特別作品
春宵一刻
       植松大雄

沢庵をきざめば空に桃色の春うっすらとのぞいていたり

中国の壺をたたけば花の下小さな竜が燈りをともす

新しい手話おぼえたらまっすぐに人魚の泳ぐラウンジバーに

よかったね 八万年の彼方からお前の眼に落ちた星たち

月の石耳に当てればさらさらと銀河の沢のせせらぎの音

空を飛ぶ竜の背中にねそべれば月のバターはとろけるばかり

バスタブを出れば私と溶けあえるものなど何も何処にもないと

バビロンへ何マイルだろう 傾いたサーチライトの道標から

真ん中の卵の黄身を思いつつ白いシーツにくるまれ眠る

直列の惑星ほどける春の朝オムレツ一つ空【くう】に生まれる

かまどから出したばかりのライ麦のパンの熱もて告げるべきこと

逢いに行く 直行便のチケットのするどい角を指ではじいて

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