圏外からのひとこと出張所(ライブドア編)


2005年09月16日

松下幸之助的線形倫理とホリエモン的非線形倫理 -- (本家記事へ)

「真面目な人がたくさん稼ぐのがいい社会」という倫理観が、何を前提しているのか考えてみる。まず、当然のこととして、真面目な人は社会への貢献度が高く、不真面目な人は低いという前提がある。しかし、前提とされていることはそれだけではない。

  • 真面目さ不真面目さが測定可能である(ある人が真面目であるか不真面目であるか社会的合意が可能)
  • 真面目さ不真面目さは正規分布している(超真面目な人も超不真面目な人も少なく中間が一番多い)
  • ある人の真面目さの程度は連続的に変化する

そして、高度成長経済において付加価値を生む為に必要とされる能力は真面目さと相関関係にある。従って、上記三点の特性が、能力についても言えることが暗黙のうちに合意されている。

  • 能力は測定可能である(ある人の能力の程度について社会的合意が可能)
  • 能力は正規分布している(超真面目な人も超不真面目な人も少なく中間が一番多い)
  • ある人の能力は連続的に変化する

つまり、「能力がある人がたくさん稼ぐのがいい社会」という合意は「真面目な人がたくさん稼ぐのがいい社会」という倫理を元にしている。あるいは、前者は後者の代替品、近似値として許容されている。

「真面目な人がたくさん稼ぐのがいい社会」という倫理感が、どの程度、人間の本性に合致しているかは私にはよくわからないが、これが許容され推奨されてきたのは、経済システムと整合性があるからだろう。つまり、その倫理感に従って人が動くと社会全体のパフォーマンスを向上するということである。それは連続性に依存している。

ネットを代表例とする新しい経済において、これらの前提が根本的に壊れている。例えば、ネットにおける「能力」を、アクセス数を稼ぐ能力と定義すると、前提が次のように完全に逆転しているように思われる。

  • 能力は事前には測定できない(ある人の能力の程度について社会的合意が困難)
  • 能力は非連続的に分布している(極端にアクセスを集める人と中間の人の間に連続性がない)
  • ある人の能力は非連続的に変化する(ちょっとしたきっかけで突然人気ページを作る人がいる)

つまり、ネット経済における「能力」は、予測や測定が困難で、特定の人に極端に偏在し、突発的に変化する。

倫理観が変化して新しい価値判断が導入されても、その価値観が連続性を持ったものであれば、倫理と経済のインターフェースもゆるやかに移行していくことができる。松下幸之助というロールモデルは、「真面目さ」と「創意工夫」という二点において模範とされ、このインターフェースのゆるやかな移行に貢献したと思う。

高度成長経済、規格大量生産において要求される「創意工夫」とは、現場レベルの小さな改善の積み重ねであって、「真面目さ」と似た連続性を持っている。よって、このロールモデルの元で、「真面目さ」から徐々に「創意工夫」に重点を置いていくような、連続的な移行が容易である。あるいは、「創意工夫」の評価軸を巧妙に「真面目さ」の評価軸と連動させて、あたかも「真面目さ」という価値を残したまま、実態として「創意工夫」に移行することも可能である。

しかし、ホリエモンというロールモデルとそれが象徴する価値観へと連続的に移行することは難しい。

それは、ホリエモンが不真面目だからではなく、松下幸之助とホリエモンの距離があるからでもなく、ホリエモンが象徴する価値に連続性が無いからである。

  • ホリエモン度は事前には測定できない(ある人のホリエモン度について社会的合意が困難)
  • ホリエモン度は非連続的に分布している(極端にホリエモンな人とそうでない普通の人の間に連続性がない)
  • ある人のホリエモン度は非連続的に変化する(ちょっとしたきっかけでホリエモンになってしまう人がいる)

「能力主義」が奇妙な非現実感の中で実施される例が多いのは、ホリエモン度のような価値判断を、連続性を前提として扱おうとしているからではないだろうか。

つまり、連続性を前提とした倫理で、いかに人々の尻をひっぱたたいても、社会全体のホリエモン度が向上することはない。社会全体の付加価値創造能力が向上することはない。倫理によって経済がドライブできるのは、両者に線形の相関関係がある場合のみである。

