箇所は多々あります。代表例は、借地借家の価格・賃料のところですね。あれはバブル経済崩壊前の地価、家賃高騰期のみに対応する評価手法です。
しかし、今回の基準改定でも手つかずの状態で残ってしまった。残念です。基準の不適切なところをうまくアレンジして鑑定評価できる、つまりしっかりした基礎の上に応用力のある鑑定士を目指していただきたいですね。
もうひとつ、試験科目である行政法規を例にあげて説明しましょうか。都市計画法にしても建築基準法にしても日本の土地利用規制は甘すぎます。この甘さが不動産市場の歪さ、決して恵まれているとは思えない生活環境を生んでいるといえますね。用途規制はアメリカのゾーニング制度と、開発許可制度はイギリスのそれと、地区計画制度はドイツのFプラン・Bプランと比較すれば、日本の土地法制度の特異性がよく理解できるでしょう。いまはそれどころじゃなくて試験科目として勉強するのが精一杯だと思われるかもしれません。しかし、皆さんは試験合格ではなく、質の高い鑑定士になって社会貢献することに目標をおくべきです。いまから視野をひろげて多角的に勉強すべきでしょう。
まぁ、このように申し上げると、暖かい応援メッセージというよりも、なんと申しますか手厳しい忠告に聞こえるかもしれませんね(笑)。
いずれにせよ、無数にある人生の選択肢のなかで、不動産鑑定士という職業を選んだことについては、私自身正しい選択だったと実感しております。皆さんも初心を忘れずに、そして最後まであきらめずに頑張ってください。
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