コラム 「言いたい放題」 NO.0314

読書日記
  6月 

2005.6.22      INDEX


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 ◆<読書日記>◆ 2005年6月
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 ★机上の本★
「中国の歴史 中国小学校歴史教科書」(小島監修「明石書店」1800円+税)
 世界の教科書シリーズ。

 訳者の大沼正博氏が「あとがき」で、こう述べている。 
 「靖国神社の問題や広島や長崎の被爆のことを考えてみれば、自分自身の過去の遭遇や身内についての思いなど、日本人がいつまでたっても忘却することができないのは明らかであるのに、一方では、中国や韓国、朝鮮、アジアにむかって、いつまでも過去のことを持ち出すなと反発して平然としている」
 同感である。
 中国について、春秋戦国・三国史などよく知るが、意外に近現代史にたいする理解は薄い。というより、日本の右翼皇国史観でみているものが多い。
 本書によって、中国の子どもたちがどのように自国の歴史を学んでいるかを知ることは、これからの日中友好には欠かせない知識である。
 教師に必読の書として推薦したい。なお、本書を刊行した明石書店の仕事ぶりに敬意を表するものである。 


★車上の本★
「学級の社会学」(柳治男「講談社」1500円+税)

 学校に学級があるのは自明のこと。そのことに疑問を抱いた著者が「中世の学校には学級がなかったのに」と、学級制の起源を問いながら学校にとっての学級制、子どもたちにとっての学級制を問おうとする野心的な著書である。考察に際して「現代を特徴付ける組織や営業形態とも比較しながら検討」している。「学級を疑う」「クラスの誕生と分業される教師」「変わる学級制」といった章が関心をひきつける。「社会学」からのアプローチだから、読みやすい本ではない。


★枕上の本★
「電車男」(中野独人「新潮社」1300円+税)

 インターネットの掲示板をそのまま本にした型破りの小説。慣れないので、読みにくいこと。
 昔、文体について学んだとき、先生が「スタイルとは個々の作品の多様性のなかに反復されるところの、単一性である」と言われたことを思い出した。この文章を読んで「なるほど」と納得した。わたしにはとてもついていけないが、当世のオタクたちはこういう文体でないと読めないのかも。
 話のすじは他愛もないが、メールによるヘルプの呼びかけ、それに応える支援・助言や励ましなど、インターネット上にくりひろげられるヒューマンな交わり、これからの「社会」の一つのありようを示している。


★厠上の本★
「野ぶた。をプロデュース」(白岩玄「河出書房新社」1000円+税)

 ある高校。転校生がやってきた。ダサいやつ。あだ名は野ぶた。いじめられっ子だった。みるにみかねて義侠心からというよりひょんなことからこの野ぶたを学級の人気者にプロデュース。見事成功。だが、そのおれが、自己のプロデュースにつまずく。
 なかなかおもしろい作品。それぞれがキャラクターを演じながら学級集団に位置づこうとしている近年の高校生の生活が余すことなく、描き出されている。
 

 ★先月の推薦書/今月の寄贈誌より、この一冊★

「未来をひらく歴史 東アジア3国の近現代史」(日本・中国・韓国=共同
編集「高文研」1,600円+税)

 歴史認識をめぐり対立をつづける日本・中国・韓国に「共通の教科書」をつくることで「開かれた歴史認識」を共有しようの方針によって、3国の研究者・教師らが3年間、10回以上の国際会議を重ねて作成した教科書。近現代史の入門書でもある。「史上初の先駆的労作」だとあるが、その名にふさわしい著作で、広く勧めるものである。
 中国・韓国の反日感情のよってきたる歴史的経過も理解できるし、今後の日本はいかにあるべきかも、見通すこともできる。
 歴史を学んだものは後ろ向きに歩いても穴に落ちることはないという。過去の正しい認識こそが、明日の行く道を照らすことになる。
 この書を読まずに現代を語ることはできない。教師必読の書である。同時に、生徒・保護者にも勧め、授業や読書会でもとりあげたい。


 ★今月のビデオ 「ピエロの赤い鼻」フランス映画★
 
 ドイツ占領下のフランスが舞台。ナチス・ドイツを題材とする映画はいまなお後をたたず、その意味では戦争はまだ終わってはいない。この映画のほかにもドイツ占領下のフランスを描いた「トリコロールに燃えて」イギリス映画が話題を呼んでいる。
 「ピエロの赤い鼻」は、捕虜銃殺命令に敢然とたちむかうドイツ軍人を描いている。敵性のなかに見た、命を賭した笑いのヒューマニズムに感動したフランス人教師が、終戦後、その遺髪を継いでピエロを演ずる。深い思想性に支えられた秀作である。