市場は倫理を経済に合わせて調整する機能も果たしてきた。松下幸之助が大金持ちになることで、人々は自分の進むべき方向を知った。しかし、ホリエモンが大金持ちになることで、人々は自分の進むべき方向を完全に見失っている。今や、市場が倫理を微調整して、時代に適合させていくことはない。

明示的に倫理を非線形経済に適合させる必要がある。明示的に、以下のような倫理、非線形倫理を築きあげていく必要がある。

  • 自分や他人の突発的な能力変化を促すために、全員が人と違うことをするべきである
  • 能力は不安定で希少なものであり、これを尊厳のリソースとしてはいけない
  • 無駄 is better, 遊び is best
  • 嫉妬は極悪(嫉妬は線形倫理では能力向上を促す面もあるので中立的とされているが、非線形経済ではひたすら破壊的)
  • 自分の食いぶちを自分で稼ぐな
  • (以下考え中)
>> 次の記事 ( 英・インデペンデント:小泉首相の日本株式会社への猛攻撃でリベラルがあわてる)

リンクは誰にも妨げられないあなたの権利です
ウェディング問題を考える会

このサイトは、圏外からのひとことからにライブドア関連する記事を抜粋したサイトです。


書いている人: essa



20060123_p01.html

野口英昭氏自殺記事の報道内容のバラツキ

20060127_p01.html

ライブドアが普通に技術系であることについて

20060126_p02.html

ライブドアが意外と技術系っぽいことについて

20060206_p01.html

ボケとツッコミとブロゴスフィア

20060202_p01.html

(アンチ小泉+野口氏自殺説)×3=?

20060125_p01.html

銀行の粉飾は適法でホリエモンの粉飾は違法?

20060127_p02.html

「日本の経営者は怠けてる」と外国メディアが見ている

20060125_p03.html

ビッグニュースがたくさん

20060125_p02.html

民放の根幹を揺るがす、ある“深刻な”事態(2)〜ネットに軸足を移し始めた巨大広告主たち - nikkeibp.jp - テレビは今、何をすべきか

20060124_p01.html

「罪を憎んで人を憎まず」2.0

20060120_p01.html

政治的バッドノウハウに立ち向かう作法

20060118_p01.html

お望みならば一国まるごとGoogle八分にして差し上げますがどうされますか?

20051029_p02.html

「モノ作り」という概念と「WEB2.0」という概念

20051025_p01.html

ルールの上の競争とルールを巡る闘争

20051005_p03.html

〜大ブロ式〜 - 「堀江と近藤=項羽と劉邦」説・あるいは徳について

20050916_p01.html

松下幸之助的線形倫理とホリエモン的非線形倫理

20050906_p02.html

英・インデペンデント:小泉首相の日本株式会社への猛攻撃でリベラルがあわてる

20050822_p02.html

知識人 VS 小泉さん

20050820_p04.html

asahi.com: 「思い上がり」「言いがかり」 堀江社長と亀井氏が対談 - 政治

20050820_p02.html

本拠地を移すタイプと守るタイプ

20050713_p03.html

13Hz!: アルゼ暴露記事の出版社社長を名誉棄損で逮捕

20050513_p01.html

吉田アミさんの誕生日を祝おう!

20050413_p03.html

実情と本心

20050407_p02.html

PICSY blog: ホリエモンがPICSYをライブドアポイントに採用か

20050328_p04.html

ライブドアの広報担当の人、GJ

20050328_p01.html

Google八分発祥の地がGoogle八分に?

20050326_p03.html

ホリえもんは基本的に変わっていないんだと思うけども

20050324_p02.html

Ethics on the edge of chaos -- 「カオスの縁」の倫理学

20050319_p03.html

リスクテイカーへの感謝の祈り

20050313_p02.html

電網山賊: 市場は手続きだけを問う

20050312_p01.html

流動性の象徴としてのホリえもん

20050224_p01.html

ニッポン放送とフジテレビ、新株予約権で対抗

20050222_p01.html

グリーンスぱんのようなあの人

20050214_p02.html

世界はほんとうはもっと色鮮やかで豊かだし、残酷で不気味なんですよ?

20040924_p06.html

ライブドアの参加型ジャーナリズム

20040714_p01.html

権威主義と全体主義に挟まれて絶望しない為には

20040709_p01.html

プロ野球の「何が」生き残ろうとしているのか

20040707_p04.html

ライブドアが検索をGoogleからLookSmartに

20060126_p01.html

ソフトウエア業界の「バカ世界地図」