☆今月のイチオシ!☆(2月号分)
今月からイチオシ!の受付担当になりました。横井です。私自身、投票することによって皆さんの作品をじっくり読むことになり、一度も顔を合わせたことのない方を自分なりに想像して楽しんでいます。(ちょっとアブナイかも。)では皆さん、今後ともイチオシ!への投票をよろしくお願いします! |
|
古谷空色
○オレンジの明りが遠くまで続きまっすぐな人はまっすぐにさびしい
※夜の高速道路の、オレンジのライトが等間隔にどこまでも続いている光景というのは、確かにとても淋しいんだけど、そこに不思議な懐かしさがあって、二つが合わさって、切なくなる。その切なさが、「まっすぐな人」を見ている作者の感じでもあるのだろう。「まっすぐな人は、まっすぐだから、さびしくない」なんてことは、ない。「人」なんだから、やっぱりさびしい。ただ、そのさびしさがまっすぐなだけだ。それは、まっすぐでないさびしさ(?)より、まっすぐであるがゆえに、いっそうさびしいとも言えるし、逆に、一点灯のともるような暖かみみたいなものがあるともいえる。その二つが合わさって、切ないわけだ。円を描いて自己循環しない、どこまでもまっすぐ伸びてゆくものとしての、さびしさ。余計なひだひだのないまっすぐな文体が、それを美しく受けとめている。(原浩輝)
※原さんの批評を読んで「オレンジの明り」が高速道路のライトなのかあ〜なんて気づいた私です。私は冬の夜、住宅街の家々の明かりを感じながら家路に向かう主人公を思っていたのです。「まっすぐな人はまっすぐにさびしい」この気持ちは自分に対して掛けた声。そんな風に思いました。核になる部分が決して揺れはしないけれど、押し付けがましくない歌ですね。(横井紀世江)
江國凛
○雨を飲み干してすずしき天空に王女みたいなかなしみひとつ
※「すずしき天空」という凛とした情景に続いて「王女みたいな」といういとけない口語がくるアンバランスに惹かれました。少女趣味と言ってしまうのは簡単だけれど、お話の中の貴人に一度もアイデンティファイしたことのない人は、いないはず。「かくある」状態に「かくあってほしい」状態を掛け合わせてゆけることが言葉の特権であると考えます。(佐藤弓生)
江草義勝
○一本の青き茎ごと揺れているコスモスの花冷えゆく地球
※冷えるという現象は具体的イメージ化がしがたいもの。それをミクロとマクロの視点を同時に示すことでうまれるイメージの不可能とシンクロして感覚を焦点においた心地よい歌にしあがっていると思う。とってもすてき。(ゆきあやね)
白糸雅樹
○怪物と化すまでかたく抱きあう 星が地上に次々降りる
※スケールの大きい愛の歌として読んだ。「今、そばにいてる人とこれぐらいの覚悟があって、いっしょになった?」と尋ねられたような気分になった。(中野博子)
本田瑞穂
○シーソーの片方うえをむいたまま言わないでいた泣かないでいた
※ひさびさに短歌に気持ちが釘付けになってしまった一首。誰もいなくなったシーソーを見ているはずの作者が、いつのまにかシーソーの片方側になって、宙に浮いたまま取り残されてしまっているのが、まったく違和感なく心に入ってきて、切なかったです。「うえをむいたまま」なかなか言えないと思います。(三好のぶ子)
佐藤弓生
○みっしりと寄りあう海の生きものがみんなちがってうれしい図鑑
※いつだったか、弓生さんの歌の核に堤喩があればいいのになぁ・・・、とかなんとか考えた事がありました。講釈たれるのは気が進まないが、どうも垂れやすいタイプゆえ、記せば、堤喩は類を種で種を類で単数を複数で複数を単数で表現する喩であり、換喩が現実の隣接関係に基くのに対して、意味の外延と内包の関係に基き、言えども言えども言い尽くせない時に、効果を発揮する喩なのですね。詩、歌、句の表現者にとっては、だから、なにより乙なレトリックであると僕は考えています。意味の外延と内包が、この喩によって、無限的夢模様を描く可能性を持ちます、からで。そんなこと、僕よりもっと賢いが僕よりすこしユーモアが足りないかな?の、弓生さんはとっくの昔にご存知でしょうが、『隈々(くまぐま)までいいつくすものにはあらず』が詩歌の本領にあって、その誠実をとことん指示分節することによって果たそうとする、それ自体は立派な弓生さんの意志が、往々にして読み手を惚れ惚れと幸せにしてくれなかったりするもので、調べといい品格といい申し分ない方なのにと、残念に思っておりました。うーん、ちょっと気取って記しているかな。手前勝手な読者にこの一年、ていねいに応接して戴いた感謝の念が邪魔するらしいや、云々。で、提出歌、きっと「かばん」会員中、一等図鑑好きであろう、弓生さんの心根がまことに素直に表出されていて、思わずニコニコしてしまったわけです。図鑑であることは最後に知らされますが、眩くなってリフレーン、五七五七の外延(←内包)と最後の七の内包(←外延)が照応しあって、美しい層をとっかえっこしあっている、と言ってもいいんじゃないでしょうか?名指すことがそのまま歌になり、堤喩のSF世界となり、酌めども尽きない弓生さんの真情の響きともなって、未知は色々、そそらそらそら、嬉しい来迎図鑑もありますように。(佐藤榮市) |
|
<menu>
----- top . ka-ba-n . tanka . info . bbs .link -----
|